うどんとの噂
魔王が出た後、うどんに額をひっつけながらガン飛ばされつつ責められた。
「おい、富裕層の、エリート、だって?」
いちいち軽く頭突いてくる。
「は、はい・・・そのようで・・・」
「俺は!親は!いない!いんのか?」
「は、はい・・・」
最後にきつく頭突かれた。
「俺はお前みたいな坊ちゃんが一ッ番!!大っ嫌いだ!!覚えとけ!!」
「はい・・・」と答える葵は頭突きの痛みに手で押さえながら堪えていた。
その後、ベッドでうどんは寝た。
葵は仕方なく上段のベッドに上る。
「おい、お前の下ってのはなんか気分悪いな。下で寝ろ!!」
「え?」と言ったものの、仕方なく下りる。
「いや、やっぱお前に背中を向けつつ一晩寝るんだろ?それも嫌だな!!」
「じゃあどうすれば?」
聞き返したことにイラついたのか、また睨まれた。
「お前が考えろ!!そのエリート頭で!!」
そう言ってまた頭突きされた。
「イタッ!!・・・でも、これ解体して横並びにするのも」と言い掛けた時、食い気味に「それだ!!」と大きな声を出した。
うどんが命令するので横並びに置いたら、ギリギリ入った。
もちろん、勉強机は死んだが・・・。
「すげーな、葵!お前天才じゃないか!!」
「そ、そうかな?」
葵はこれがあまり得策でないことくらいわかっていたので、認められたはいいが微妙な気持ちだった。
そして消灯時間となり眠りに入る。
うどんは何も思うことなく眠りに入ったが、葵は気になって仕方なかった。
何故なら、ギリギリ入ったと言うことは、2つのベッドが陸続きになったということだ。
その夜、案の定うどんの悪い寝相故にこちらのベッドまで転がって来た。
足が葵の腹に乗る。
その重みで目が覚めた。
仕方なく足を戻して背を向けて寝る。
今度は腕が振り下ろされて来て顔に当たった。
痛みに耐えていると、顔を鷲掴みにされる。
「魔王様!!俺がやりました!!」
耳元で大きな声を出され、我慢できずに起き上がった。
「何が!?」
さすがの葵も怒りでうどんを突き返す。
何かムニャムニャと言いながら自分のベッドに戻って行った。
そして翌朝、葵はベッドの足元で縮みながら眠り、うどんが広々と斜めに大の字で眠っていた。
ベッドを2つ並べることによって、うどんのベッドがダブルサイズになり、悠々と寝返りを打てるようになり、葵はその分迫害を受けることとなった。
だが、うどんも得ばかりではない。
ちゃんと制裁を受ける日は来た。
「おう、じゃあな!」とドアの前で仲間に言った後、うどんが部屋に入ってくる。
もうこの景色に慣れた2人は、ベッドしか踏み場のない部屋に何も違和感を感じなくなっていた。
しかし、そんなマイナールールはこの2人だけのものであって、他の仲間は部屋の様子を見て驚いていた。
そんなある日、2人には変な噂が上がった。
うどんが部屋を出ようとしたら、仲間が集まって、どうやらドアの外で聞き耳を立てているのもわかる。
「なんだよ、お前ら!最近変だな・・・」
「いや!なんでも!!」
そう言うとみんなすぐに解散する。
しかし、ある日葵が噂を耳にしてしまった。
「なんかさ、外にいる時はあんま話さなかったり、うどんが葵を睨みつけたりしてるけど、怪しいよな」
「うん、うん。どう見てもあれはカモフラージュだよな!!」
何のことかさっぱりわからず、そのまま身を隠して聞いていた。
「だってさ、ベッド並べて寝る?普通?」
それを聞いた途端にハッとさせられた。
最近慣れてしまって違和感を感じなくなっていたが、確かに変だ。
「絶対夜な夜なイチャコラしてんだよ」
「音聞いた奴いる?」
「いや」と仲間の1人が首を横に振る。
「音出さないようにがんばってんじゃない?」
「うっわ!そこまでして・・・」
これ以上聞いてられない、そんなことより早く改善せねばと思い部屋に走る。
「うどん!大変だ!」
「わー!わー!わー!!」
うどんも何故かパニックになっている。
「どうしたうどん!?」
「葵こそどうした!?」
お互いパニックになっていた。
部屋の前で2人でパニックになるが、まだ冷静な葵が軽く飛び跳ねるうどんの肩を掴む。
「変な噂が広がってる!!俺たちの!!」
「そうだ!だから俺は来た!!」
なんだか映画のようなセリフを吐く葵。
「俺が助けてやる!!うどん!安心しろ!!」
「ほ、本当?」
パニックのあまり、涙目になりながら葵の手を握る。
「まずはベッド・・・上に」
葵もやはりパニックにはなっていたので、変な言葉だけを廊下で残してうどんの肩を抱き、うどんは葵の腰に手を添え、部屋に入って行った。
それからしばらく並べていたベッドは重ねられ、久しぶりに床が顔を見せた。
もうこの時には葵が上段で寝ることに異論はなかった。
そして、当然のように2人の廊下での会話は噂を本物だと周りに信じ込ませたのだった。
「仲良くない?」
「そんなことねーよ!」
葵は否定したが、正直ディンブラもこの時噂を信じたという。




