美的感覚
客としてくるユウキ達との対面に合わせ、みんなと話を合わせておいた。
「アスカはスキを見せたらだめよ! 信用できない相手もいるのだからポンコツ姿は見せないように! ちゃんと魔王ムーブを崩さずに対応するの。いいわね?」
「わかったってば…」
「私は隣に控えますから何かあればすぐにご命令ください」
「お願いねロアール」
「私もお傍に!」
「エノテラはだめよ。 今は身体を大切にしなさい。ね?不安なら私の部屋にいていいから。謁見の間とも近いから声くらい聞こえるし」
「は、はいぃ…」
そんな真っ赤にならなくてもいいと思うよ?だからリアも抓らないで。 (こっちに入ったよー)
ありがとう。もう領内は安全だからのんびり城まで案内してあげて。 (あーい)
「領内へ入ったとティーから報告が来たよ。ロアール、配置は?」
「既に済んでおります」
「よし、じゃー頑張ろっか!」
しばらくしてティーに案内されてユウキ達が謁見の間へ入室。
出迎えたのはリア。また魔王の側近ムーブしたいって言うからぁ…。 (好きねー)
ね?まぁ私もやんなきゃいけないんだけどね。気持ちを切り替えますか。 (おー)
………………
……………
…………
魔王として話をした後、未亜の両親を下がらせ、ロアールから各種魔道具を手渡してもらってる。
身を守るものや相手を楽に拘束するためのものを。それくらいの手助けはしてもいいでしょう。
こうなるといいな…っていう思惑通りに動いてくれて助かるわ。 (みとくね)
お願いね。
未亜には申し訳ないけど、こればかりは本当に私が手を出すとトラブルにしかならないから、未亜の両親にお願いするしかなかったのよね。
これでやり遂げてくれるのなら信頼してもいいと思えるだろうし…。
ティー、魔道具を渡したから万が一もないとは思うけど、もしもの時は陰ながら助けてあげて。 (あいあい。裏切るようなら?)
…その時考えるよ。 (あーい!)
さてと、もういいよね。
魔王座から立ち上がり、カツカツカツ…とヒールを鳴らして二人の元へ。これ、いつかの母様みたい。
「ユウキ、未亜…ごめんなさい。二人にあんな思いをさせてしまって…」
そう言って二人を抱きしめた。
「お、お姉ちゃん…? お姉ちゃぁぁぁん…」
「ごめんね、未亜…」
「姉ちゃん…?本当に姉ちゃん?」
「そうよ。別人に見える?」
「見えるから聞いてる…」
「あぁ、確かにそうかもね…。 二人には色々と話さないといけないかな。二人も話してくれる?」
「ごめんなさぁい…ぐすっ…おねえちゃぁん……わかったぁ…」
「ほら未亜、もう泣かないで?ね…?」
「泣かしたの姉ちゃんなのに…」
「ユウキもごめんね…。泣き顔見るのいつ以来かな」
「思い出さなくていいからそんなの…」
しばらく二人を抱きしめた後、話をした。本当に本当に色々と。
…………
……
「じゃあ姉ちゃんは僕らに信じてもらえなかったのがショックで、討たれたと…?」
「まあ…端的に言えばそうね。だって討伐するためのパーティに自ら参加したなんて聞いたらショックでしょう…。しかも大切な二人に攻撃できる訳ないじゃない」
「それは…本当にごめん。 優先的に魔王でもある姉ちゃんに会うためには他の方法が思い浮かばなくて」
「別に一人ででも、未亜を連れてでもユウキなら来れたでしょう…」
「それを言うなら姉ちゃんだっていくらでもこっちに来れただろ。無実ならそうハッキリ僕らに言ってくれたら信じたのに。むしろ言ってほしかったんだからな?」
「ごめんって…。魔王は王だからね。そう物事は単純じゃないのよ…負うべき責任があるの。言い訳したところでトップの責任なのはかわらないのよ」
「とかママは言ってるけど実際は拗ねてただけー」
「身も蓋もないわね。でも私もそのとおりだと思うわ」
「うう…ティーもリアも酷い…」
「まぁでも姉ちゃんがこっちでやってきた事をこの目で見たからさ。魔王の責任ってのも少しくらいは理解したつもりだよ。だから姉ちゃんが自由に動けなかったってのもさ」
「ありがとね、ユウキ…」
「お姉ちゃん…お姉ちゃん…」
未亜は再会からずっとこんな感じで抱きついて離れなくて…。引き離すのも憚られるからそのままにしてる。
「それより姉ちゃん、竜魔王ってなんだよ?それにあの姿…」
「ああ、それも話さないとだね。 実は、一度魔王として討たれた時点で魔王の力は失ったんだけど、ほら、私達って喚ばれた訳じゃない?だから討たれた後に地球に戻って目覚めたのよ」
