2話「星読神と混沌神が夜空で唄う」
姉は、あれから3日後に引きこもることになった。
舞に散々なほどの愚痴をぶつけていた妹の結発言にて撃沈して時界神の居城の一室を貰って早速この始末だった。
「姉様は、あれで良いんじゃない?うざったいのが静まって気が楽。」
「酷い言われような舞様。身体を張って下さった方とは思えない落ち込みよう。」
ルミナスが舞のことを気遣うようにそっと夕食を用意して通路のテーブルの上に置いて戻って来た。
妹の結は、姉妹とは離れた一室を貰って仏頂面で可愛い顔が台無しになるように椅子に座って外を眺めている。
アルテミスもまた、ルミナスの隣に居て結の様子を見ているのだが一向にまだお怒りのようだった。
「姉様も姉様よ…愚痴っただけで、泣いて部屋に籠るんだから。本当に、キモイ!!」
「…お姉ちゃん…喧嘩って、怖いね?」
「そうですね…出来たら仲直りになって欲しいのですが、これでは無理そうですね。」
いつもと変わらずに口喧嘩している姉妹にとっては、心境でさえも変わらずに平衡状態でも良いのだろうかと考えるルミナス。
お互いに仲違いばかりをしていたらどうなってしまうのかと仲直りさせるべく動こうとしたその時だった。
「ねぇ、さっきからルミナスちゃんに挨拶をしようと思って来たのだけど?」
「あひゃんっ!?カオス・ロード・ナイトメア様。お久しぶりです。今日も、お茶会をするのでしょうか?」
ルミナスの背後に瞬間移動をしたのかいきなり姿を現す異世界の混沌神がふくれっ面で抱き付いて来た。
ルミナスは、ビクンッとちょっと驚いてから冷静を取り戻して笑顔を見せるように取り繕う。
「それで、異様な客人がこの世界に居るみたいだけど…どうしたの?」
「実は、双子姉妹の舞様と結様が口喧嘩をしてしまって二人とも部屋に閉じ籠ってしまったのですよ。」
「…舞様、泣いてた…。」
カオス様も聞いて吃驚したのか、目が丸くなってしまっている。
何が原因でこうなってしまったのかが手に取るように分かってしまう混沌神の状況把握能力が恐ろしい程に冷や汗を流す。
だが、混沌神の後ろから姿を現した星読神のプラウヌス・スターギャインが助言を出した。
「カオス殿、プラウヌスが助言を申し渡します。予言します。“辛き思いを古き友に伝えよ”です。」
「……あ、その手があったわね。さすが、プラウちゃん!!」
「プラウヌス様、カオス様…何という慈悲深き言葉なのでしょう。あたしにも、妹に伝えましょう。」
「…お姉ちゃん…大怪我した時、痛かった…助けてくれて、ありがとう。」
何と言うことでしょう、仲つむまじい姉妹愛が更に姉妹の絆を深めたではありませんか。という茶番を挟んで数分後。
お茶会にカオス様、プラウヌス様、ルミナス様、アルテミス様、舞、結の六人での異様な世界観が開かれることになった。
「……早く、部屋に戻りたい。姉様と同じ空気を吸いたくない。」
「…むぅ。」
「あはははは。まぁまぁ、お茶会なんですから紅茶でも飲んでお菓子でも食べてください。」
「いただきまーす!!」
「カオス様、はしゃいではしたないですよ?お淑やかに食して下さい。」
アルテミスは、今この瞬間に初めての面白おかしい空気の中でお茶会を楽しんでいた。
誰にも話に触れていないアルテミスの格好以外は。
「そ、それで…アルテミス?その恰好は、どういう意図があってそうなったのでしょうか?」
冷や汗を流しながらルミナスは、アルテミスのスク水の格好をして腰には浮輪を装着している。
かのようなオタクの好きそうな恰好を笑顔で着ていた事に突っ込む姉の言葉に舞が説明をし出す。
「アルテミスちゃんのような幼い子には、遊んで良いようにスク水の格好をさせてみたのですよ。」
「あの、舞様。アルテミスは私の妹なのですが?」
「まぁ、良いじゃないの?面白そうで楽しそうで何よりじゃない。」
「…楽しんでおるな、カオス殿。」
「あ、プラウちゃんには、バレてーら。」
お茶会に無理やり楽しそうな話題が出ている中。
結は不愛想にも姉である舞のコスプレセンスに少し興味があるようにアルテミスをチラチラ見て赤面している。
「結様、お菓子もあるので食べてくれませんか?私が、作ってみたのですがお口に合えば嬉しいです。」
「…うん、意外と…美味しいわね。これ、いくつか貰っても良い?」
「はい!!良いですよ、後で部屋に持って行きますね!!」
笑顔でルミナスは、これこそ千載一遇のチャンスだと思って厨房の方へと走って行く。
ルミナスの行動に不審だと思った舞は、席を立ってアルテミスにある事を聞いてみた。
「アルテミスちゃん、トイレってどこだったっけ?案内してくれる?」
「…うん…こっちだよ。」
まるで、姉妹が交代しているようにアルテミスは舞と仲良くトイレへと向かう。
舞の嬉しそうな笑顔を眺めている結は、少し嫉妬しているみたいに意地っ張りになっているようで。
そんなやりとりを見ているカオスとプラウヌスは、優しく微笑んでいた。
「時に、プラウちゃん…ルミナスちゃんに話があるからって来たんだよね?」
「そうでした。結様にもお話があるのですが少しの間、お時間は大丈夫でしょうか?」
「…べ、別に…良いわよ?姉様より話が分かるのは、私ぐらいなものだから聞いてあげるわよ。」
出ました、ツンデレ妹の伝統的な口上となる話し方!!
