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銀の魔物


 「我が故郷か。久しいな」


 トワ達がフリジア達と戦っていた頃。

 ドヴェルグタウンとエルフの森の中間辺りで、ドヴェルグタウンの入口を見ている者がいた。

 迷彩柄のコートを着ており、顔はフードにより隠れている。

 その身長は150ぐらいと小柄であるが、その雰囲気は恐ろしいまでの覇気を有していた。

 森にいる魔物も彼に近づこうとはしない。


 「さて、言われたとおりに動くとするか」


 しゃがれた声のその男はゆっくりと胸元から銀色の玉を取り出した。

 銀色の玉は良く見ると模様が入っている。

 その銀の玉を地面に叩きつけた。

 ガシャ。

 叩きつけられた銀の玉はその模様から解けていき、形を形成していく。

 数分してそこには一体の機械でできた狼がいた。


 「ふむ、まだ改良が必要じゃがな。まあ、今回はこれで良しとしよう」


 現れた銀の狼の隅々を見て、及第点だと決定する。

 そして、同じ銀の玉をまた懐から出し、それを同じく地面に叩きつけまたも銀の狼が出現した。

 それを何度も繰り返す。

 中には銀のトレントや、銀の熊、銀の大きなカマキリなど様々な種類に富んだ者達が出現していく。

 最終的に出現した数は全部で1000体を超す。

 だが、彼はまだ物足りなさそうだ。


 「これでは返り討ちにされるかもしれん。そうなれば、恥をかくのは儂だからな」


 最後にと、懐の中から出したのは大きな銀の玉だった。

 懐には入りそうにない大きさのそれも、同じように地面に叩きつける。

 すると、銀のサイクロプスが出来上がった。

 身長は3メートルを超し、森の中でもそれは異様に目立っている。


 『おおい、そちらは準備できた?』

 「おお、メフィルか。こっちは準備はできたのかのう?心配じゃ、まだ納得いっとらんがの」


 通信をするための魔道具から少年の声が聞こえてくる。

 我らのリーダーであるメフィルだ。


 『そんなこと言ったって、満足するのにどれくらいかかるのさ?』

 「1年、いや10年あれば満足できるものが作れそうじゃが」

 『いやいや、そんなに待ってられないよ。それにエルフも獣人も失敗してるんだから、ドワーフは失敗しないでよね』

 『デュフフ、そうですぞ。早くしないとですな』


 メフィルの他に博士もいるのか。

 こいつは何を考えているのか分からないし、気味が悪いので嫌いだ。


 「分かっておる。儂は失敗などせん、他の奴らは自分の故郷にまだ執着があったのだおろうが、儂は大丈夫じゃ、油断もせんし、手加減する気もないわい」


 そう言い、通信を切る。

 儂以外のやつらは搦め手を使ったから負けたのだ。そんな回りくどいことせずに正面から潰せばいい物を……。

 理解に苦しむと言った様子で、銀の軍団を引き連れる。

 情報によると、エルフの国でも獣人族の国でもラーマでの作戦に関しても邪魔をした者が、今ドヴェルグタウンにいるらしい。

 仲間の尻ぬぐいではないが、ここは一度その者らに屈辱を与えてやるしかないな。

 決行する時は今日の夜、それまで外に出ているドワーフでも潰して回るかの。

 その男は銀の軍団を連れ、徘徊する。

 邪魔な者を叩き壊すために。











 「おし、取れたぜ」


 ドヴェルグタウンの外、南下して森に入ったところでドワーフの青年――ミノは狩猟をしていた。

 ミノは珍しく若い衆の中で、先生の教えに従わないでいる。

 理由は正しくないと思ったからで、実は過去にエルフに助けられた経験があるからだ。

 そんなミノは今、魔物の狩猟を行っていた。

 ドワーフの主食は魔物の肉であり、特に元から魔物として存在しているのではなく、動物が魔力を多く含み魔物化したものを食している。

 そして、今日やっと兎の魔物を取ったところだ。

 ヘカトンは高速で動けるが、細かな作業などを苦手としているため、小さい魔物を捕まえるのは難しい。そこをあえて捕まえて見せることで修行となる、とはミノが思っていることだ。


 「さて、と次の獲物はどこかな?」


 兎の魔物をその場で血抜きし、格納スペースに入れる。

 そして、魔物の気配を探して歩き回っている最中のことだった。

 薄暗い森の中に光る物が見える。

 常時光っているというわけでもなく、ピカッピカッと点滅してる感じでまたその光は動いているように見えた。

 何だあれ?

