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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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38/89

鳩の回

最初に気づいたのは、宿屋のおばちゃんだった。

「鳩、増えてない?」

平和か。

広場にはいつもの鳩が三羽いる。

白、灰色、ちょっと汚い灰色。

そこに。

見慣れない一羽。

少しだけ丸い。

以上。

だが町はざわついた。

「よそ者だ」 「どこから来た」 「スパイでは」

鳩だぞ。

俺はギルドの椅子で干からびながら聞いていた。

関わらない。

鳩は専門外。

しかし。

パン屋が言う。

「パンくずの取り分が減る」

死活問題に格上げされた。

農家が言う。

「種を食うかもしれん」

経済問題に発展。

子どもが言う。

「かわいい」

唯一の正常意見。

ミレアが観察モード。

「行動パターンが既存三羽と違います」

やめろ分析するな。

問題はこうだ。

既存三羽は、暗黙の縄張りがある。

広場中央は白。

井戸付近は灰色。

パン屋前は汚い灰色。

だが新参は。

どこにでも行く。

自由すぎる。

結果。

既存三羽が微妙に距離を取る。

空気が悪い。

鳩界の緊張。

町人会議が開かれた。

議題。

「第四鳩の扱い」

帰りたい。

意見が飛ぶ。

「追い払うべき」 「様子を見るべき」 「名前をつけよう」

最後おかしい。

なぜか黒板が出る。

【鳩の今後について】

平和の極み。

俺は壁際から呟く。

「鳩に任せろ」

正論。

だが通らない。

パン屋が言う。

「参謀殿、何とか」

鳩を?

ミレアが冷静に言う。

「資源は有限」

結局。

一日観察することになった。

町ぐるみで。

暇か。

観察結果。

・新参は争わない

・パンくずは横取りしない

・ただ距離感が近い

距離感が近いだけ。

人間にもいる。

夕方。

事件。

白鳩が突然飛び立つ。

新参がその場所に立つ。

一瞬、空気が凍る。

町人が息を呑む。

大げさ。

だが。

何も起きない。

白鳩は屋根に移動。

新参は地面をつつく。

終わり。

沈黙。

町人がぽつり。

「……別にいいか」

結論出るの遅い。

その瞬間。

汚い灰色がパンくずを独占する。

三羽も四羽も関係なかった。

パン屋が言う。

「汚いのが一番図々しい」

今さら。

会議は自然解散。

黒板は消される。

【鳩の今後について】は歴史から消えた。

夜。

宿の前。

新参は屋根にいる。

白と並んでいる。

普通に。

ミレアが言う。

「社会は適応します」

鳩に教わるな。

翌朝。

さらに一羽増えていた。

町人全員が空を見上げる。

俺は言う。

「もう数えるな」

掲示板に小さな張り紙。

【鳩への過度な干渉禁止】

誰が書いた。

たぶん俺だ。

無意識。

世界は動いていない。

核も暴走していない。

ただ鳩が増えただけ。

それでも町は半日使った。

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