協力し、迎え撃つ
昨日は話を出せなかったので、今回は二回出そうと思います。
次は夜に……。
フリジアとの戦闘があった二日後。
ドワーフの代表――デックは頭を悩ませていた。
「一体何が起こったんじゃ」
森へと狩りに出かけて行った同胞達は消え、それを探すために集まった探索隊は魔物の足跡ぐらいしか痕跡は無かったと言っている。
魔物の仕業か?
しかし、そんな強い魔物が出たという話は無い、それに大型の魔物の足跡は見つからなかった。
「大勢の魔物にやられた?」
足跡は狼や熊などがあり、数十匹ぐらい確認されている。
だが、その程度の魔物や動物にヘカトンが負けるはずがない。
考えても答えは出ない、今後も探索隊を向かわし、探すしかあるまい。
そう思い、鍛冶仕事に真剣に向かった。
五長老が直近でまた集まるのは珍しい。
それほど、今回非常事態が起きたということだ。
「それで、誰か情報を掴んだ者はいるか?」
五長老の一人に誰も答えない。
誰も何も分からずに困惑している。
彼らも狩りに出していた部下達が帰ってこなかったのだ。
それも二日ほど待ってはみたものの一切帰ってこない。
「それでは、あのふぬけ共が手を出した可能性は?」
「それはないじゃろう。それをしてしまってはあちらで分断が始まる。デックもそこまで馬鹿ではない」
「そうじゃのう、それにヘカトン同士が戦った跡が見つかっておらん」
森へと調査に出たのだが、そこには魔物の足跡があるだけでヘカトンで争った形跡も無く、部下の死体、ヘカトンの残骸でさえ見つからなかった。
先生の敬虔な信徒である彼らが逃げるはずはない。
何か、何かこのドヴェルグタウンの外で起きている。
「まさか、エルフどもが攻めてきたか?」
「それならヘカトンの残骸が残らないのがおかしくないか?」
「魔力反応もないしのう」
全てが謎。
ドワーフの代表デックよりも彼ら、五長老はこの事態を重くとらえていた。
それは戦争を一手に引き受けているためか。
平和な暮らしに浸っているデック達にはない勘が働いている。
これは攻められているのではないか、と。
そして、それは当たっていた。
これから一人対国の戦いが始まる。
「五長老、大変ですっ!!」
「どうした、そんなに焦って」
扉を思いっきり開けて入ってきた彼の体は傷だらけだった。
引き裂かれたり、えぐられたりと悲惨だ。
「銀の、銀の魔物が、銀が」
「まあまあ、落ち着きなさい」
円卓の上に乗っていた水の入ったコップをその若いドワーフに与えて落ち着かせる。
近くで見るとよりその壮絶さが伝わる。
それは魔物にやられたような傷だ。だが、少し違うのは彼らの獣臭さを感じない。
「すいません。今、調査に出た私達の部隊が私を残し全滅しました」
「何とっ!!」
「それは本当ですか?」
「はい、私は仲間に逃がされたのですが、それでも危なかった。銀色の魔物が数千匹こちらに向かって移動しています」
「銀色の魔物?」
五長老達はその話を聞いて、銀色の魔物を頭の中で検索するがこの地帯ではそんな派手な色の魔物はいないだずだ、と結論を出す。
さらに聞き出してみるとその銀色の魔物は、統率が取れているみたいに争わず、ただドワーフの乗るヘカトンだけを襲ったらしい。
それも一体一体がヘカトンと同等かそれ以上の強さを誇ると言っている。
「それはまずいのう」
「その話が本当なら、迎え撃つしかあるまい」
「俺は出るぞ」
一旦、フリジア達の処刑を後回しにし、町に潜入中の同胞達に連絡を取る。
緊急の収集として、急ぎでだ。
これは総力戦になるのかもしれない。
「直ちに別動隊を向かわせろ」
「俺が指揮しに行ってくるぞ」
五長老の一人と別動隊――この組織で精鋭と言われる彼らを出す。
そして、残った五長老の内四人は他の部隊を引き連れ向かう。
その場所は、もう一人のドワーフのリーダー、デックの場所へと。
いがみ合っている余裕はなさそうだ、と判断したために。
別動隊として出陣した精鋭部隊と五長老の一人は、その光景を高いところから見ていた。