 気になったミノはヘカトンを器用に動かし、その光る物体へと近づいていく。

 近くまで来て分かったことだが、光る物体はそれ自体が光っているのではなく、どうも木漏れ日による光の反射だと分かった。

 そして、生物?らしいものだとも。


 「あれは、銀の狼?魔物……じゃねぇな。あれはヘカトンと同じ人工物だな」


 ゆったりと一匹で歩いている銀の狼に興味が沸いてくる。

 あれの近くには誰もいない、つまり自分で思考して動いているということか、もしくは遠隔操作をしているということになる。

 どちらにしてもこれを作った奴は天才だと言えた。


 「これはすごい発見かもしれない」


 うきうきとした気分で、その銀の狼の後ろを付いて行っていた最中だった。


 「あがっ」


 後ろから何者かによって攻撃された。

 その勢いでこけてしまうが、すぐさま起き上がり後ろにいたものと対峙する。

 それは銀の熊だった。

 今も大きな手を広げこちらを威嚇している。

 すごいすごいすごい。

 見たこともない作品だ。一体どうやって動いているのか分からない。

 それは形だけ熊の形をしているが、中は空洞、少し見える裏側には複雑な機構が埋め尽くされている。

 その蠢く機構を解剖して解明してみせたい、とはドワーフなら全員が思うだろう。


 「――――」


 無言でその銀の熊は襲い掛かってくる。

 とても速いが避けられないほどではない。右に避け、木を利用して攻撃を防いでいく。

 そして、自慢のサーベルで攻撃を与えるのだが、全て弾かれていた。

 相手は防ごうとはしない、いや、機構が見えている部分だけは防いでいるようだ。

 それ以外は攻撃しても傷一つ付きそうにない。


 「ああ、惜しいなぁ。倒せたら解体できるのに」


 今回の装備では勝てそうにない。

 撤退するしかないだろう。

 そう思い、撤退のために煙幕を使う。この機械仕掛けの魔物にそれが効くのかは分からないが、使っておく。

 辺りを煙が包み込んだ時、俺はドヴェルグタウン向かって走り出していた。

 ここはよく狩りをする森だ。俺の庭みたいなもの。

 目を瞑っても木にぶつからず走ることができる。

 そのはずだったのだが……。


 「なっ!?」


 ヘカトンの片腕に衝撃が走る。

 木にぶつかったわけではない。そんなことはあり得ないはずだ。

 衝撃の走った右腕を見ると、肘から先が無くなっていた。

 鋭利な刃物で切られたみたいにすっぱりと切れている。


 「くそっ、一体どこから」


 煙幕も収まり始め、視界が良好になってきた時、それは目に映った。

 目の前には大きな銀のカマキリが立っている。その鎌にはヘカトンの右腕が刺さっている。

 これまた銀色の魔物だ。

 一体どれ程いるのだろうか。目の前には続々と増えていく銀の魔物達が見える。

 囲まれた。

 ドヴェルグタウンまではまだ距離がある。

 これは、無理かもなぁ。

 彼らの無機質な目は俺だけを見ている。逃がせる気などはない、というかそんなことも思わないだろう。

 ザッ。

 絶望に立ち尽くしている間に、銀の魔物達はミノを覆いつくしてしまった。

 それは銀の濁流に呑まれるかのようで。

 数分後にはそこにひしゃげたヘカトンがあった。


 このような事態はミノだけではない。

 他のところでも同じ行為が行われている。

 狩りに出たドワーフ達は一人残さず銀の濁流に呑まれていく、ドヴェルグタウンにいるドワーフ達が帰ってこない同胞に疑問を持ったのは、それが起こってから2日後だった。



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