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クチナシの王子  作者: 永海エラ
本編
8/8

エピローグ

「自業自得だぞ」

「……うるさい」


 保健室で会った女に興味を持ち、まずはその女の友達に接触して『名波凛子(ななみりんこ)』という名前を知った。それから好きな食べ物や趣味や誕生日まで聞き出した。そして後をつけて家を調べたけどその日は偶然にも雨で、他校の彼氏とデートで急いで帰らなければいけないのに傘を持っていない友達に凛子は傘を貸していた。もちろん僕が近寄れば周りが騒いでその話を聞くことは出来ないから凛子のクラスメイトに聞いた話だ。ちなみに女を利用すると後が面倒だから男の友達に頼んでいる。

 凛子は渋る友達にもう一本持っていると言って貸したそうだけど、実は一本しか持っていなくて濡れて帰っていた。その後を馬鹿だなぁと思いながら傘をさして後をつけると凛子の家は僕の家とは正反対にあった。

 そんな風に寒い中長時間外にいたからなのか、体調を崩して寝込んでいるのを夏生は呆れている。


「最近帰りは遅いそうだし、やたら別のクラスに行ったり何してるんだ?」

「夏生には関係ない」


 朝は一緒に学校へ行っているけど、帰りは夏生に部活があって一緒には帰っていない。だから放課後、凛子がイルミナかどうかを探るために行動ができるわけだけど、きっと凛子はイルミナで間違いないだろう。性格がまるで変わっていないし、あとは身体のどこかにクチナシ色をしたクチナシの花のような痣があれば確定だ。

 そう考えていると、夏生はまだしつこく僕に小言を言ってくる。

 

(みやこ)さんが心配して俺に聞いてくるんだよ」

「母さんが心配性なのは今に始まったことじゃないだろ」


 ベッドで寝返りをうち、夏生に背を向ける。早く学校に行けばいいのに。


「とにかく、無理するなよ」

「はいはい」


 そう返事をすると夏生は部屋を出て行った。母さんが夏生にどうだったと聞いているのが聞こえる。

 前世では権力と金が大事な両親で、僕という跡取りが死んで困ればいいとさえ思ったけど、今回の両親はとても良い人で体調を崩すと凄く心配をしてくれるから正直申し訳ないとは思う。だけど僕にはイルミナがいればいい。イルミナを悲しませなければ、それでいい。

 イルミナとは所詮政略結婚というもので、成金だった家に爵位をもらうため最近没落気味で金に困っていたイルミナの家と婚約を結んでいた。じゃなきゃ跡取りも産めないような病弱なイルミナと婚約なんて結ばないと当時の母は言っていた。なのにイルミナは僕を好きだったようで僕を見ると頬を染めて微笑んで、分かり易すぎるその態度に、権力や金とは縁のない君に僕も次第に惚れていった。

 なのに結婚する前に病気でイルミナは死んでしまって、君のいない世界で僕はどうやって生きていけば良かったんだろう。権力なんて興味がない。イルミナ以外の女と結婚なんてしたくない。


「……イルミナ」


 今度こそ幸せにするよ。っていっても今回は僕の方が病弱なんだけどね。



 ◇ ◇ ◇



「で、何で僕がイルミナのことを嫌いだって思ったわけ?」


 凛子の家のリビングに置いてあるソファーの上でそう聞いた。ずっと抱きしめていたいけど恥ずかしいのか僕の腕から抜け出してしまった凛子は俯いている。


「だってフラン様、私に馬鹿だとかアホだとか言いますし、虫が苦手だって言ってるのにお見舞いに持ってきたこともありましたよね?」


 なんだそんなことか。やっぱりイルミナは勘違いをしているようだ。前世ならこのまま勘違いさせておいても面白いと思って放置しておくけど、でもやっと会えたから素直になってあげるのも悪くない。


「そういう馬鹿なところが好きだし、苦手なものを無理して嬉しそうにしてるけど歪んでる顔も好き。イルミナの事ならなんだって好きだよ」

「……っきゅ、急にどうされたんですか!」


 そうえばそんなことを言ったことは今までなかったかもしれない。あんなに呆気なくイルミナが死ぬとは思わなくて、なんだかんだ回復すると思っていたから素直になんてなれなかった。だけど人はいつ死ぬか分からない。何十年とイルミナに会えなかった。だから今だけじゃなく、今後も素直になっていこうかな。


「馬鹿面になってる」

「あれ、本当に私のこと好きなんですよね」

「それはどうかな」

「えっ、えっ?」


 前言撤回。困った顔も可愛いし、使い分けていくことにする。

尚親は今後も自分に不都合なこと(ストーカーしているだとか、イルミナの後を追って死んだとか、勝手に魔法を掛けて痣を作ったとか他にも色々)は誤魔化して一切言うつもりとか無いです。言って嫌われたり悲しまれるのは嫌ですからね。がんがん隠蔽していきますよ。凛子も尚親と幸せに暮らせたらそれで良いかって楽観的ですからね。知らぬが仏です。以上、お付き合いありがとうございました。

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