その場に、ルミナスと結がプラウヌスの話を聞こうと座り直して聞く事になった。
「この世界には、女神やモンスターまでも女性しかおりません。その種類も種族もまた、50以上存在します。」
「まぁ、世界に数多くの新種まで居るからそうなることは必然ってことだよね。」
「そこで、舞様と結様のお二人の力で種族戦争を収めて頂きたくて参った次第です。」
「我らも、プラウちゃんと同じ意見なんですよね。争いごとを無くさないと死者が出ちゃうからね。」
何とも物騒な話をするのかと思いきや、異世界の序列紛争が起こっているとは結でもすぐに理解できた。
だが、これと言って結自身ではその問題を解決する方法が思いつかなかった。
「このお茶会を開いたのも、これが理由だったのですか?カオス様。」
「まぁ、概ね…来週に開かれる“全種族代表委員会”で発表されるんだけどルミナスのところは、新参だからね。」
「早いうちに越したことは無い…という、カオス殿の粋な計らいです。」
ふむ、ことに言ってはその委員会とやらに人間代表として結と舞のどちらかが出て欲しいのかなと考えている結。
その考えを見透いていたのかプラウヌスが言葉を続けた。
「再度言いますように、種族代表として全種族が集まるその会合で警護する傍らもあります。」
「それって、まさか!?」
「そのまさかです。カオス殿の警護を人間代表である結様の姉様に当たる…舞様にお願いをしたいのですが宜しいでしょうか?」
結でもこの話を聞いて冷や汗が尋常じゃなく焦りまくり、紅茶を飲むカップが揺れる揺れる。
冷静さを欠くとはこのことなのだろうか。
そう思うばかりに手汗や喉の渇きも尋常じゃない程の“困惑”が顔の表情まで出てしまっている。
「正気の沙汰ではありませんよ!?あの姉様にそんな危ない真似をさせたくありません!!辞退をさせて貰います。」
「……では、カオス殿の命が危ない状況だということを理解するには…こうせざるを得ません。」
「え?い、一体…何…をっ!?」
プラウヌスがうっすらと右目を開けると何かの力が解除したように一瞬だけその空間が静止した。
そして、時が動き出したその時だった。
「カオス殿、申し訳ありません。」
「あ、良いよー。」
一瞬の出来事だったとしか言いようがなかった。
無数のアサシンとなる黒装束を着た者たちが十数人もカオスの周囲に展開して投げナイフを投擲した。
カオスの頭や心臓部へと投げナイフが飛んでいる滞空時間にいきなり割り込んで来た舞。
「…人に向ける殺気じゃないね。魔物の臭いがプンプンするあんたたち、何者かな?」
カオスをお姫様抱っこをして天井へと一時回避させてスタッと着地する舞の一連の動きが結にとって一瞬の動作のように見えた。
この異世界に来てから舞の身体が人間離れしていっていることに驚きが隠せられない結は、これで理解した。
「姉様、この世界のシステムを分かってしまったのね。」
「うん、まぁ…ゲーム感覚で何回か実証実験っていうのかな?やってみたら、出来ちゃったね。」
双子姉妹の話のやりとりにカオスとプラウヌスは、理解が追い付けなくなってしまった。
事情を話そうとアサシン達を消すようにプラウヌスの右目が閉ざされた。その、スティグマ・アイ(痕跡の眼)を発動させて。
「要は、RPGのゲームだと思ってくれると分かるわね。貴方達にはスキルとステータスが存在しているのよ。」
「スキルとは、魔法や体術を鍛錬すると発動できる仕組み。ステータスは、体力と魔法力と持久力を言いますね。」
「私は、そのスキルを使って危機察知と体力増強と危機回避を同時に発動させてカオス様を助けたってこと。」
「…はぁ、体力バカにはうってつけのスキルだこと。」
「ちょ、結…それ、酷くない!?」
プラウヌスとカオスは、舞の身体能力がどれほどのものなのかを試そうと思っていたのだが。
