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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
勇往邁進
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10/110

撃沈2

一方ファルシはというと、革加工屋の師匠の娘であるムスカリと恋人になっていたのだが、こちらもまた一波乱あった。

仲睦まじく過ごしていたある日、師匠が新しく開拓した少し遠い町の店との取引を始めた。

そこまで革細工の商品を卸しに行った時のこと。

師匠が商品を搬入している最中、付近の学生がその一つの意匠をかなり気に入ったという。

居ても立っても居られないといった様子で、商品を搬入していた師匠に声をかけたらしい。

そして、すぐに休学をして(本当は退学したかったが止められたらしい)師匠と共に遠く離れたこの店に弟子入りしに来たという。

これがまた爽やかで、小綺麗にされており、スタイルもよく、いかにもちょっと栄えた町から来た好青年といった感じだった。

「はじめまして!今日から弟子入りさせていただくことになったので、よろしくお願いします!」

ムスカリは頬を紅潮させ、目がとろけていた。

そんな彼女の姿を見て初めて悟った。

今、目の前にいるのは弟弟子ではなく、ライバルだということを。

女心と秋の空という言葉も知らない無垢?無知?なファルシはムスカリを取られそうになり、その新人にきつく当たる。

しかし、芸術学校とやらに通っていたとか言っていた通り、意匠の感覚や手先の器用さがいい。

それはとうに師匠は見抜いていた。

そして褒められる。

その度にムスカリも「すごぉ〜い!!」と甘ったるく感高い声で褒めまくる。

「師匠!俺のも見てください!!」

ファルシが完成したものを見せるが、「おぉ、いいじゃねーか」くらいの褒めでまた奴のターンに戻る。

こんな日々を繰り返している内に、もうすっかりムスカリは相手にぞっこん状態となってしまった。

それは師匠が認めたからだけではない。

芸術学校だろうが、なんだろうが相手は学校に通っている。

しかも専門性のある学校に通わせられるだけの余裕のある家柄だということだ。

負けた。

完膚なきまでに負けた。

が、しかし!!

こんなこと、そう易々と認めるわけにはいかない!!

それが男の意地というものだ。

そんな嫉妬に全身包まれ、血液に乗って身体中を縦横無尽に駆け巡らせている嫉妬ハイウェイと化したファルシは、恋愛経験0人間の初恋奪還劇に踏み切った。


ある日、ムスカリが買い物に出たタイミングを見計らい、動いた。

ムスカリの買い物から家までの動線で、わざと他の女の子と親しげに話をしていた。

そしてこの時の女の子というのは、みんなに優しい先ほどラペとカプレーゼが失恋したあのお姉様である。

チラチラとムスカリを見ながら嬉しそうにかわいい女の子と話す。

すると、まさかの無視をされた。

横を平然と通り過ぎ去られ、驚きとショックで言葉が出なかった。

しかし、予想外はまだ続いた。

店に帰ると師匠にいきなり怒られた。

「おい!ファルシ!!お前、俺の大事な娘泣かせてどういうつもりだ!?」

「え!?」と驚いて奥を見ると、ムスカリが例の新人に泣きついていた。

「ファルシが・・・ファルシが浮気してたの!!」

「ちょっと待って!浮気なんかしてないよ!俺は最近ムスカリが全然構ってくれなかったからちょっと構って欲しくって・・・」

一層大きな声で泣かれて、また新人が背をさする。

「ファルシ!!」

師匠にまた怒られ、1人悪者にされたファルシも若さ故か、怒りの感情が沸き始めた。

「待ってください!!最近その新人に浮気してたのはムスカリでしょ!?俺は他の女の子とちょっと話しただけだけど、ムスカリなんか付きっきりじゃないですか!!」

相手を責めるとまた大きな声で泣かれた。

「お前の浮気心はうちの娘と愛弟子のせいだってのか!?」

「愛弟子!?・・・違っ!!」

しかし聞く耳を持たなくなった師匠はこの後押し問答の末、ファルシを破門にした。

しくも、時を同じくしてラペとカプレーゼもフラれていた。

3人でカプレーゼの勤める食堂で項垂うなだれていると、店主のおばちゃんが料理を出してくれた。

「何があったのか知らないけど、たぁ〜んとお食べ!元気がでるようにって心を込めて作ったよ!!」

3人は顔を上げて目に涙を溜めながらおばちゃんを見た。

ふくよかな見た目、優しい眼差し、これは母性というものだが、ここ最近の傷心が過ぎる3人は少しおばちゃんに恋心を抱きそうになったという。

同じ感情を抱いたのだと察知した3人は目を合わせて頷いた。

「帰るか、地元」と言うラペの言葉に「うん!」「おう!」と2人は答えた。

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