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第四話

 この辺りか……。俺達は、今とある洞窟へとやってきている。ギルドからの依頼、というわけではなく。クロの城の使用人達からの情報でやってきている。

 どうやら、一回クロの城付近で怪しい敵に襲われたようなのだ。その時、ルヴィアのところからメイド達が手伝いに来ていたので、それを退け、生き残りが俺達が訪れている洞窟へと逃げ込んだってことだ。


「洞窟ってやだなー。ど派手な技使えないんだもーん」

「そう言うなって、これも平和のためだ。それに洞窟は、鉱石なんかを掘れるからついでに掘っていこうぜ」

「それを素材に武器を作るんだね!」

「そして、その武器でモンスターを狩りに行く」


 それはゲームでの話だろ。まあ、こっちでも鉱石を武器にして戦うけどさ。


「それにしても、本当にクロのところに来るなんてね。よーし! 洞窟の暗さなんてなんのそのー!!」


 張り切るエルジェの体は突然光だし、洞窟の暗さを照らす。おー、これは光魔法いらずだな。本来ならばランプとか光魔法のライトで照らすのだが、エルジェの場合は自分の体を光らせることで節約している。


「何をやっているの! 愚か者どもめ!! あんな落ちぶれどもに敗北するなど、美しくない!!」


 おっと、早くも敵さんのお出ましのようだ。

 どうやら逃げて来た部下を上司が説教しているみたいだな。それにしても、落ちぶれどもか。確かに、魔なる者としては今の俺達の行いは落ちぶれに見えるだろうな。


「まったく! それでもこの美しきアルデュンド様の優秀な部下なの!!」

「ねえ。明らかに、声が男なんだけど」

「エルジェさん。おそらく最近漫画で出てきたおかまという種族です!」

「おかまって種族だったのか?」


 おかま。所謂性別が男だが、女性のような言葉遣いと仕草を扱う人達の総称を言う。漫画やアニメなどでは、なんだか知らないが普通の男子よりもかっこいいと思ってしまうことが多い。普段は、その見た目から女性のような仕草と言葉で若干引くこともあるが、そこから出てくる突然の男らしさがギャップとなってかっこいいと思ってしまうのだろうなぁ。

 さてはて、この先に居るおかまさんはどうなんだろうか。


「あっ、でっかい扉だ」

「明らかにこの先に居ますよって空気がバリバリだな」


 罠ひとつなく、難なく進んでいると鉄の扉が現れた。そして、その横にある岩の壁に奇妙なボタンが設置されている。


「これは」

「待て」

「あうっ!?」


 エルジェが、何の考えもなしにボタンを押そうとするので、首根っこを掴み止める。


「罠かもしれないだろ。少しは考えろ」

「インターホンかもしれないじゃん」

「インターホンが異世界にあるかっての」


 しかし、インターホンというものがないのにどうしてボタンがあるのか。ファンタジーもののボタンと言えば、ダンジョンとか遺跡などにあるもの。

 壁や床が沈む形式が多いが……これは明らかにでっぱりを押すタイプ。


「ですが、どうします? 何の目的もなくボタンを設置するとは思えませんが」

「そうだな……よし」


 考えたすえ、俺は。


「エルジェ。扉にぶっ放せ」


 ボタンを無視することにした。


「はーい!!! 《エルジェ・レイ》!!!」


 エルジェも、ボタンにすっかり興味をなくしたのか。俺の指示通りに鉄の扉に遠慮なく強力な閃光をぶっ放した。かなりの強度を誇っていたようだが、エルジェの攻撃の前には呆気なかった。


「げほ! げほ!! ちょ、ちょっと!! あなた達!! そこのボタンがあったでしょ!? それが、扉を開けるためのものなのよ!?」


 扉が破壊され、砂煙が舞う中から海パン一丁の筋肉質な男が現れた。髪の毛は長く、やたらと艶がありさらさらだ。あいつが、アルデュンドとかいう奴か。それにしても、あのボタンが扉を開けるためのやつだったとは。

 案外しっかりしているところがあったんだな。


「いや、だって明らかに罠そうだったし」

「もう! 信じられない!! それで、この美しきアルデュンド様に何のよう……あら? そこに居るのはクローナ様じゃなぁい?」

「お礼参りにきた」

「お礼参りって……」

「じゃあ、仕返し?」


 ……どっちでもいいか。


「そんなわけで、お前達を倒しに来た。覚悟してもらうぞ」

「どうせこれまで襲ってきたルコザとかバルザルの仲間なんでしょ! これ以上悪さをする前に、やっつけてやる!!」

「あらあら? ということは、あなた達がルコザ経ちを倒した……なるほどね、天使が居てはあの子達がやられるのも当然ね。でも!! この私は、簡単にはやられないわ!! この美しき」

