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小物冒険者の日常災害  作者: おこげ


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39/107

ぷるぷるする回

朝。

パンを買いに行った。

パン屋がつま先立ちしている。

ぷるぷるしている。

「……どうした」

「なんとなく」

なんとなくで足は震えない。

ギルド。

受付嬢がつま先立ち。

書類を渡すたびに上下している。

ぴょこ。

ぴょこ。

「何の訓練だ」

「特に意味はありません」

意味ないのにやってる。

振り返る。

冒険者全員つま先立ち。

重装の男がぷるぷるしている。

鎧がカチャカチャ鳴る。

床に傷が増える。

誰もやめない。

外。

農家が畑でつま先立ち。

収穫のたびに上下。

ぴょん。

ぴょん。

カカシまでなぜか傾いている。

「ミレア」

「はい」

「なぜだ」

「分かりません」

ミレアもつま先立ち。

冷静な顔で震えている。

やめろ。

理由を探す。

どうやら朝一番に通った旅芸人が言ったらしい。

「背が高いと運気が上がる」

それだけ。

町、全採用。

軽すぎる。

昼。

全員疲れている。

しかし誰もやめない。

やめたら負けの空気。

誰と戦っている。

井戸番が水をくもうとして転ぶ。

つま先のまま落ちかける。

二人が支える。

全員つま先。

不安定すぎる。

パン屋が悲鳴。

「もう限界!」

でも下ろさない。

なぜか下ろさない。

俺は普通に立っている。

「参謀殿はやらないのか!」

やらない。

やる理由がない。

「低いままでいいのか!」

何の高さだ。

精神か。

町の空気が変わる。

やっていない俺が浮く。

怖い。

俺はゆっくり、つま先立ちになる。

最悪だ。

夕方。

町全体が静かに震えている。

集団ふくらはぎ破壊イベント。

突然。

子どもが叫ぶ。

「もういいや!」

かかとを下ろす。

ペタ。

その瞬間。

全員が下ろす。

ペタペタペタペタ。

一斉着地。

音がすごい。

沈黙。

誰も何も言わない。

パン屋が言う。

「……何してたんだっけ」

知らん。

ミレアが真顔で言う。

「群集心理の実験でしょうか」

実験するな。

その日以降。

誰もその話をしない。

ただ。

町の人間のふくらはぎだけが異様に発達した。

なぜか筋肉質。

翌日。

旅芸人が戻ってきて言った。

「昨日は“背が高いと運気が上がる”でしたが

今日は“片目を閉じると恋愛運が上がる”です」

町。

全員。

ウインク。

終わり。

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