26-6
「何作ろうか」
ソニアさんとともに、食材の確認。
肉類は、干し肉や塩漬けの肉、腸詰め、干し魚、塩漬けの魚。
「まあ、生はないと」
「日持ちしませんから…」
香草で肉類の臭みを消せると思って、多め購入。お味つけにも使えるし。
「親切な商人さんがいましたよね」
「ええ。売り方がうまくて、ペースを握られたわ」
「そこのべっぴんな姉さん達!うちの商品見ていかへん?」
「わたし達?」
「他にいるか?」
女性の商人さんか気さくに話しかけてくる。
何を売っているか、近づく。
「何売っているんですか?」
「香辛料とハーブやで」
「あー、胡椒ですか」
「胡椒だけちゃうで。各種取り揃えるんや」
初めてきくものばかりだった。
「塩と胡椒はあるはすよ」
「ないと料理できませんからね」
船乗り達は料理は、していた。
なら、基本的な味付けの塩と胡椒は確実にある。
売っているのは、粉状、もしくは粒状の物。
「知ってるのある?」
「そうですね…」
商品は壺に入っていて、商品名書かれた木札が入れてある。
「ゴマとバジル、サンショウかな」
「ベッパーとパセリとか」
「ああ、知ってます。あ、マスタード」
意外にある。
「ええな~。全部買うやろ?どれくらい必要なんや?」
商人さんはすでに、麻袋を準備していた。
「え?えっと…どうしましょうか?」
「一通り買っておきましょ。日持ちするものばかしだし、お金は出してくれたから」
「ですね」
「太っ腹やな~。うち、嬉しいわ」
商人さんは手際よく袋に詰めていく。
詰めていく間も会話が途切れる事はない。
すごい勢いで話しかけてくる。
「これくらいでええか?」
「はい」
「二人は食事処でもやってるんか?」
「いいえ」
「え?そうなん?こんなんぎょうさん買って大丈夫なん?」
「ええ。色々と訳ありで」
「そうか…」
商人さんは深くは聞いてこない。
「ありがろうなぁ~」
代金を支払って露天を離れた。
「やり手かもね」
「はい」
ハーブに関しては生のものも購入。
ニンニクやジンジャーなど。
船内の貯蔵庫には…。
「他はチーズとバター」
「野菜は根菜類が主ですね」
「葉物野菜は塩漬けか酢漬け、乾燥させたのある」
「柑橘類もありますね。生とドライフルーツ」
一通り揃ってるのかな?。
「あ、豆もあります」
「主食はどこ?」
大事は主食は?…。
「ねえ、主食類はどこなの?」
通りかかった船乗りに訊く。
「えーと…」
「ちゃんと、買ってあるんでしょうね?」
「ありますよ、多分…」
「多分?」
「はい…」
「だったら、さっさと持って来なさい!早く!」
「はいぃ!」
慌てて船乗りが走り去っていく。
「どんだけいい加減なの…」
「船乗りらしいといえば、らしいですけどね」
買ってあったという主食類が持ってこられる。
「パンと小麦、それから乾燥パスタです」
「小麦って脱穀しただけじゃない…」
「魔法で製粉まで出来ます」
「そうか、そうよね。ナミさんの魔法があるんだった」
「はい。明日以降やっておきます」
「お願いするわ。今日はパンを使いましょう」
「はい」
出来上がったのは、シュナイツで食べるようはスープになった。
水を自由に使えないから、結局のところスープ類になる。
パンはパサツキが気になったので、油のひいてニンニクを炒めて香りを出し、その油をパンに塗る。
「初めてつくったわりには美味しくできたんじゃない?」
「はい!すごく美味しいです」
さて、船乗り達の口に合うかどうか…。
長いテーブルが用意され、二十名ほどが座っていた。
一人一人前にスープが入った器とパンが配られる。
「どうぞ」
と、言ったが誰も食べ始めない。
「あの…何か不備がありました?」
「いや…」
「まあ待てって」
「はあ…」
船乗り全員が船長さんを見ていた。
「まずは船長の査定があるんだ」
「査定?」
近くにいた船乗りが、そっと教えてくれる。
「査定って単なる味見でしょ?」
「まあ、そうなだが。船長は味にうるさくてな」
