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平和の祈り  作者: 飛鳥
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Lord, make me a channel of your peace

5話と同時更新してます。

 人の溢れる祭壇で、正真正銘最後の祈りを捧げる。静寂とは言い難い息遣いの嵐。好奇と期待を絶妙に混ぜた視線。その中に、一つだけ特別な、熱をはらんだ視線がある。

 しかしそれらに一切の意識をくれず、私の命は落ちていく。


 思い出が髪を絡げて頭の横を過ぎていく。

 伸びやかな四肢。細い指。踊る足元、翻るワンピースの裾。栗色の髪。きらきらと輝く目。軽やかな声。弾ける笑み。おねえちゃん大好き、胸の奥に仕舞いこんだ大切な言葉。

 妹の泣き顔が消える合間、ふいに私に愛を囁くヨジの姿が浮かんだ。こんな私も、大事な局面でやはり男に走る女であったのかと苦笑いをこぼす。刹那交錯し、次の瞬間には記憶は私を通り過ぎて、そして訪れる最後。

 黒い炭を絡げた十字架が目の前に立っていた。閃光のように貫き逃げた記憶と違い、その最終通告は私を待っているようだった。

 赤々と上がる火の手は状況を進行させることも、近距離に立つ私を焦がすこともない。思っていたより小さいオブジェだった。記憶ではもう少し大きかった気がする、と考えて、最後に視界に捉えたときには私は地べたに這い蹲っていたのだと思い当たる。

 瞬きを一つ。何を考えていたのだったか。懐かしい十字架に、震える手を伸ばし、人間だったものに触れる。

 指先が辿り着く。かさかさとした手触りは、ただの物体だった。手のひらを這わせると、無残に塊から粉が分かたれる。

 風が吹く。残骸が飛んでいく。炭が、人だったものが、私の最愛の妹が、マリィが、跡形もなく消えて行く。

 十字架を包む炎が雄たけびを上げた。一段と増した火の気が、舌で嘗めしゃぶっていた神の印を崩していく。高らかに燃え上がった赤が、やがて勢いを失い、十字は燃え落ちる前に消滅して。

 塵一つ残さない白い世界で、私はゆっくりと口を開いた。


 「ああ主よ」


 閉じた視界の中、最後の最後、ほんの一瞬、過ぎったように思えたのは。


 「我をして御身の平和の道具とならしめたまえ」


 見慣れた平凡な男の顔と、優しい声、暖かい抱擁。


 (お疲れ様でした、ミルイ様)

 「ずっとあなたのこと、愛してます、  さん」

初めての一概にハッピーと言えないエンド。バッドエンドではないつもりです。

鬱々しいのか軽いのかどっちかにしろというお話でした。


妹って存在に憧れます。

でも現実的に、自分妹なので、こんなん可愛がれる気がしない。やっぱり二次元に限るよ妹は。

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