三日目2
オークション三日目の午後の部。
最終日の今日は予想通りに書物が多く出品され、次々と私が好きそうな本が落札されていく。
今朝はソフィアにセルディーヌ卿の追跡に失敗し危険な目にあったことに対し、こっぴどく叱られてしまったので、先ほどから競売の進行を何だか落ち着いた気持ちで見ていられる私であった……おそらく叱られ疲れだろう。
『続いての品は女性作家ウォレーの古書【セシィリア】でございます』
様々な事にも言えることだが、本の繋がりもなかなかに奥深い。
私の大好きな本【夢商人】シリーズの作者ウォレー。
彼女は怪翼聖書第三章の写本の影響で作家を目指し、奇人作家のデミウスに弟子入り。その後、一人の男性の狂気と愛に溺れた半生を描いた自伝本とも言える【堕落】の作者ラジャンの影響で【セシィリア】を書いた。そのラジャンも怪翼聖書のファンの一人だったという。
……と、随分と私の趣味嗜好を語ってしまった、本当に本の話になると熱が入って安直には語れない。
『ザワザワ……』
「……むむ?」
そして著者アーデスライトラングスターの【嘘つきな芸術家】の原本が二十部半一で落札されたところで、会場の空気が変わり周囲がざわつきだした。関係者達も緊張を隠せないといった様子で慌ただしく移動している。
来たわね!
『ご来場の皆様、大変ながらくお待たせいたしました。本日のオークション最大の目玉である品をご紹介いたします』
競売人の合図とともに会場中央へと慎重に運び込まれた小さな本。
思っていたほど神々しくも禍々しくもなく装飾もされていない。
赤色の表紙でタイトルの文字は金色。とても神にまつわる書物とは思えない質素な感じ。
『こちらの品に関しましては残念ながら多くは語れません』
そう言うと競売人の女性は会場にいる参加者の反応を伺いながら説明を続ける。
『一級品の書物には間違いありません。しかし本を開いて確認と検討を試みた者達が次々と意識を失い倒れてしまい内容は謎。そして呪われたこの書物の出品者は“人が知ってはならない禁忌の書物”とだけ書き置きを残して姿を現しませんでした』
あぁ……うん、そうよね。
『本物である真偽の断定は不可能ですが強大な力を秘めた本であることは間違いありません。場合によっては命を落としかねないゆえ、軽い気持ちでの落札はご遠慮願います。我々は一切の責任は取れません。本のタイトルは【神の眼】。では聖金貨五十枚からお願いいたします!』