「のわりには、調味料少なかったですけど?」
あれでは味付けに限界があると思う。
船長さんがスプーンでスープを一口。
そして、パンも一口。
「なんでこんなに緊張しなきゃいけないのよ…」
「あはは…なんででしょうね」
「うまい…」
「マジすか?」
「ああ。なんまらうまい」
「なんまら?船長がなんまらとか一年に一回あるかどうだぜ?」
「船長、いいすか?俺達も」
「ああ、いいぞ」
船長さんの許可がおり、船乗り達も食べ始める。
「んま!」
「久し振りだ。こんなにうまいの…」
「可愛い子が作るとこんなにおいしいんだなぁ」
「お前は、なんで泣いてんだよ」
「いやぁ、これは泣きたくなるうまさだぜ」
好評だったようです。
「おかわりありますから」
「一回だけね」
「あ、おかわりください」
「いや、まだ入ってるじゃねえか」
「おれも」
多めに作っておいてよかった。
明らかに食べそうな体つきだったから、絶対多めいいだろうってにソニアさんと話していた。
「船長さんもおかわり、どうですか?」
「ああ。頼む」
船長さんは黙々と食べている。
船乗り達と違って盛り上がっていない。
「いつもあんな感じだから」
「そうなんですか」
作った夕食はきれいに全部食べてしまった。
「ごちそうさま」
「お口に合ってよかったです」
「初日から気合い入れやがって。ハードル上がったぞ」
そう言って船長さんは席を立ち去って行った。
「手を抜きづらくなった。という事でしょうか?」
「いいんじゃない?望むところよ」
ソニアさんは、やる気満々だ。
でも、毎食毎食、力を入れていては身が持たないので、朝と昼はあまり凝ったものにせず、夕食はだけ凝ったものした。
これに関して、船長さんと船乗り達からは苦情はなかった。
リカシィを出港してから三日。
ここまで、特に変わった事はなく、順調だ。
わたしもナミさんも船酔いする事はなかった。
慣れない環境で、少し寝不足気味くらい。
「髪の毛がゴワつくの嫌ね」
「ええ。魔法で水出せますけど…乾く間に結局…」
「うん。洗い流しても、また…」
洗い流さないよりはいいけど。
船乗り達に短髪多いのは、こういう悩みを回避するためかしら?。
「今日の夕食はどんなメニューにします?」
「そうね…。ちょっと辛くしようかなって」
「そういう要望来てましたね」
「苦手な人もいるだろうし、加減が難しいかも」
辛いのが大好きな人は、唐辛子で真っ赤なった物を食べたりする。
わたしもナミさんも絶対無理。
昼を過ぎて、少しづつ夕食の準備をし始めた頃だった。
「何かしら?上がずいぶん騒がしいわね」
「はい」
天井からドカドカと音がなる。
船乗り達が走っている音。
船首から船尾へ、その逆も。走り回ってる。
「ちょっと見に行って来る」
「私も行きます」
わたし達は甲板へと上がった。
「うわ…」
「すごい」
船は濃霧の中いた。
「真っ白で何も見えない…」
「船は止まっているみたいです」
さすがに、この霧の中の進むの危険だろう。
「ねえ、船長はどこ?」
「船尾のはずだ」
「そう」
「おーい!マストに誰か上がってるか?」
「いますよぉ!…」
上から声が聞こえる。
「何か見えるか?」
「真っ白で何も見えません!」
「この辺に小さな無人島あったろ?」
そんな物があるのね。
「だから、見えないんですよ」
「わかった!」
まずいなっと船乗りが呟く。
「なんでまずいの?」
「無人島は目印なんだ。リカシィとナイワッカのちょうど中間でな」
「そうなのね」
「まあ、無人島がなくても大丈夫なんだが、無人島の周辺は浅瀬でな。あまり近づくと浅瀬に乗り揚がって座礁しちまう。下手したら船を捨てなきゃなんねえ」
「ええ!」
まずいなんて言葉じゃ足りない。
「わたし達にできる事は?」
「何もねえよ」
「そんなわけないでしょ」
「オレにはわかんねえよ!船長に聞いてくれ」
わたし達は船長の所へ向かった。
Copyrightc2020-橘 シン




