第十一話
プロテスを撃退した俺達は、無事地球へと帰還出来た。時計を見るとすでに昼の一時を回っていたが、俺達はカップ麺を食べることにした。
そういえば、クロを助ける前にお湯を入れていたカップ麺ってどうしたんだっけ?
ゴミ箱に空っぽになった容器が捨てられていた。
そう考えると……リーさんが捨てたのかな?
あれだけの量だ。さすがに全部食べるのは、無理があるだろう。でも、どこにも捨てた形跡が見当たらない。
まさかなぁ、などと考えつつ俺達は出来上がったカップ麺を空腹な胃の中に入れていく。動いた後だったので、これまた美味さが倍増。
そして、食べた場所なのだが……今までは、部屋で食べていたクロ。今回の件で成長し、対人恐怖症も克服したようで、リビングで皆と一緒に食べたのだ。
おいしいと笑顔で食べたカップ麺は本当においしかった。その後、仕事を終えたリーさんが帰宅すると、すぐクロへと嬉しそうに抱きついた。いつもの幼女を捕らえようとする眼光ではなく、心から喜んでいる証拠に、涙が零れていた。
そのためだろうか。いつも避けていたり、抵抗するクロが今回に限り、身を委ねていた。その後も、皆で夕飯の準備をして、リビングで一緒になって食事をしたのだが、皆で作り、皆で食べる料理は自然と胃の中に収まっていく。
そして、成長したクロがある日こんなことを言い出した。
「霊児。お願いがある。私、皆と一緒に冒険者やりたい」
そんなこんなで今現在、俺達はギルドに居る。
まだ後遺症のようなものが残っているのか。それとも、まだ克服できていないのか。ギルド特有の騒がし雰囲気に若干びくびくしながらも受付へと歩んでいくクロの姿を、俺は子供に同伴する親のように後ろからついて行く。
「あ、あの」
「はい。ギルドへようこそ。本日はどのような用件でしょうか?」
受付はユリアさんのところがいいと俺が提案した。受付に来たのが小さな女の子だというのに少し驚いていたが、俺達が背後に居るのを確認した途端に察したのか、すぐ営業スマイルになり対応し始める。
「その……」
「はい。なんでしょうか?」
たった一言でいいんだ、黒。
後ろで、頑張れと必死に俺達は念じていた。それが伝わったのかどうかはわからないが、クロは手に持った登録料1500ルドを受付に出し、口を開く。
「冒険者登録、お願いします!」
おっし! 言えた!
ユリアさんは、その言葉を待っていましたと言わんばかりに、ほっこりとした笑顔で登録料を受け取り、登録に必要な情報を記入するために用紙とペンを出した。
「かしこまりました。それでは、こちらの必要な欄にご記入をお願いします」
「うん」
こうして、いつもの流れで登録は進行していき、数分後。
「それでは、クローナ=ルルフェルズ様。こちらが、あなた様のギルドカードとなります。使い方は、素敵なお仲間にお聞きしてください」
「ユリアさん。それは職務放棄ですか?」
突然、こっちに振ってきたので俺は困り果てた声で言う。ユリアさんは、くすっと微笑みながら、いえいえと首を横に振る。
「そんなわけないですよー」
「そんなわけありますって!!」
「相変わらず、ユリアは面白いねー」
「喜んでいただき、ギルドの受付としては嬉しい限りです」
「それは、ギルドの受付としての勤めなのですか?」
うんうん、ごもっともな意見だレリル。
「はい。もちろんでございます。受付として、冒険者を喜ばせるのもひとつの仕事なのです」
「そ、そうだったんですか。知りませんでした。これはメモの必要がありますね」
「いや、確かにそうだけどさ」
これを聞いていると、他にもレリルの変な知識を教えていないか心配になってきた。
ま、なにはともあれだ。無事に、クロの冒険者登録は済んだことだし、これでクロは俺達と同じ冒険者だ。
「それで、クロ。お決まりなんだけどさ~。職業なんだった?」
エルジェよ、それはお決まりなのか? ギルドカードを見詰めていたクロにエルジェは問いかけていた。それは、いつものように他人の職業を聞いていたのだ。
てか、今までの経験からもうわかりきっていることだと思うんだが。
「私は……【魔王】だった」
「霊児と同じだ! さすが!!」
ですよねぇ。もし、違っていたらどうしようかと思ったぞ。
「何がさすがだよ、まったく。ほら、登録が終わったら、さっさと行くぞ」
「どこに?」
クロが小首を傾げたので、先輩としてやることを教えてやった。
「もちろん、クエストだよ! 冒険者がやることといったら、クエストだろ!! おら! いくぞ!!」
「だね! よーし! 今日も高いやつに行くぞー!!」
「あの、あまり考えもせずに依頼書を取るのは」
「初クエストか……燃えてきた!」
ゆるりとした冒険者生活が俺の理想なんだが、今回は特別に良いとするか。
そんなこんなで、第三章完結!
次回からは、第四章!
新キャラが色々と出てきます。では、次回お会いしましょう!




