プロローグ
第四章開幕です。
「なんか、おかしくないか?」
すっかりカーテンを開けて太陽の日差しが差し込む個室(空間魔法でちょっと広さを弄っている)で、いつものように楽しくゲームをしていた俺は呟いた。
元対人恐怖症だったクロことクローナ=ルルフェルズを隣に座らせ、俺はコントローラーを握っている。
今は、協力プレイの真っ最中だ。壮大な世界を主人公とその仲間が旅をし、敵と戦い、事件に巻き込まれ、いつの間にか世界を救ってしまうというゲームだが、十分楽しめる戦闘システムに俺も満足だ。
「なにがおかしいの?」
俺の些細な呟きに隣でコントローラーに握っていたクロが反応した。相変わらずの長い黒髪で、大き目のシャツ一枚というラフな格好をしている。
そこにはクロが大好きな【熱血武装ダイフェニックス】の熱血武装を纏った主人公熱士の絵がデカデカとプリントされている。
俺に、箸でポテトチップスのり塩味を放り込み小首を傾げる。ちなみに、機械類を触っている時に手で直接食べるものはお菓子だろうと箸を使おう。
一番スナック菓子と合うのは割り箸だ。あの四角い先っちょじゃないと、うまく掴めないのだ。
まあ、これは個人的な意見だ。あのまるっとした箸でも掴めると言えば掴めるんだけど。
「いやさ。この前、クロも冒険者になってこれからは四人で冒険者生活をしようぜ! みたいなノリだったのに、どうして部屋に籠もって俺たちはゲームをしているんだろうって」
「えー。冒険ならちゃんとしてるじゃーん。あっ! 尻尾切れた!!」
「相手が逃げたらしっかりと剥ぎ取っておかないですね。よく忘れるんですよ。尻尾って」
などと、俺の言葉に近くで狩人となってモンスターとゲームの中で戦っているお気楽天使エルジェは答える。
金色に輝く髪の毛と天使特有の白い翼。子供のように元気な声で楽しそうに携帯ゲーム機を握ってプレイしている。その正面では、攻略本を傍らに知識を詰め込みながらエルジェと一緒に狩人と化しているちょっと天然が入ってる、色彩美しいツインテールなちょっと幼い体躯で、四色の髪飾りがチャームポイントな精霊王レリル。
「お前ら、ゲームで冒険しているだけだろ? 俺が言いたいのは現実の冒険であってだな」
「でも霊児、いつもゆるりとーとか言ってるじゃん」
「そうだけどさ。別にこうやって部屋に篭ってゲーム三昧って意味じゃ」
「霊児、戦闘。はやく」
「お、おう! すまん、クロ」
エルジェの意見に反論しようとするが、クロに服の袖をくいくい引っ張られ戦闘が始まったと知らされ、俺は、慌ててコントローラーを握り画面を見る。
爽快で、派手な技が敵をなぎ払う。
エフェクトも本格的だし、SEもいい。これはかなり楽しめると俺は思った。
……いや、そうじゃなくて。
「あのな? 俺が言いたいのは」
「やったー! 討伐完了!!」
「制限時間内に剥ぎ取りをして、後は採取ですね。この辺りだと鉱石を掘れるところがあるそうです」
「よし! じゃあ、掘りに行こう!」
俺の話など聞きやしない。
すっかり、こっちの色に染まってしまって……あの頃の冒険心がどこへ行ったんだ! まあ、生前の俺は大体こんな感じだったけどさ。今は、ファンタジーな異世界に居るんだから、自由に冒険をしたいわけで。
狩猟を終えて、エルジェは二リットルの炭酸飲料をがぶ飲みしていた。
あの天使、絶対太るな。いや、エルジェに限ったことじゃない。
ここで、引き篭っていればいずれ俺も……悪魔族って、どれくらいで太るんだろ?
「はい、コンソメ」
「……ありがとう」
のり塩味がなくなってすぐにコンソメ味を割り箸で摘み、俺の口へと運んできてくれるクロ。
太ってしまう! 確実に! しかし、こんな生活をしているクロは、全然そんな風には見えないから、悪魔族って以外と太らないのか?
しかし、このまま怠惰な生活をしていればいずれは……そんな若干の恐怖を感じた俺だが、やっぱりコンソメには勝てなかったよ。
スナック菓子を炭酸飲料で流し込むのは、止められない。絶対太る原因だよなぁ。
「次は、何を狩りにいく?」
「そうですね。丁度、作りたい武器がありますから、その素材を」
「そうだ。今度は、遠距離武器でも使ってみようかな~」
「それはいい考えです。そうなると私が前衛を勤め、エルジェさんが後衛という陣形になりますね」
「えーっと、どんなのがいいかな?」
「やはり、連射性能がいい武器を」
「じゃあ、これかな?」
「これだと、使える弾の種類が」
背後からの狩人達による武器をどうするか話を聞きながら俺は考える。このままだと、確実に冒険心は消え、引き篭り生活を送ることになる。
そんなことになったら、命を救ってくれたゼルファスに申し訳が立たない!
どうして、俺は冒険者になった。
どうして、俺は仲間と一緒にいる。
それは、冒険するため。
魔物に苦しめられている人々を、魔王から世界を救うためじゃないのか! あっ、別にあの世界はそんなことはなかったな。そもそも、俺自身が魔王だし。
……ん? 魔王? そういえば、今、異世界を侵略している魔王って……。
「クロ。お前の空間転移って、クロが記憶している場所だったらどこへでも転移できるんだよな?」
「そうだけど……どこか行くの?」
パリッと、ポテトチップスを齧りながら小首を傾げた。
そうか。
だったら、問題ないな。
「おい! お前ら! ちょっと耳を貸せ!!」
やることが決まり、俺は勢いよく立ち上がって叫ぶ。
俺の声に、エルジェがレリルがクロが視線をこちらに向ける。
「どうしたの~?」
「何か重大なお知らせですか?」
「なんだか、すっごく張り切ってる」
「ああ。俺は、今からあることを実行する」
俺の言葉に、三人は一斉に首を傾げる。
そう、俺がこれから実行することと言うのは。
「友達作りさ」
次回友達作ります。




