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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第五章

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召喚の苦労



戴冠式も終わった事で本来の目的も済んだ。私達はそろそろ帰らないとね。

いつまでもお城にお世話になってるわけにもいかない。

今回は時間を戻す必要もないから、日曜日のうちには帰りたいし。

母さん達はどうしてるんだろ…。 (女王様にこき使われてるのー)

それはそっか…。 私達は行かなくても良さそう? (うん! 今はへーき)

ならいいのかな。一度顔出そうかと思ってたんだけど…。


師匠との別れは寂しいけれど、またいつでも会えるって思えばそれも和らぐ。

以前は二度と会えないって諦めてたし。 (でもーママがユウキやアキナさんにあげたイメージできれば飛べる転移魔道具なら来れたんじゃ?)

…………。 (ママ? …返事がない。ショックで魂が抜けているようだ…)

抜けてないから…。

確かにあれを使えば来れたかもしれないね。

ただ、送還された時に年齢や姿も戻されて、記憶にも補正がかかるから…しっかりと転移すべき”場所“をイメージできたかと言われたら怪しいんだよね。 (それは確かに…)

どちらにしても今回こうして来れたのは座標を特定してくれたティーのおかげだからね。ありがとう。 (あいっ!)



うちの子達には帰り仕度をする様に言って、師匠とメリアさんを探す。

さっき部屋の近くを大騒ぎしながら走り去ったはずだけど…。仕方ない探索使うか。

「姉ちゃん、やっと見つけた!」

「ユウキ、どうしたの?」

「今日帰るんだよね?」

「うん。本来の用事も済んだし。この世界からなら時間を戻さずに帰れるから今日のうちにね」

「わかった。 その確認だけしたかったのに、昨日部屋へ行ったのにいないしさ」

「ごめん、ちょっと師匠と手合わせをしてたから」

「その後は前みたいに酔いつぶれてた?」

「そうそう」

ユウキもあの頃のことはよく覚えてるな。 

いや、お互いこちらへ戻って来たことで記憶が鮮明になった、と言った方がいいのかもしれない。



「そういえば、ユウキは師匠に会えたの?」

「いや…メリアさんに聞いたんだけど、辺境の街を任されてるらしくてさ。メリアさんのお母さんも無事ならその街を通るらしくて。だから離れられないみたい」

「そう…、会えなかったのは残念だね。 メリアさんのお母さんって…魔神騒ぎが起きてから連絡が取れてないって言ってたね…」

「そうそう。じいちゃんには会いたかったんだけど…」

「ユウキは師匠の事、その呼び方だったね」

「孫代わりだったみたいだし。 修行は厳しかったけどね」

「うちに比べたら…」

「あーまぁ…アレは…」

「そうだ! メリアさんとうちの師匠見てない?」

「さっき大騒ぎしながら走ってったけど、まさかまた姉ちゃん?」

「んー…でも少しは私のせいかも」

「ホント相変わらずだよな」

「うっさい…。帰る事を伝えてくるからユウキも帰り仕度しておきなさいね」

「りょーかい」

「あと、シャーラがきてるからね」

「いっ…マジかよ! どっち?」

目配せして方向だけ伝えると、ユウキは逆方向へ走って逃げていった。

多分逃げ切れないだろうけどね。ちゃんと挨拶しておきなよ…。


さてと、師匠は…まだ城内をメリアさんと走り回ってるのね。 

先回りして、話をしないと。




相変わらずここのお城は迷路のようだなぁ。

最初はよく迷ってメイドさんにお世話になった…。

今はそれと探索を利用して師匠達の行く先へ回り込めるけど。


「待ちなさい!!」

「待つか!!」

仲がいいのか悪いのか…。


「師匠ー」

「あん? アスカ、お前何でこんな所にいるんだ?それよりお前も逃げるぞ!」

「えっ、まって…師匠!」

腕を掴まれて走らされる。なんで私まで…。


「待ちなさい! と言うかアスカ様だけでも置いて行きなさい!」

「断る!」

「ししょー。 私、別れの挨拶をしに来たのですがー」

「……は?」

師匠が急停止したせいで、止まれない私は、掴まれてる腕を軸に振り回される形になって…

「おっとすまん」

咄嗟に師匠が抱き止めてくれた。

はぅ…何これ!?また私ドキドキしてる…?

