会議にカチコミ
ネヴァーにいるティーの分体によると、現在進行形で国王と各国の代表が集まって会議の真っ最中らしい。
しかも内容が、魔王へどうやって謝罪をして見逃してもらおうかっていう話し合い。 (実際にママの魔法の規模を見た兵士が帰還して報告したから怯えきってる)
ほとんど魔法の使えない人族には恐怖でしかないでしょうね。 (未亜のママ達からの報告も受けてるから、勇者ですら勝てないのもわかったし)
未亜の両親は私についてなんて報告したのやら。 (無事に戻ってきたくらいだし、話し合いが出来ない相手ではないだろうから、なんとかしたいと)
元々話し合いには応じるつもりしてたしなぁ。
ま、ちょうどいいしその会議の真っ只中へ飛んでやろう。 (おー)
「アスカ、ちゃんと魔王ムーブキメてくるのよ!」
「わかってるってリア」
そのためにわざわざドラゴンハーフ姿になってドレスにまで着替えたんだし…。 (ママは黒のドレスが似合う)
ありがと…。
見送りのみんなに手を振り、自身と霧化したキャンディとロアールを魔力ドームに包んでティーの教えてくれた座標へ転移。
ーーーー
ーー
「なっ……」
「ひっ……」
まさか会議の円卓のど真ん中だとは。驚きすぎて怯えてない? (端っこじゃ意味無いの)
確かにね…。
ふぅ〜……よしっ。
「邪魔するぞ。我は魔王アスラ。話し合いをしたいそうだな?意味のない謝罪の手紙以降、音沙汰がないからな。しびれを切らしてこちらから出向いてやった」
「まさか…本当に?」
部屋にいた兵士が武器を抜いてきたな。震えながらも職務に忠実なのは微笑ましいわ。でも…
「兵の武器を下げさせろ。行動の遅いお前達の為にわざわざ来てやったのだ。それとも何か?ここで国ごと消し飛ぶのが望みか?」
「武器をおろせ!! すまぬ…突然の事だったのでな。儂に免じて許してもらいたい」
「いいだろう。こちらにも無作法な登場をした非はある。飛ぶ場所の細かい調整が難しくてな…。詫びるとしよう。 すまぬが我の席を用意してもらえるか?」
「う、うむ…。直ぐに用意させよう」
私に対応した人がネヴァーの国王だよね。 (そう。一番権限持ってる人)
だろうね、代表で手紙を寄越してくるくらいだし。
他国の代表はもう怯えて固まってる感じ? (度肝を抜くのは大成功!)
効きすぎた感もあるけどね…。まさかど真ん中とは。
用意してもらった席に座るとネヴァー王も座り、他の5人の人達も座った。
力関係を示しておく為にもこれでいい。
「話し合いに参加していただいて感謝する、アスラ殿。今回の事について何か話したいことがあるのなら聞かせていただきたい」
「ふむ…ならば遠慮なく。 ここにエルフもいるようだな。 まずはお前に尋ねよう、今回の侵略に関わったのは一部か?それともエルフの総意か?」
「ち、違います! センティアにいるエルフは別氏族です! 我々の仲間は謀られて戦場へと駆り出されたにすぎません!」
「だが加担したのは事実だ。エルフからも正式な謝罪の一つでもあってもいいと思うが、なかったではないか」
「…申し訳…ありません…」
何に謝ってるんだか…。
「ネヴァー王、おかしくはないか?」
「な、何がおかしいとアスラ殿は言われるのだ」
「今、センティアを実効支配しているエルフ共を我に始末させようとしたな?代償としてあの土地を差し出す…と」
「うむ…。悪い話ではないと思うが…」
「…悪い話ではないだと…? そもそも、なぜ侵略された側の我らがお前ら人族とエルフの尻拭いをせねばならん。此方に人族しかおらぬというのなら、百歩譲って勝ち目がないからと縋るのは理解できる。だがエルフがコチラにもいるではないか。なぜそやつらに対処させぬ。 もう一つ、これが一番大切だ。センティアに住む無辜の民をなんだと思っているのだ。国一つ、そこに住むすべての人を見捨てる選択をした自覚はあるのか?」
「それは…」
「国は民なしでは成り立たん。仮にも国をまとめている者がそれを理解しておらぬとは言わぬよな?」
「ううむ…」
本当にわかってんのかなこの人達。 (さあ?)
