第三章-今を変える決意-(4)
すると!
「え!?」
ピカーッ! と左腕につけている光大の祖父の形見――突如、封印が解放されたかのように白く光りだす!
それは全体を紫で覆われた不気味な異空間全体を白く染めた。
「こ、コータ……」
「な、なんだ!?」
乙姫のみならずそれを所持している本人すら動揺が隠しきれない。
すると、白い球体から武器が生成されて、光大の右手の中で形作られる。
「こ、これは……剣!?」
白い柄と鍔に少し剣先が曲がった剣。すべて白一色でまとまった美しい剣だ。剣身からは、自分の顔が映る。
――これなら……いける!
何も根拠はないが、自分の心がそう感じる。
その確信を信じて、光大は剣道の時のように、おもいっきり剣を縦に振るった!
すると、ゴワーッと剣戟が刃となって、火奄を切り裂く!
「ガアァァァッッ!!」
――き、効いている。
龍が悲鳴を上げている。
その姿に絶句する光大と乙姫(乙姫はコンファインド・スペースに入っていないので声のみ聞こえる)。
「コータ、おまえ一体何をしたんだ?」
「あ、いや、突然、じいちゃんの形見が光出して、そしてそっから、おまえのインスペクトみたいに武器が――剣が現れて……」
光大は左腕につけている形見を乙姫にみせる。白く光る球体。それを見て、
「おまえのそれ、まさか……」
しかし、そんな詮索する暇は与えない。
火奄は再び、光大に向かって火炎放射を吐く!
「おっと」
もう、その攻撃に慣れたのか、光大は軽快にタイミングよく転がってかわす。
「無駄話するなってか!」
火奄を見上げる光大。光大は武器を構えて集中する。
「グオオオオオ――――――ッ!!」
紅き龍は咆哮し、今までよりもさら強烈な猛火弾を吐く!
それを垂直に勢いよく跳躍してかわす! これもインスペクトの力なのだろうか。乙姫のように、人間離れの跳躍ができる! 火奄と同じ高さに跳躍した瞬間、
「くらえ!」
先ほどのように剣を勢いよく横に振り、剣戟をぶつける。
火奄は仰け反り、悲鳴をあげる。しかし、すぐさま突進してきた! 最後の手段を実行しているかのように。
「くっ!」
中空にいる、光大に迫ってくる! このままでは火奄の大きな口に飲み込まれてしまう!
「……頼む、じいちゃん。俺に力を……!」
すると、形見が彼に呼応したのか、光大を光に包む。 そして!
「コータ!」
「!」
光に包まれた光大は、火奄に飲み込まれる瞬間、頭上へと移動した。火奄は上空から、目標がどこにいるのか、なりふり構わず飛び回っている。彼が頭にいることすら、気づいていない。
この隠された力に驚きながら、
「じいちゃん、ありがとう」
と、天国にいる心から感謝して、光大は剣を掲げて、
「うおおおおおっっ!!」
「いけ! コータ!!」
スギャア――――――ン!!
火奄の頭上に突き刺した!
紅き龍は、悲鳴をあげて、ポルターガイストたちの魂の塊だろうか。龍は紫の粒子となり、還っていった……。
「うわあぁぁっ!」
突然、火奄が消えてしまったがために、そのまま光大は落下する。
しかし床につく寸前、白い風に包み込まれて、うまく着地することができた。
右手に持っていた剣は役目を果たしたのか、粒子となり、再び白い球体の中へと入っていった。
「ありがとう、じいちゃん。俺にいつも言っていた、『偉そうな口を叩く前に、自分が地に足を着かないと意味がない』――この言葉の真意、ようやく分かった気がする」
光大は、白い球体を優しくなでる。亡くなった祖父の、暖かいぬくもりを感じた。
「コータ!」
倒れこみながら、自分の名を呼ぶ女性の声が聞こえる。
光大は彼女の下へと駆けつける。
「……やったな」
「ああ」
乙姫の手をつなぐ。すると、
「!」
白い球体から光が再び発せられ、乙姫の体を優しく包み込む。
暖かな光は、彼女が受けた傷を見る見るうちに癒していった。
「すごい……これがおまえのインスペクトの力か」
乙姫は光大の手を握りながら、立ち上がる。
「やっぱりこれ、インスペクトだったんだ。……ああ、これ返すね」
光大は乙姫から借りていたインスペクトを彼女に渡す。
「白……か。私の時代にはそんなインスペクトはなかった。一体誰が……?」
う~ん、と乙姫は腕組みする。
「まあ、誰かが未来から来たってことは言えそうだよな。でも、それはまたにしようぜ。分かんねぇんだし。とりあえず、こいつに助けてもらえたことに、感謝しとこうぜ」
光大は白いインスペクトを撫でる。
「……そうだな」
二人はお互いに微笑み合う。そして、
ガシッ!
「え、えぇぇぇぇっ!?」
いきなり、乙姫が抱きついてきた。こんなこと、人生では初めてのことだ。この感覚に、光大はドギマギする。
「お、おお、乙姫、さん……これは、一体……」
心臓をバクバクしながら、抱きつく乙姫に訊ねる。
「ありがとう。守ってくれて……そして、生きていてくれて。バカ」
彼女のクールな口調らしからぬ、感謝の言葉が光大の右肩に漏れる。
「あ、ああ、そういうこと。じゃあ、俺からも礼をしないとな。――ありがとう、気づかせてくれて」
光大は微笑みながら、感謝の言葉を述べた。
「な、なんで私に、そんなことを言うのだ?」
不思議そうに乙姫が訊ねる。
「ひみつ」
と光大は呟き、この紫の異空間を見つめた。