遠くには銀の波が押し寄せるように、こちらへと向かって来ている。
銀色の魔物の種類は様々だ。
多くを狼の形をしたものが占めているようだが、中には地竜の姿をしているものまでいる。
「どうしますか。長老?」
「これは俺らだけで対処できるもんじゃねぇ。遠くから数を減らすことだけをしろ。間違ってもやつらの前に出たりはするなよ」
「了解です。遠方攻撃開始」
銃を持ったヘカトンが一列に並び、遠くから銀の魔物達に放射していく。
その狙いは正確であり、着実に一体ずつ減っていく。だが、一体ずつだ。
奴ら、固すぎる。
その様子を見ていた長老は歯噛みした。
銃による攻撃の他に爆撃を行っているが、一撃では死に至らない。
二撃与えてようやくその歩みが止まるのだ。
「後退だ。これ以上は奴らの攻撃範囲に入ってしまう」
銀の魔物は意志を持っているわけではないため、死を恐れたりはしない。
仲間が殺されても進むのみだ。
もうすでにその歩みはドヴェルグタウンの入口近くまで来ていた。
ドヴェルグタウンの住民達は唖然としていた。
それは当然だ。
今まで顔も見せなかった五長老の内四長老が顔を見せたのだ。
中には昔見知った顔もいる。
彼ら五長老は大勢の部隊を引き連れて、ドワーフの代表――デックの工房へと向かって行く。
「おいおい、これはどういうことだ?」
「まさか、ここで争おうとか言うんじゃないだろうな」
「やめてくれよ」
すっかり酔いも醒めてしまったドワーフ達は青い顔でその集団を見送る。
すると、デックの工房から三人のドワーフ達が歩いてきた。
「お前ら何しに来た」
睨みながらデックは言う。
横にいる二人のドワーフも殺気を放っている。
「今日は争いに来たわけじゃない」
「ほう、じゃあ何の用なんだ?」
「お前達の方でも狩りに出た同胞が姿を消しているだろう」
その言葉を聞いて、デックは顔色を変える。
「まさかとは思うが、お前らか?お前らがしたことなのか?」
「そんなことはしないわい、儂らの方でも狩りに出かけたドワーフ達が消えたのじゃ」
「なら、それがどうしたってんだ」
「今からその同胞達を殺した奴らがここドヴェルグタウンに攻めてくる」
そんなことを言われたとしても素直には信じられない。
「おいおい、これは何の騒ぎだ?」
遠くからドワーフとは違う軽い声が聞こえる。
これは外から来客した人間族の勇者の一人の声だ。
そして、姿を現したのはやはりその一団だった。
ここには来てほしくなかった。こいつらは外の奴らを嫌う。エルフは特に。
「ちっ」
トワ達とクラスメイトの中にはメルというエルフがいる。
それが目についた瞬間、五長老の一人が舌打ちをした。
「おいおい、会った瞬間舌打ちとか失礼すぎね?」
「デックさん、このドワーフの集団は何ですか?」
日向はその様子に苛立ち、宗太はデックに彼らのことを聞く。
デックは彼らのことを前に話したエルフ嫌いの奴らだ、と話す。
それで理解したのか、メルはトワの後ろへと隠れてしまった。
「それで?話を戻そうか。その集団が来たからどうしたんだ?」
「まあそのエルフはまだいい。その銀色の魔物の集団はあと数時間したらここに到着する。そうすれば、始まるのは乱戦だ。何人死ぬのだろうな」
「何が言いたい」
「手を組もう、一時的だがそうすれば抗うことができる」
そう言った瞬間、デックの元にヘカトンが一機近づいてきた。
あれは門番をしているドワーフのはず。
そのヘカトンはデックの横に到着すると、コックピットを開き、中からドワーフが慌てて飛び出した。
「代表、やばい。銀色した集団がこちらへと向かって来てやがる」
「どうする?」
五長老が言ったとおりらしい。
デックは周りにいるドワーフ達を見て、決断する。
「考えている暇もないらしい。しょうがない、今回は手を組もう。だが、協力するだけだ貴様らの指揮は受けない」
「ああ、それでいい」
そうして、協力し迎え撃つ方向へと話しは進んだ。