「《エルジェ・レイ》!!」

「へ?」


 なにやら口上を述べようとしていたようだが、エルジェがそんなの関係ないとばかりに攻撃を行う。


「ぎゃああっ!?」

「やった!!」

「……口上ぐらい言わせてやってもよかったんじゃないか?」

「正義の味方の口上ならともかく悪役の口上に付き合ってられないよ!」

「ですが、悪役にも悪役の美学といううものがあると思うのですが」


 うんうん、レリルの言うこともごもっともだな。


「こ、この天使がぁ!! 美しきアルデュンド様の美しき口上を聞かないなんて!! もう許さないわ!! お前達!! さっさとやっておしまい!!」


 おー、意外と頑丈だな。エルジェの攻撃をまともに受けたのに、まだ立ってられるなんて。普通の悪魔だったら、一瞬にして蒸発してもおかしくないのに。


「むむ!! まだあんなに生き残りが!!」

「しかし、こんな狭いところではまともに戦えませんね」

「じゃあ、こうする」


 洞窟内では戦い難いと、クロがこの場に居る全員を外へと転移させた。


「な、なんですって!?」

「よーし!! これで思いっきり戦えるぞぉ!!」

「外に出たからってなんだって言うのよ!! さあ、お前達! 美しき戦いをお見せなさい!!」

「やってやるぜぇ!!」

「やらなきゃアルデュンド様に何をされるかわからねぇ!!」

「あんなのもういやだぁ!!」


 なんだろう。部下達のやる気が上司から来る恐怖でもののようだけど。いったい部下に何をしているのか。なんだか可哀想だけど、こっちもやらないとやられるからな。

 悪く思うなよ、お前達。


「いきます! 《エア・フォール》!!!」

「ぎゃあ!?」

「つ、潰されるぅ!?」


 レリルが発動した術は、風を相手に叩きつけることで、押しつぶすものだ。


「そこへ、トドメの《閃光波動拳》!!!」


 身動きがとれない敵に対して、エルジェが光によって生成された巨大な拳を叩きつけた。


「おー、お前そんな技持ってたのか」


 てっきり遠距離の術しかないのかと思ってた。


「昨日の朝アニメを観て作った!!」

「……」

「なに?」


 一日で作ったって、やっぱりこいつ能力の高さだけはすごいな。作りたいと思っただけで、作れるなんて普通にはできないことだ。


「いや、お前ってすごいなって」

「えへへ。なに? いきなり褒めて。照れるなぁ」

「お前達!! 何をやってるのよ!! しっかり戦いなさい!!」


 部下が簡単にやられるものだから、上司は激おこである。しかし、部下達はレリルとエルジェの連携攻撃でもう動くことができないでいる。


「代わりにあなたが戦えば?」


 と、後ろでぎゃーぎゃーと騒いでいるアルデュンドを俺達の目の前に移動させた。


「よーし。俺が相手になってやる」

「ふん。いいわ。美しくない部下達に代わって、私が相手をしてあげる!! 見なさい! この美しき肉体美!!」


 などとその場でポーズを取り始める。

 

「せい」

「あぁん!!」


 そんなアルデュンドへと遠慮なく俺は蹴りを入れる。天高く飛びあがったアルデュンドは弧を描き、地面へと叩きつけられる。


「また……なの……。あなた!! 私の肉体美をちゃんと見なさいよ!!」

「興味ない」

「くぅ! なんて常識知らずのガキ!! こうなったら、もう遠慮なんてしないわ!! いくわよぉ!!!」


 ようやく攻撃してくるようで、真っ直ぐ俺へと突撃してくる。反撃しようとエルジェとレリルが構えるが、それよりも先に俺が。


「なっ!?」


 アルデュンドとの間合いを詰めて。


「このぉ!!」


 反撃を跳躍して回避し、そのまま落下を利用して強烈なかかと落としを叩きつけた。


「ごはぁ……!? そん……な……この美しき……アルデュンド様、が……」


 一撃粉砕。気絶したアルデュンドとその部下達を縛りつけ、これからギルドに引き渡そうとしたところ、足下に見覚えのある魔石を発見した。


「これって、ルコザの時と同じ魔石か?」

「じゃあ、また映像が出るのかな?」

「どうなんでしょう? あの時は偶然出てきたようにしか思えませんでしたし」


 しかし、それでも何かがあるんじゃないかと魔力を流し込んでみたところ反応があった。魔石から青白い光が溢れ出し、それが何かの映像を映し出す。

 

《くっくっく。まさか、アルデュンドまで倒すとはな》

「あっ、なんか出てきた」

「この人が親玉でしょうか?」


 映像に映っているのは、顔全てを隠すフルフェイスの兜を被った奴。いかにも強者ですよみたいな座り方をしている。やっぱりこっちの様子は筒抜けだったみたいだな。


「単刀直入に言う。お前は誰だ?」

《愚かだな。そう簡単に正体を明かすとでも思っているのか?》


 それもそうだな。さすがに親玉だけに手ごわい、かな。


「なんでー! 教えてくれたっていいじゃん!」

《はっはっはっは!! だが、これだけは教えてやる!! 貴様らはもう後戻りはできない!! ここまで我らの邪魔をしたのだからな!!》


 正直、今回のアルデュンド以外はそっちから来たはずなんだけど。まあ、流れ的にそういうことにしておこうかな。


「言ってろ。お前が誰だろうと、俺達は一歩も引かない」

《吼えているがいい。お前達のその威勢も我らが本気になった以上、そうは続かぬということを覚えておくがいい!!》


 言うだけど言って、映像は切れた。再度魔力を流し込んでみるも、反応はない。どうやら一回きりの使い捨てのようだ。


「本気にか。だったら、俺達も本気の本気でいかないとな」

「ですが、その前にこの人達をギルドに引き渡しましょう。何か情報を得られるかもしれません」

「だねー。クロ。さっそくお願いね」

「うむ」


 謎の敵の親玉の登場でますます戦闘は激しくなるだろう。だが、相手が誰だろうと俺達のやることは変わらない。世界の平和のため頑張っていこう。

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