結と話をしている時やアサシンを出現させた時には、トイレに居たのだと舞とアルテミスから聞いて皆一同にして吃驚した。
アルテミスがお茶会の部屋に戻って来てカオスから前にアサシンに殺されかけた話を始めた。
「種族戦争が起こる前日にだった。」
「エルフと鎧機が手を組んで戦争の引き金を起こさせ我が根城にアサシンを向かわせたのがダークエルフの仕業だった。」
「彼の者たちは、種族の違いで殺し合うことにためらいも無く老人や子供までも手を出していた。」
「我が止めに入った瞬間、アサシンの黒装束を纏ったダークエルフが歯向かって来たのだ。」
「そこで、プラウちゃんに助けられたのだよ。ダークエルフを右目に閉じ込めてくれなかったら我は。」
プラウヌスの眼は、一種の牢獄スキルなのだろうかと結はその能力を判明していた。
言葉通りにプラウヌスは、結の思っていることに肯定するよう頷いてみるとその閉じている瞼から声が幽かながら聞こえている。
『早く出しなさいよ。』
『アサシンの名折れになるんだから!!』
『壊してやる、蹂躙してやる、殲滅してやる!!』
プラウヌスが眼帯用の聖なる力で漏れてくる声をシャットアウトさせるように右目に装着した。
普段からそれを付けているのだろうかと疑問に思った結は、ただ何も言えなかった。
「さて、此処まで話しておいてなんだが…舞殿、カオス殿の警護をやっては下さらないか?」
「はい、OKでーすよ!!」
舞は、即断して笑顔でその警護を受けることにした。
結からしたら死んでもおかしくないんだと散々説明をしていたのだが軽々と承諾して頭を抱えることしか出来なかった。
この姉は、何を考えているのかと思っていると舞は、承諾の後に言葉を続けた。
「でも、結と一緒にその“全種族代表委員会”に出席させて貰うのが条件です。結とは、いつも苦楽を共にした姉妹だからね。」
「あ、姉様?」
やはりと含み笑うカオスとプラウヌス。
この姉が居るからしっかりした妹が居るわけだなと神の名を持つ皆は、信頼を持つ笑顔を見せた。
「信頼しているんだぞ、結!!さぁ、その委員会で私たち人間の話を聞いて貰おうじゃないか!!」
「…姉様には、いつも…敵わないんだから……死んでも、知らない。」
「なっ!?それ、かなり酷いんじゃないんかなぁ!?」
「当然でしょ…私が居なきゃ、いつも…助けてばかりじゃ、嫌だから。」
ツンデレな妹に満気旺盛な姉の凸凹姉妹が見せるその瞳には、お互いに信頼しているからこそ生まれる確かな絆があった。
これからの活躍が期待されている中、姉妹のことを遠くから眺めている女神たちもまた不穏な動きを見せていた。
「お姉様、お姉様!!あんな人間、天誅を下しても良いよね?」
「ダメですよ。もうしばらく、様子を見ないことには動きようが出来ませんわ。」
「でも、あの二人カオス様とプラウヌス様があっちに同盟を持つのかな?」
「そうなってしまっては、エルフを利用したことがバレてしまいますね。」
「まぁ、何をしようと…我らに敵うことは、出来ないと思い知らせてあげようね。」
五人の姉妹女神と呼ばれている動きにも目を向けている先は―――カオスの顔が写っている水晶に怒りを見せていた。
水上舞 主人公
16歳/女子高校生/双子姉/体力バカ/ゲーム好き(脳)/妹にゾッコン
水上結 主人公
16歳/女子高校生/双子妹/しっかり子/毒舌口調/姉が大嫌い
メリトアール・ルミナス ヒロイン
14歳/時界神/双子姉/料理好き/妹と仲良し/新しいことが好き
メリトアールアルテミス ヒロイン
12歳/時界神/双子妹/単語的会話/姉と仲良し/コスプレ好き
カオス・ロード・ナイトメア ヒロイン
20歳/混沌神/時界神の遠い親戚なお姉さん/妖艶な話し方/面白いことが好き
プラウヌス・スターギャイン ヒロイン
20歳/天体(星読)神/混沌神の古き友人/痕跡の眼(牢獄)を所持/怒ると怖い/可愛い物が好き




