第2章 第3話:逆転するアーマークラス(AC)
アルカディア騎士団の駐屯地。そこは重厚なプレートアーマーに身を包んだ精強な戦士たちが、カチャカチャと誇り高く練り歩く場所のはずだった。
だが、ログの目の前に広がる光景は、あまりにも「不審者の集会」だった。
「……おい、エクセル。あそこに並んでいる連中、何だ? 騎士団じゃなくて、公然わいせつ罪の予備軍か?」
整列している騎士たちは、兜こそ被っているものの、首から下はパンツ一丁。あるいは薄汚れた布切れを腰に巻いただけの「全裸」に近い姿で、真剣に剣を振っている。
「あ、あれ? それはね……鎧を着れば着るほど、ダメージがいっぱい当たっちゃう仕様にしたからだよ! ほら、重い方が衝撃が『ぎゅっ』て詰まる感じでしょ?」
ログは無言でデバッグコンソールを展開した。そこには世界の「防御判定ロジック」が、古いRPGの仕様を中途半端に模倣した成れの果てとして記述されていた。
『Final_Damage = Incoming_Damage + (Armor_Class * 2)』
「……お前は、馬鹿か。『加算』してどうするんだよ!」
「えっ? アーマークラス(AC)って、高いほうが強そうでしょ?」
「ウィザードリィとかの古典RPGでは、ACは『低いほど優秀』なんだよ! 0を基準にマイナスに振り切るのが最強なんだ。それを、お前が適当に防御力の数値をダメージ計算に足し算しちまったせいで、防御力が100ある奴は、素っ裸の奴より200ダメージも余計に食らうことになってるんだぞ!」
「ひえぇっ!? 守れば守るほど痛いってことぉ!?」
「そうだ。この世界の物理法則じゃ、鉄の鎧は『ダメージ増幅装置』だ!」
その時、駐屯地の奥から、ひときわ重厚な鎧を纏った騎士団長が姿を現した。全身を特注のミスリル合金で固めた彼は、「伝統を重んじる」と言わんばかりに胸を張っている。
「貴様ら! なんだその破廉恥な姿は! 騎士の誇りを捨てて全裸で戦うなど……ぎゃあああっ!?」
騎士団長が、足元の小さな小石に躓いた。普通なら鼻緒を擦りむく程度の転倒。だが、次の瞬間、彼の鎧が凄まじい衝撃を「増幅」し、まるで大砲の直撃を受けたような爆音と共に、騎士団長は空の彼方へと吹き飛んでいった。
「……見ろ。ACがカンストしてるせいで、自重による微々たる衝撃すら即死ダメージに変換されてやがる。あいつ、今のでHPの半分は持っていかれたぞ」
「団長ぉぉーっ! だから脱いでくださいって言ったのに!」
部下たちがパンツ一丁で駆け寄る。シュールすぎる光景だ。
「よし、エクセル。今すぐこの計算式を修正する。Armor_Classを『減算(引き算)』に書き換えろ。それから、マイナス判定を許可しろ」
「えっ、あ、う、うん! でも、急に書き換えたら、今脱いでる人たちが……」
「いいからやれ! 騎士が全裸で戦うのが『正解』の世界なんて、倫理的にデバッグ対象だ!」
エクセルがオロオロしながら『創世の書』のパラメータをいじる。「ポチっとな! 符号反転!」
次の瞬間、世界の法則が正常……というか、「極端」に書き換わった。吹き飛んで戻ってきた騎士団長のステータスをコンソールで確認する。
「……よし。これで鎧を着ている奴ほどダメージが減る。……が、お前の設定が極端すぎて、今度は『ACが0以下になると、ダメージが回復に転じる』バグが出てやがるぞ」
「えへへ、守りすぎて元気になっちゃうんだね!」
「笑い事か! 攻撃されればされるほど健康になる騎士なんて、不気味すぎて魔王も逃げ出すわ!」
ログは溜息をつき、騎士団長に近づいた。「おい、団長。今すぐその鎧を着直せ。今ならお前、火山の噴火に巻き込まれても、肩こりが治る程度で済むぞ」
「な、なんだかわからんが……体が、軽い! 鎧が、綿毛のように感じるぞ!」
「……だろうな。物理演算の矛盾が、お前の存在を『無敵』の定義に押し込めたからな」
ログは、パンツ一丁で戸惑っている騎士たちを横目に駐屯地を後にした。背後では、重装備に戻った騎士団長が「これぞ騎士の誇りだーっ!」と叫びながら、部下たちの剣をわざと受けて「ふぉぉぉ、癒されるぅ!」と悶絶している。
「……エクセル。第4話は『描画制限』の話だったな。……おい、あそこのモンスターの群れ、なんで半分だけ点滅してるんだ?」
「あ、あれ? それはね……世界の容量がいっぱいになっちゃったから、交互に表示してるんだよぉ!」
ログは頭痛を抑えるようにこめかみを押さえた。「……ファミコン時代かよ」
【第2章3話・デバッグログ】
▶ 事象:防具を装備するほど被ダメージが増大する逆転現象。
▶ 原因:ダメージ計算式に防御力(AC)を減算ではなく加算で記述していたため。
▶ 対策:演算子を「+」から「-」に変更。符号反転を実施。
▶ 懸念:ACが低くなりすぎると被ダメージがマイナス(回復)に反転するバグを放置中。
【次回予告】
第4話「レトロゲーム特有の『スプライト制限』」──「おい、点滅している間に攻撃を当てるなんて、格闘ゲームの隠しキャラみたいな真似させるな!」
【約10万字完結済】月・水・土 21時更新。
※初回5話公開。最初の1週間は毎日更新の予定。
※本作はAIを執筆補助に使用しています。




