表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浦風中将物語  作者: 里見レイ
10/28

橋立の訪問

ついに橋立登場です。

「兄者、夜分に失礼します。どうしても、兄者に相談したいことがありまして......」


 深々と礼をする橋立。服装は、最高級の衣装である。どうやら、どこかからの帰りらしい。


 彼は、故権大納言の長男である。その故権大納言とは、浦風の父、故中納言の兄にあたる。

 つまり、橋立と浦風は従兄弟なのだ。

 故中納言の結婚が早かったこともあり、浦風は橋立より年上である。浦風二十一歳に対し、橋立は、まだ十五歳、末妹の桜よりも年下なのである。

 しかし、この若さで橋立は正五位下の蔵人少将。大臣家の子息が通る出世コースのポストに就き、同じ年齢の時の浦風(従六位上・出雲介)と比べると圧倒的な差なのだ。


「お前が俺に相談とは、変なことでもあったのか?」


 なぜわざわざ自分のもとに来るのかと本気で不思議がる浦風。

 正直、世間の評判では橋立のほうが上なのだ。

 その理由は、彼の容姿と和歌の才能にある。

 まず、三宮・弁中将と並ぶ美男子で、宮中でも騒がれていること。そして、勅撰集の選者の筆頭候補とまで言われるほどの和歌の評判があるからだ。

 この宮中で話題沸騰の貴公子を帝がとても気に入り、浦風以上の異例の抜擢をした。


「私は兄じゃあってこその存在です。どんなことでもまずは兄者に相談します!」


 しかし、橋立自身は一族を懸命に支えている従兄浦風を大変尊敬している。

 この前、浦風に先んじて頭中将(蔵人の長兼中将)にならないかと帝に誘われたときは、浦風を優先し三宮の推挙を認めるべきと辞退しているほどである。


「まあ、世間はお前のそれを理解できないようだがな。で、いきなり相談ってどうしたんだ? 勅撰集の話なら自信を持って受けるべきだぞ」


 彼が自分のところに来る理由は分からなくとも、橋立の相談の内容に予測はついている。

 だが、それを表に出すわけにはいかない。それが大事な従弟を困らせることを知っているからだ。


「い、いえ。実は、右大臣様に養子にならないかと誘われまして......」


「......ほう、いいことだろそりゃあ」


 これは浦風の予測外の話である。


 左大臣家と勢力を二分している右大臣家。しかし、右大臣には息子がおらず、親族にも男子はいない。

 おそらく、そこで橋立に右大臣家を継ぐようにと白羽の矢を立てたのだろう。


「それで、その上で女四宮様を嫁に取るよう帝からも言われまして......」


 ついに本題を切り出す橋立。こっそりと唾をのむ浦風。


「そ、それで、右大臣様はなんと? 婿養子を望んでいたのではないのか?」


 右大臣の意向を尋ねる浦風。普通、血縁の無い者を養子にするとき、娘の夫として迎えることが多いためだ。


「右大臣様も、乗り気です。私の子と右大臣様の孫を結婚させるつもりみたいで......」


「なるほど、さすが知恵者右大臣、目先のことより天皇家の血を入れることを優先したか......」


 うなる浦風。

 天皇家の血を持つ男がいずれ右大臣家を継ぐとなれば、百年先も右大臣家は安泰だ。

 摂関家の中では傍流だったにもかかわらず、主流にまで上り詰めた知恵者右大臣の考えることは、やはり理にかなっている。


「で、相談したいのはこの先のことで......」


 話を進める橋立。まだ続きがあるらしい。


「なんだ? お前にとってはいいことずくめではないのか?」


 意図せず「お前にとっては」と言ってしまう浦風。内心慌てるが、幸い気づかれていない。


「右大臣様の次女の椿の君様を兄者に嫁がせたいそうで、その報告というかなんというか......」


 ここにきて、なんと浦風の縁談を出す橋立。申し訳なさそうに表情が思いっきり暗くなる。


(おいおい、勘弁してくれよ......)


 浦風の苦悩は、いよいよ限界値にまで達しようとしている。

なんというか、どろどろのラブバトルは発生しませんが、浦風がガンガン苦しみます。

橋立は、美男子です!

里見レイ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