「フェイクとか身代わりでもなく、本当に死んでたんだな…」
「…そうなるように段階を踏んだからね。だから二人は責任を感じなくていいよ。それにこうして今は目の前にいるでしょ?」
「ホント理不尽だよな、魔王」
「ね。私も我ながら思った。でもおかげでこうしてまた会えたから」
「まぁな。 で?竜魔王って?」
「こちらに来た時にドラゴンとして覚醒したみたいで…」
「それって王妃様みたいに?」
「そうそう。で、ドラゴンの魔王で竜魔王」
「理不尽が過ぎる…」
理不尽理不尽うるさいよ?全く…。わかってるわ。
「そうだわ! アスカのドラゴン姿みせてもらってないわね!」
「僕も見たいな」
「えー…」
「お姉ちゃん…お姉ちゃん…」
「未亜はいい加減アスカから離れなさいよ!」
「やだっ!」
未亜が駄々っ子みたいになってしまった…。原因は私だから責任を感じるのだけどどうしたらいいの。
未亜の母親に威圧した事や、今回重い任務を任せてしまったのも謝ったのだけど、未亜本人は気にもしていないどころかどうでもいいっていう反応されて、こちらが困惑したくらい。 (ママに甘えるので忙しいから)
ほんとそんな感じよね…。
「ママがドラゴン姿になればびっくりして落ち着くんじゃない?」
「そうかなぁ…」
「ほら、中庭に行くわよ! あそこ広いし!」
リアはこちらに来てから魔王城を探検してまわってたから、私より城の構造に詳しいくらいなのよね…。
「わかったから…引っ張らないで。未亜もいるのよ?」
「お姉ちゃん…」
「未亜、ついてくるよね?」
「…いく…」
やれやれ…。
エノテラとロアール、ブルガーもぜひ見てみたいとか言うから、諦めて一緒に中庭へ。
「離れててね。ほら未亜も…」
「……」
「未亜?」
「やだ……」
「……どうしたらいいのよ…」
どうしても離れない未亜は、リアによって無理矢理剥がされてひきずられていった…。
ジタバタ抵抗してるけど、力ではリアに勝てないものね?なんかごめん。
はっ…! ティー、カメプロ禁止! (やだっ!)
もう! ティーまで未亜の真似してるし!
色々と諦めて、ドラゴン姿へ…。目を閉じるだけで自分がドラゴンになった姿をしっかりとイメージできるのは私自身がドラゴンになったからなのかな。
光に包まれ、目を開けると視点が随分と高い。
自分自身がドラゴンになるってこんな感覚なのか…。
意外とあっさりしてる。
「すっげー……ママがキラキラー!」
「姉ちゃん、もしかしてステータス跳ね上がってない?」
ユウキに言われて自身を魔力ドームで覆い自己鑑定。 あーだよね。ドラゴンになるとみんなそうだもの。
「上がってるね…」
「だからか…。姉ちゃんがドラゴンハーフの時にも別人のように感じたのは」
「種族も変わってるくらいだから無理もないかも」
「アスカ…絶対にドラゴンの前でその姿になったら駄目よ…」
「どうして? 多分だけど母さんやアキナさんには見せなきゃいけないと思うけど」
「それは仕方がないわね…。 でも、確実にドラゴンからの求婚が殺到するわ」
「えーやだなぁ…」
もう本当にそういうのはいいよ…。
「ルナリア、それって姉ちゃんが強いから?」
「勿論それもあるのだけど、美しすぎるの! ドラゴンの美的感覚から言わせてもらうと、とんでもなく美しいの!」
「まぁキレイだとは思うけど、アキナさんやルナリアともそうかわらなくない?」
「嬉しいけど、そうじゃないのよ! なんて言ったらいいのかしら…もう美しすぎるのよ!」
語彙力無くすほどなの!?
「確かにお美しいです。ドラゴン…初めて見ました」
「ええ。竜魔王様はいつもお美しいですが!」
「あたしだって竜魔王様はいつもお美しいと思っています!」
「エノテラ、ロアール。魔王様の御前で争うな。お美しいのは常にだろう」
「「竜魔王様です!」」
ケンカしないの。
「ねえ様も同じこと言うわよ?絶対に」
ティアか。あの子にも心配かけてるし、そろそろみんなをこっちに呼ばなくてはいけないかなぁ。
というかコチラに来てから数カ月たってるけど大丈夫か…?
途中、死に戻りしたり、キャンディ達も入れ代わり立ち代わりこちらとあちらを行き来してるけど。 (その辺はティーにお任せ)
大丈夫? (うんっママが竜魔王になったからねー)
どういう理屈!? (説明すると二日くらいかかるけど)
そういうものだと思っておくね? (うむ ママが新しく手に入れたスキルの影響とだけ言っておくの)
え…っ? 今回も結構な数、手に入れたんだけど!? (ふふっ)
ま、いっか…。




