エピローグ-夏の始まり-(2)
「――ったく、あんな曖昧な発言するから、こんな目に合ってしまうんだよ!」
指をさしながら、光大は反論する。
それに対して乙姫は、しれっとした態度で、
「私は当然のことを言ったまでだが? これから一緒に戦うパートナーなのだからな。なに、これから居候するってことは言っていないんだからいいじゃないか。おまえは、あいつのことが好きなのか?」
「べっ、べつに……」
「じゃあ、私の言っていることは真実じゃないか」
「うっ……」
逆に正論を言われ、光大は動揺してしまう。本当に二歳年上だから、口答えもしっかりしている。これで、タメで話せることが不思議だ。
「……っていうか、今、さらっと居候とか、言わなかったか?」
光大の問いに、乙姫は頷き、
「ああ。これからしばらくはコータの家に居候するつもりだ」
それを、光大はもう一度、
「ま、マジ?」
「マジだ」
……。
二人の間に沈黙がしばらく入る。
そして、
「え――――――っ!?」
ようやく反応。
「遅すぎるぞ」
乙姫は肩を竦めて見せる。
「マジかよ……はぁ~、親にどう説得すればいいんだ、俺……」
額に手をあて、ハァ~、とため息をつく。悩みのタネがコイツといい、花楓といい、植える一方だ。
「ははは……まあ、いいじゃないか。これから忙しくなるんだ。一緒にいた方が都合がいいだろ」
笑いながら、背中をポンと叩く。
「クールな割には、物事を楽観的に見れるおまえが羨ましいよ」
「うん? そうか? 私は、合理的に考えているだけだが……」
「合理的すぎるよ」
光大は、悲しそうに彼女の背中を見つめる。
口でも勝てないから、もはや彼女の良いように使われるシモベ状態。彼女はまさに品格に合った、お嬢様。
この関係で大丈夫なのか、少々不安だ。
でも、やるしかない。
立ち上がるきっかけを作ってくれた彼女――佐伯乙姫のためにも。そして自分のためにも。
この現実に立ち向かうために――この島にいる大切な人、風景を守る『夢』向かって、光大は、彼女を追いかけていった。
慌ただしく、一生忘れられない、光大の最後の夏休みが始まる――。
《ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-了》




