■第一章 6−3 真理恵の逆転打
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神宮寺家の次期当主である私には、“鍵”を託されています。貴女を体に埋め込まれる前に! 貴女たちに気づかれないようにするために!
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真理恵の言葉を、人狼も「姫」も聞き入っている。
真理恵に託されたキーワード。それが、2人の障害を消すことに繋がるのだろうか?
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『それを知っておかなければいけない。魔道具を統率するのに必要だから』『これは魔道具のいない場所で代々受け継がれている』と。そのときは言われたのですが……多分、核のみなさんには、こちらの世界に存在を縛り付ける、何か呪詛のようなものがかけられていると推測できます。それを解放するためのキーワードではないでしょうか? だから魔道具を使う者たちの言うことを聞くしかなかった。呪詛を解く鍵だから魔道具に知られてはいけなかった!
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もしも真理恵の推測が正しければ、核になっている存在は、元いた世界へ戻ることができるだろう。「姫」ももちろん、すべての魔道具は使用不能になる。
真理恵の言葉に、人狼も「姫」も聞き入っている。
託されたキーワード。それが、2人の障害を消すことに繋がるのだろうか?
真理恵の言葉をじっと聞いていた人狼が、彼女の推測を裏付けする。
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——だとすれば、姫やほかの者たちの帰還は叶うだろう。時空を超えて我らがこちら側に来れたのも、同じ大魔法——呪詛、と言っていたな——ソレが働いたためだ。大魔法自体が消えれば、存在が変質することなく、元の世界に帰れるだろう。個々の意志さえ自由になれば、何の問題もないだろう。私は独力で時空を越えた、私以外はだが。
それと……そうなると、これまでの“業”はすべて君の一族に返ってくるだろう。間違いなく。血塗られた歴史だろうが、業が重なり過ぎている。どんな自体になるのか、私にも推測できない。
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血塗られた歴史、と人狼は言った。ということは、神宮寺家を含む始祖の一族が、こちら側の世界で何をやってきたのか、きとんと把握しているということだろう。
なのに、利用された側——魔道具作りの犠牲になった者たちである人狼が、魔道具作りを続けていた神宮寺家の次期当主を気遣っているように見える。
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“業”が跳ね返る……そうでしょうね。でも、私は一族の犠牲になってきた者でもあります。力を妬み、意味嫌い、それでも祭り上げる。そんな馬鹿馬鹿しいことを、繰り返していた者たちに放つ、これは私の素敵な逆転打なんですよ!
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真理恵は晴れやかな気分で言い放つ。
抗うことが長い間できなかった真理恵が、自分の手ですべての状況をひっくり返せる、ついに絶望が終わる! とハイテンションになっている——が、浩介は密かに突っ込む。
彼らに、野球用語を使っても、きちんと伝わるのか判らないぞ、と。
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同じ頃。ヴァネッサは身支度を整えていた。それは外出時のいつもの服装ではなく、彼女が“魔女の正装”としているものである。足首までの丈がある黒のドングドレスで、胸元には大きくスリットが入っている。首には無骨で太い、何か下の鉱石をいくつもぶら下げたネックレス。右の人差し指と小指、左の中指と親指に指輪を着ける。最後に、左右の手首にジュエリーがついた腕輪をはめ、服の準備はすべて終わる。
メイクはすでに終えている。それは浩介との行為を行うときのものと同じだが、それが“魔法の理論に従って行っている”ということを浩介は知らない。
別に魔女に正装という概念はない。だが、ヴァネッサは魔法を駆使するとき、いつもこの格好をしている、ということに傍にいるセシルが気がついていた。
セシルは『今日は出かける必要はないよ。夜に用事ができるはずだから、そのつもりでいてくれ』と言われ、屋敷に止まっていた。そして夜が訪れ、今はヴァネッサの身支度を手伝っている。
「……さて、そろそろお話し合いも終盤だろうし、まとめに入ろうかね。同業者がやったことだが、そのまま放置というのも気分が悪いし。そろそろ終幕といこう」
そう言いながら、お手製のパヒュームを叩いて、緩やかに笑顔を浮かべる。
セシルは着替え終わったヴァネッサの衣服を受け取りながら、その言葉に返す。
「終幕は依頼の、ですか? それとも……」
「解っているだろう? もちろん、馬鹿馬鹿しい“作られた一族”が落日を迎えるのだよ。まぁ、タイミングとしては思いっきり夜だがな」
ヴァネッサが軽口を叩き、お気に入りの長い杖をセシルから受け取った。
本日はもう1本です。