「答えてもらおうか。先ず、こちらのエルフで対処できない理由はなんだ」
「同族と争うなどできません…」
「で?」
「はい…?」
「同族で争いたくないからなんだ?と聞いてるんだ」
「ですから、同族で争うのは少々…」
思わず目の前の机を蹴飛ばしてしまった。 (うわー…砕けて飛んでった机の破片がエルフの顔を掠めたの)
イラッとしてつい…ってことにしといて。 (あーこれも作戦かー)
「ひぃっ…」
「同族では争いたくない、だから代わりに我ら魔族に戦わせるのか! それがお前たちエルフの答えか!!」
「ひっ…ぅ…」
「ネヴァー王、このエルフはエルフの代表か?こやつの発言はエルフの総意とそう判断していいんだな?」
「彼はエルフの最大氏族、ウェルウィチアの代表としてここにいるのは間違いない。権限も持っておるが…」
「わかった。我ら魔族に己らの不始末を押し付けるというのなら、それなりの代償は払ってもらうぞ」
「アスラ殿、何をなさるおつもりか!」
「ネヴァー王、一つ例え話をしようか」
「…?」
「今、我が机を破壊したな?」
「う、うむ」
「仮にだ。その処罰をするため、ここにいる我の側近に魔王を捕えろとネヴァー王が命じたとしよう。それに対して”同族とは争えないのでそちらで対処してほしい”そう言われて納得するのか?」
「……」
「納得するのか?と聞いているんだ、答えろ!」
「出来ぬ…」
まぁ机なんて簡単に直るんだけどね、リペアー… (パズルみたいにくっついてくのおもろ)
ロアールも巻き込んでごめんよ。帰ったら謝らないと。
「仮に対処する事になったとして、なんの代償も無しに動くのか?」
「いや…。どれだけの犠牲が出るかもわからぬ、おいそれとは動けん」
「賢明だな。 だがこのエルフは…いや、お前達全員が似たような事を我にさせようとした自覚はあるのか?しかも我が身は切らず、他国の民を差し出してだ。これで話し合いとは笑えるではないか」 (ここで高笑い)
それは嫌! (ちぇー)
「………」
「我らは貴様らのくだらん争いになど関わりたくはない。センティアへと踏み込んだ途端侵略者の烙印を押されかねんからな。故に元勇者へと委ねた。こちらに帰還した元勇者に救援を求められ、お前たちはなんと返答したんだ?」
「救援を出すと。しかし軍を動かすにも時間がかかる故…」 (はい、うそー)
だろうね…。
「矛盾してないか?同族とは戦えないと、今そこのエルフが言ったではないか。人族のみで対処できるのか?」
「それなりの数を…」
「…その様な虚偽に騙されると思うか?」
「虚偽などと!! 余りにも無礼ではないか!」
「…無礼か。ならばどんな援護を約束したのか証拠を示せ。幾ら出した?何人動かした? 国としてそれらを動かしたのなら必ず指示書があるはずだ。持ってこい」
「機密情報だ」
「持ってこいと言ってるんだ。ここに至って貴様に拒否権などあると思うか? 無いなら無いと言えば済む。今なら嘘だったと認めればこの場限りで流してやる。どうする?」
「……」
「ふむ…そうだな。 貴様が嘘を重ねる前に一つ言っておこうか。センティアの国王が侵略行為をするため、”攻め込まれたと虚偽の報告をしていた。“と、そう伝えに来た者がいただろう?」
「うむ。あらゆる情報を証拠と共に提供していただいた。お陰でこちらは容易に裏を取る事もできて真相が暴かれ黒幕も判明し、センティア国王と貴族も捕らえることができたから感謝しておる」
「おかしいと思わなかったのか?なぜそんな情報があっという間に各国へと伝わったのか…と」
「まさか…」
「我の子だ。ティーよ、こやつらは元勇者に救援の約束をしたか?金と兵を動かしたのか?」
ふっと現れたのは、真っ黒なドレスでスピネルのような姿のティー。 (スピネルに借りてるから)
なるほど…
「なーんにもしてないよー。お金すら出さずに無理ーって追い返した」
「だそうだが? 我らの目は何処にでもある。虚偽など一切通用せぬと知れ」
ありがとね。 (突然の出番にふんす!)
楽しそうで何より。
「…すまぬ…我ら人族ではエルフの一氏族を相手にするなど不可能だ。エルフ族も同族とは争えぬ事情がある」
「ならば何故初めからそう言わぬのだ。人族とエルフ、双方が非を認め、戦えぬ理由をしっかりと明記してくれさえすれば、こちらにも手を貸す用意はいくらでもあるんだ。何故助けてほしいと素直に手を伸ばさぬ? 王としてのプライドもあるのだろう、わからんでもない。だが…国を一つ、そこに住む民を見捨てるほど、そのプライドは大切なものなのか?」
民の命より大切なプライドなんていくら国王でも無いでしょう。 (あるっていったら?)
ここで殴ってやろうか…。 (ぷっ…)
「誠に申し訳ない。アスラ殿の言われるとおりだ…。国を一つ明け渡し後始末を任せようとしたのも事実。すまない事をした」
「エルフを代表して私からも謝罪いたします! エルフは精霊との契約により魔法を使える身、故に精霊同士での争いを好まないため、別氏族とはいえ同族とは争えないのです…」
「なるほどな。 その精霊からも我は救援を頼まれているのだが…。ナギ、来てくれるか?」
魔法陣から出てきたのは魔王城に滞在してる樹の精霊ナギ。
「ママ、お呼びですか?」
「すまないな。ちょうどエルフの代表がここにいるから、話したいのではないかと思ってな」
「ありがとうございます、お心遣い感謝いたします」
「なっ…まさか最上位精霊様!?」
「ナギと申します。 ここ百数十年のエルフの行動について、精霊を代表して警告致します」
これでエルフが改めなければ精霊達はみんな魔族領へと避難しちゃうけど、どうするんだろうね?