「大丈夫か?」

「ひ、ひゃぃ…」

「顔赤いぞお前…本当に大丈夫か?」

いやだって…こんな事されたら…。


「はぁ…やっと捕まえたわ! アリッサ!」

「いや、待て…アスカが意味のわからん事を言い出したんだ」

「はい?アスカ様どうされたのです?」

「えっ… あの…陛下の戴冠式への出席という本来の目的も済みましたし、私達はお暇しようかと思いまして」

「な?意味わからんだろ?」

「…アリッサ、気持ちはわかりますが…」

「もう私は離れんぞ!」

師匠…。なんか苦しいからぎゅーってしないで…


「以前のようにもう会えないという訳ではないのですから」

「頭ではわかってるんだ…だがな? この2年苦労したのはメリアも同じだろう?」

「それは…」

「古の召喚術を読み解き、アスカ達を再び呼び寄せるために…」

「そんなのは苦労でも何でもありません! こうしてまたお会いできて…救っていただけたのです…」

「……」

そっか、私達をもう一度呼ぶためにメリアさん達は大変だったんだ…。

なのに私はずっと召喚を拒否してて…ごめ…ごめんなさい…


「おい、アスカどうした…?」

「ごめんなさい…師匠、メリアさん…」

「いや突然泣きながら謝られてもだな?」

「私、そんな苦労してたなんて知らなくて…召喚を何度も拒否して…」

「何度も拒否?一度目の召喚を打ち消して、その直後へ自分で飛んできたんだろ?」

「結果はそうなってますが…実際は何度も何度も打ち消してて…」

「どういう事だ…。メリア、言ってる事わかるか?」

「ええ…。おそらく私達がアスカ様達を召喚しようとした、それを打ち消した事で、再度私達は召喚を試みた。それを繰り返した結果、何かあったのかも?と御自身で転移して来られたのは一度目の召喚、そのタイミングに時間を戻されたと、そういう事ですよね?」

「はい…ごめんなさい。師匠やメリアさんの気持ちも知らずに…」

「意味がわからん…」


「アスカ様、良いのです…こうして来て下さったではありませんか」

「でも…」

「またお会いできた。それだけで私は…」

「あぁ、それは私もだぞ?確かに2年は長かった。ただな…元々一方的に呼びつけたのも此方なんだ。にも関わらずお前たちは命をかけて戦ってくれただろ」

「そうですよ。そして私達を救って下さった。本来なら役目を終えた勇者様は元の世界へ送還され、二度と会うことはない…そう古文書には書かれていました。それに抗って勝手な事をしたのは私達なのです」

「だなぁ…。私達のワガママなんだ。それにな?結果としてこうして来てくれたじゃないか」

「はい…」

「それともアスカは私に会いたくないから拒否して打ち消していたのか?」

「違います!! 呼んでいたのが師匠達だとは知らなかったから…」

「だろ? 迷惑な召喚も多かったと話してくれたじゃないか。拒否したくなるのもわかる。平穏な生活もままならんだろうしな。残される家族だって心配する」

「そうですが…」

「あーもう細かい事は気にするな! 今、私の腕の中にお前はいるだろう! それだけでいいんだ」

「師匠…ありがとうございます…」

師匠が温かいよ…。


「アリッサ、ちょっと代わってくれませんか?」

「メリアなら譲るか?」

「まさか」

「なら答えはノーだ!」

「アスカ様との”初めて“まで奪っておきながら…貴女という人は!」

「不可抗力だったと言ってるだろう! それに覚えてないんだ私は…」

「バカですか…そんな大切な事を!」

「その通りだ! だから私は決めたぞ。もう酒には呑まれん! こんな悔しい思いをしたのは初めてだからな」

「禁酒するというのなら止めませんが…」

「あん?誰が禁酒すると言った。呑まれんと言っただけだ」

「…あーはい。そうですか」

師匠は…多分無理だろうなぁ。お酒に弱すぎるもの。ふふっ…また絶対記憶飛ばすだろうね。


「落ち着いたか?」

「はい、ありがとうございます師匠」

「構わん。気にするな」

「むー私もいるのですが!」

「メリアさん、ありがとうございます。おかげでまたこうしてお会いできましたから…」

「はい! またいつでも遊びにいらしてくださいね」

「ありがとうございます。また必ず…」

「なぁ…本当に帰るのか? 私とずっと一緒にいてもいいんだぞ?」

「それは…ちょっと魅力的なお話ですが、私にはまだやらなければいけない事が色々あるので……ごめんなさい」

「…そうか、いつでも来い! 待ってるからな?」

「はいっ、師匠」



こうして私達の懐かしい場所への再訪問は終わった。

またいつでも師匠達に会えるようになるっていう大きな収穫と、召喚に関するモヤモヤを残して…。










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