三日目1
夜陰の風が実に涼しくて心地よい。
聞きたいことも聞き出せたし、このままフラりと歩いて宿に戻りたい気分ではあるが……はてさて彼をどうしたものか。
「……商人さん。この男は今すぐにでも断罪し、始末することを勧めます」
「そうだ殺せ。どうせ俺はこの失態で主に処分される」
やっぱり物騒な話になるわよね、私はこの場だけでも穏便に済ませれたらと思ってはいるのだけれど。
まず、そもそもの元凶はセルディーヌ卿にある。
死者の書を使用させ、ヨキの話によると死刑宣告を受けた罪深い囚人などが多かったとはいえ、約百人の命を奪っているわ。
補佐の人も犠牲者とも言えるし、今回の件だけではなく過去にも沢山の悪事を働いている可能性がある。あまつさえ神の情報を得ようとした。
「ヨキ、セルディーヌ卿は私の姿を見たわけではないわよね?」
「……あぁ、追跡者の存在には気づいていたがはっきりとあんたの顔とかを見たわけではない」
男か女かも知らないわけか。
「じゃあ私を始末したってことで報告してくれる。上手く誤魔化してね。とりあえずソレで私は自由に動けるわ」
「おまえ本気で言ってるのか?」
「……いいの、商人さん?」
「えぇ、でもいいかしらヨキ。あなたの過去について咎めないけど、これに懲りたら自分で今後どうするか考えてね」
そしてヨキは鎖から解放されて、夜の闇へと消えていった。
プラトーには甘いと思われるかもだけど、セルディーヌ卿への報いはすぐにでも受けることになるでしょうね。“勘”だけど。
「そういえばプラトー。あなたの目的って……」
……ありゃ? いつの間にかいなくなってる。ちゃんと助けてもらったお礼が言いたかったのに、言いそびれちゃった。
さてと、私もソフィアに怒られに戻るかな。




