オークションがある街3
昼から夕方にかけて着々と前夜市の準備が整っていく。
と、言うかすでに市場での商売はほぼ始まっていた。
【妖精の箱庭】一夜限りの裏オークションとも呼ばれ、街の一郭に品揃え充実な露店などが多く展開される。オークションとはまた違った掘り出し物なんかも見つかる可能性があるそうだ。
「お嬢様。はぐれないようにしてください」
「ソフィア甘やかさないで。あと距離近い」
なんだかソフィアが師匠に見えてきたわ……。
裏と呼ばれるだけあって、入手経路不明な怪しい物も売られている。まぁ今回のオークションも【神の眼】が競売にかけられるなら十分怪しいけどね。
有名な宝石商や古美術商も見受けられる。
年代物の品々なんかに現を抜かす私は、ソフィアの耳打ちに少し遅れて反応した。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。私も商人の端くれなんだから」
「あれです」
「……ん?」
表記された市場価格は当てにならない。こういった場所ではよく聞く話だけど。
ソフィアが指差した方向には、今まさに商人がお客に蒼錆陶器を売っていた。
高いものを安く仕入れるのは商人として基本だけど、あれは明らかに贋作だわ。それに……。
「お客が渡したの、あれって合成硬貨よね」
「はい。フィーネルフでは流通は稀ですが」
“合成硬貨”とは。加工が雑で青銅、赤銅、鉄貨などを色々と混ぜた混ぜ物通貨のこと。
それを塗装したりして金貨や銀貨に偽る偽金。多少の知識のある者なら本物の通貨と見分けられる。
お金としての価値はあったりなかったり、基本的にはない。
国によっては使用を許可されているが、普通は使えない。ジャビスウォーレンなどの大きな街なんかでは特に。
よく辺りを見渡すと。黒針蟲の毒液という違法物が平然と売られていたり、値下げ屋の姿も目撃した。どこにでもいるなぁ……。
売り手買い手、双方に対して油断は禁物ね。
私達は一通り店をまわり、早々に箱庭から移動した。




