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小物の異世界生活  作者: おこげ


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27/69

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始まりは最悪だった。

ギルドでいつものように壁に張り付いていた俺の前に、

筋肉質の冒険者が立った。

でかい。暑苦しい。

「参謀殿」

嫌な呼び方。

「恋の策を授けてほしい」

帰りたい。

「いや無理」

即答。

「相手は受付嬢だ」

地雷。

「どう攻めればいい?」

攻めるな。

俺は恋愛経験ゼロだ。

ミレアが横で本をめくる。

「人間関係も戦術の一種」

裏切り者。

仕方なく言う。

「……まず距離を詰めすぎるな」

普通。

筋肉が目を見開く。

「なるほど……包囲しない、と」

違う。

翌日。

受付前に整然と並ぶ筋肉。

三歩下がって待機。

無言。

圧。

受付嬢が怯えている。

「参謀殿の策だ!」

やめろ。

噂は一瞬で広がった。

「参謀、恋も操る」

やめろ。

次に来たのは魔法使い。

「幼なじみと進展がない」

知らん。

「何か刺激が欲しい」

危険ワード。

俺は面倒になって言った。

「一回、距離置け」

適当。

翌週。

魔法使い、泣きながら報告。

「向こうに彼氏できました」

俺のせいじゃない。

でもなぜか。

「参謀の試練だな……」

前向き解釈やめろ。

ギルドの片隅に机が置かれた。

札。

【参謀の恋愛戦略室】

誰が作った。

椅子まである。

逃げ場がない。

列ができる。

なぜ。

冒険者、商人、なぜかパン屋。

「妻が怒っている」 「婚約者が冷たい」 「告白のタイミングは?」

俺は壁になりたい。

ミレアが横でメモを取る。

「興味深い」

何が。

俺は全部、適当に答える。

「謝れ」 「待て」 「様子見」

九割それ。

だが。

なぜか成功報告が増える。

「謝ったら許された!」 「待ったら向こうから来た!」

偶然だ。

絶対偶然。

ついに。

町の掲示板に貼り紙。

【恋愛参謀・本日夕方まで】

違う。

俺は畑の人間だ。

そこへ。

見覚えのある影。

ヒルダ。

王都帰り。

有名人オーラ。

「久しぶりですね」

やめろ。

こんな場面で再会するな。

ヒルダが微笑む。

「恋愛も、静観ですか?」

やめろ。

深いこと言うな。

周囲がざわつく。

「元パーティー!?」 「参謀の元相棒!?」

誤解が増える。

ヒルダは言う。

「私も相談していいですか?」

心臓止まる。

「……何を」

「どうやったら距離を縮められますか?」

誰と。

聞きたくない。

ギルド全体が静まり返る。

俺、逃げ場なし。

ミレアが小声で言う。

「ここが山場」

何の。

俺は絞り出す。

「……無理に縮めなくていい」

静観理論。

「自然でいい」

無難。

ヒルダは少し考えて、

笑った。

「参謀らしいですね」

その笑顔に。

ギルド全体が勝手に感動。

「深い……」 「究極の策だ……」

違う。

ただ逃げただけだ。

その日以降。

俺の肩書きは増えた。

・内部監査参謀

・教育顧問

・恋愛軍師

もうやめて。

俺はただの小物だ。

畑でカラスを見ていた男だ。

なのに。

なぜか。

人生相談所になっている。

一番怖いのは。

俺が一番恋愛に向いてないことを、

俺だけが知っていることだった。

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