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塵の末裔  作者: 無夜
さよなら
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20/20

エピローグ

「トゥ! トゥルー・ハート。一人で遠くに行くな」

 イリスがとある海賊港で大きな声で養女の名前を呼ぶと、一人の海賊らしい男が足をとめて振り返った。

「トゥルー・ハート」

 そう呟いて懐かしそうにイリスの養女を見た。

「何か?」

 不機嫌にイリスが問い返すと、年のいった海賊は首を横に振った。

「失礼。俺のとてもよく知る、蘭に似た女の名前だったものでね。つい」

 その海賊は若い下っ端から手紙を受け取ってその場で中を開いた。中には数枚の紙切れが入っている。

 結局、見られたくないものは、紙で伝達することが一番安全なのだ。

 イリスは恋人が名前をつけてくれた娘を抱き上げた。相変わらず表情は乏しいが、頬がふっくらとしてきた。大量生産された幼児服が似合う腕や太股の丸みだ。

 男は顔を上げて、側にいるイリスを見た。

「ああ、これは息子からの手紙なんだ。毎週くれてね。だから毎週、ここまで取りに来ている」

 誇らしそうに言う。

 イリスは男の思考の中に恋人の姿を見た。

「あ」

 イリスは驚いた。立ち去ろうとした男を捕まえて、今度は自分から喋りかけた。

 男は二言三言喋ると、とても驚いた顔をした。

 養い親からほったらかしにされたトゥルー・ハートは物陰にいるシルバーブルーの大きな兎を見つけて、それに近づいた。

 綺麗な毛皮を撫でようと伸ばした手に、兎は何かを吐き出した。

 独特の蒼い輝き。角度によっては透明に、角度によっては深い海の色に変わるそれ。

 その兎の愁いた瞳から、檻の中の花が折れたことを、彼女だけは悟った。



おしまいー

これは、「現世の一滴」「風俗枠ですから」の世界観の根底にあります。

月都市シリーズっていうのが、ほぼ紙のノートに書きなぐって存在して、どこにやってしまいましたが。


まあ、こんな20年前の物語にお付き合い、感謝ですー

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