幽霊図書館2
「そのチャーミングな泣きぼくろ。カワイイ私の弟子アミュレット。まぁ大してなにも教えてないけど、お仕事は順調なのかしら?」
廊下や階段、本棚が並ぶ数々の部屋、そこに設置されているロウソク台のロウソクに火が一斉に灯された。
師匠の名前はトルティ。幽霊である。
見た目は十歳くらいの女の子で、黒くて長いキレイな髪、赤い瞳孔に黒強膜……つまり眼球は黒で瞳が赤。初めて出会うと誰もが少しは怖いと思うかもしれないわね。
彼女は殺されたとか病気で亡くなったというわけではなく、初めから幽霊。そう、幽霊生まれなのである。
生まれてから何年経ったかは本人も知らないようだが、子供心は永遠に忘れないそうだ。
老いず滅びぬ怪異の類、まるで吸血鬼……幽霊だけど。
「おかげさまで、なんとかやれてますよ」
「なら良かった。心配してたのよ本当にね」
なんとも色っぽい仕草で笑顔を見せる師匠。吐息や言動に色香を感じ、このへんが普通の子供には出せないところ。ちなみに今日は白いワンピース姿だが幽霊なのに多少は服装を変えることができるらしい。
印象的には限りなく闇が似合う彼女だけど、私はちゃんと善人の部分もあるのだと信じている。
「ところで師匠。今回私を呼んだ理由はなんなんですか?」
ゆっくりと移動をはじめた師匠の後を追いながら、私はキョロキョロと周りを見て圧倒された。
館の主役は本なのだが、師匠がコツコツと集めたコレクションはちょっとした博物館や美術館も顔負け。
等間隔に飾られてある品々が廊下を彩る。
一角獣の角、あれは人間が所持している時点で違法なのよね。幽霊は例外なのかしら?
魔界に住むと言われるドラゴンの卵や有名な画家の絵とかもあるけど。キレイな花が沢山あるわ? ……育ててるのかな?
「アミュ、ハーブとか栽培してるって手紙で言ってたじゃない。私も趣味で色々と始めたのよ。他にもジャム作りとかね」
師匠は大広間にある扉を開け一緒に中に入った。館に複数ある書庫の一部屋に私を招き入れると、部屋の中心に置かれていたソファに腰掛ける。
「あなたに依頼したいことがあるの」