立ち寄る
アスタは地元に帰ってから父の仕事を手伝っていた。
アスタの育ての父は元々魔王軍の侵略があるまでは貿易商をしていたので、それを再開した。
船への荷物の積み下ろしを手伝ったり、父のそばで取引きの様子を見たり、品物の目利きなど様々なことを学ばせてもらっている。
「どうだ?この仕事も面白いだろ?」
「世の中にはこんなにもたくさん物があって、こうして流通してるんだな!」
毎日驚きに溢れている。
新しいことを知れるのは嬉しいし楽しい。
しかし、どこか空虚なものを毎日感じていた。
いつも空や海を眺めてはあのパーティで行動をした日々を思い出す。
今、何をしているのか、何を考えているのか、あの頃を懐かしんでいるのは自分だけなのだろうか・・・など。
そんなある日、たまたま取引先がキャメリアの住む地域の付近だった。
何日か滞在するとのことだったので、父に頼んで少し抜けてキャメリアに会いに行った。
縁側に座って聞いた話はやはり姉の愚痴。
たしかにあの姉はかなり狂ってるとアスタだって思う。
しかし、それに劣らずあの婚約者の柊だってなかなかのものである。
こんな急に家出をして、一年以上放置した上に「柊さん以外の運命の人を見つけたいの!!」とか(柊自身には知られてないだろうが)妄言吐いてたし、今更外見をとやかく言ってくるし、だからと言って言われた通りに改善しても全然戻って来なかったし。
出された茶を啜りながら、茶菓子をつまみ、そして遠くから聞こえる柊と山茶花の仲睦まじい声を聞く。
しばらくはお互いの近況について話していた。
「アスタは最近どうなの?女性たちが島に戻って来たのよね?」
「みんな戻って来たよ。それで念願だった血の繋がらない双子の妹にも会ったよ」
キャメリアが興味ありそうに聞いてくる。
「へぇ!どうだった?かわいかった?」
「わかんない」
そう言ってまた茶を啜る。
「わかんないってどういうこと?」
不可解そうな顔をして傾げてこちらを見てきた。
「なんかさ、父ちゃんに似てたんだよね。面影があってさ、かわいいかどうかとかの考えに至らなかったな」
「そっか・・・それはまぁそれでいっか。家族だし、恋愛感情持ち込むとやりにくいところあるしね」
キャメリアも一口啜って、ホッと息を吐く。
「それで今はお父様の家業を手伝ってるんだっけ?」
「そうそう!貿易商で色んな町に行ったり、物を見たりできて楽しくてさ!今日もこの付近に数日間滞在することになったから来たんだよ!」
「そうなんだ!だから足を運んでくれたのね!」とキャメリアも嬉しそうに返す。
それから2人して少しの間黙っていた。
その沈黙はアスタから破った。
「あの2人、元気かな?」
「シャロンとチョコ?・・・元気なんじゃない?」
「だよな・・・」とだけ返してまた黙った。
そこへ足音が近づき、柊がやって来た。
「アスタさん!お久しぶりです!」
「お邪魔してます!」
アスタの隣に腰掛ける。
「お元気そうで何よりです!」
「柊さんも、山茶花さんと仲良さそうで何よりです!」
それには表情を緩めて、顔を赤くして照れながら答える。
「えへへへ〜!毎日一緒にいられて、本当に幸せです!!連れ帰って来てくださった、みなさまのお陰です!!」
「そんなに言ってくれるのならよかったよ。ところでさ、柊さんと山茶花さんの出会いってお見合いとかなの?すごい仲良しだけどさ」
アスタの質問に首を横に振って答える。
「いえ、町中にいた山茶花さんを見て私が一目惚れをしたのです!」
耳まで赤くしながら言う幸せそうな柊を見て、アスタは『それが地獄の始まりか』とか思ってしまった。
そんなことは知る由もなく、柊は山茶花との馴れ初めを話し始めた。




