葵が背負うもの
葵とディンブラはパーティと別れた後、ディンブラの計らいで母と再会を果たした。
その後、母を送り届けた。
「葵ちゃん、これからどうするの?」
少し表情を曇らせる。
「母さん、僕にはまだまだやらなければいけないことがあります」
「何か・・・私たちに隠し事をしてる?」
母の心配そうな表情に心が痛む。
「・・・今はまだ話せません。すいません」
それ以上息子を言及できず、そのまま去り行く後ろ姿を見守った。
「母さん、葵、行っちゃったの?」
後から来た3人の年の離れた葵の兄たちが心配そうに母に近寄る。
「えぇ・・・やっぱり、言えないって」
母は長男の王林にそう言ってまた葵の遠くなり行く背中を見る。
家族からある程度距離が離れた頃、ディンブラが葵と合流していた。
何かを話しながら歩いていく。
「そっか。仕方ないよ。葵には葵の考え方があるんだ。いつか話してくれることを待っていようよ」
「・・・そうね」と次男の紅玉に元気なく答えた。
「でも意外だよね。葵が駆け落ちのために魔王軍まで裏切るなんてさ」
三男の高嶺がポロっと呟く言葉は葵以外は周知のようで誰も驚かない。
「そうだな。俺たち家族が用意したお見合いさえも抜けて、世話になった魔王軍まで崩壊させる」
「純愛だね」
王林も紅玉も淡々と続けた。
寄り添うでもなく並んで歩く姿は、変な思い込みが無ければ男友達同士で歩いてるようにしか見えないであろう。
しかし、今のこの家族からは補正がかかり、寄り添って歩く姿にしか見えなかった。
「仕方ないよね。前に何かで見たけど、男の子って女性の母親からすれば異質だから、胎児期に異物として免疫に攻撃されやすいらしい。その攻撃が男の子を産んだ人数によって学習して強くなるから1人増えるごとに30%ずつLGBT化するとかしないとか」
高嶺の口から語られた理論に、上2人の兄も眉を顰める。
「じゃあ4人目の葵って90%の確率でゲイとかバイとか性自認が違うってことなのか?」
「その理論でいくと三男の高嶺は60%の確率でなってるけどな」
兄たちに言われてしばらく黙った。
「やっぱりこの理論やめとこか。当たってなさそうだし、何年も前に見たものだし、こういうのは日々変わるさ!」
兄たちは呆れながら高嶺を見ていた。
しかし、何にしても家族から実に由々しき誤解をされたものである。
そんなことも露知らず、葵は歯車の動き出した大きな運命に立ち向かうこととなった。
家族と別れた葵が歩いていると、待機していたディンブラが合流する。
「葵くん!話、もう終わったの?」
「ああ、待たせたな」
それには首を横に振った。
「いいよ。それより、何日か一緒に過ごせばいいのに」
「いや・・・いい。あまり長くいると、家族も狙われるかもしれない」
「そっか・・・じゃあさ、早く決着つけて帰らないとね!」
ディンブラのその言葉に頷いて返した。
その後2人が向いたのは西の方角。
再度西の大陸にあるメリリーシャを目指しつつ、白いプルチネッラを探すことにした。
「別にディンブラまで付き合う必要はないんだぞ?危険もあるだろうし」
「何言ってんの?葵君を魔王軍から裏切らせたきっかけを作ったのは僕だ。君1人に背負わせたりはしないよ!」
葵は微笑みかけ「ありがとう」と礼を言った。
それから前を向いて乗って来た車のエンジンをかけた。




