エルフ国にお別れを
次の日。
エルフの国の復興ももう終わりが見えてきた。
町の人たちは今まで以上に活き活きと生活をしている。
「やっぱ、早いねぇ」
後ろの方から声がかかる。
振り返るとそこにはダリルがいた。
「ダリルか」
「おはよっ」
「ああ、おはよう」
今は時間にしたら9時頃になるだろうか。
エルフの国は大きな木が生えている森林の中にあるため、日光もあまり射さない。
そのため、日が昇っても暗いため最初来た時に、まだ夜かと思ったこともある。
「ダリル、聞きたいんだが、本当に俺達の旅についてくるのか?」
「もう、それは昨日の食卓で言ったでしょ。私はトワと旅がしたいの、もちろん許可は取ってるよ」
許可を取っているのかは、同行していた兵士達に聞いた。
バンには内緒にしていたらしく、バンは未だ納得がいっていないらしい。
ダリルはそのことについて文句を言っていた。
「バン兄ちゃんが行くなって何回も言うんだよ」
「まあ、それはダリルのことが大切だから言っているんだと思うよ」
「トワも私が旅についていくことは反対?」
「反対はしないけど、賛成もできそうにないな」
「むー」
怒った感を出して、ダリルはどっかに行ってしまう。
肯定してほしかったんだろうけど、俺はダリルが危険な旅に出ることに不安がある。
普通の旅より一層危険が付きまとうのだ。
逆に何であの父親が許したのか分からない。
「まあ、考えても分からないか」
考えるのを放棄して、旅の準備を始める。
エルフの国は今回の一件で獣人族という強い味方もでき、またイールが王女となったおかげでこれからは栄えていくだろう。
俺は自分の部屋へと戻った。
数時間後、俺達は荷物をまとめて王城の庭にいた。
クラスメイト達も荷物を持って待機している。
もうすぐで旅に出るという話になった時に、クラスメイト達はどうするのか聞いてみたところ。
「ん、俺達もトワの旅にもちろん着いて行くぞ」
「トワと旅をしたら退屈しなさそうだしな」
という日向と充。
「俺は今回の件で、マルバーン王国が疑わしくてな。トワと旅をしていたらマルバーン王国についても分かる時が来ると思う。だから、一緒に連れて行ってくれ」
という宗太。
「私達は、まあ、宗太の話じゃ人間の国に見捨てられた?みたいな感じらしいし着いて行くに決定」
「それな~」
「お願いします」
と三人娘が。
クラスメイト達は一人残らず着いてくることとなった。
そして、俺も一緒に行くぞと言っていたバンだが、王からの許可が出ていないらしく、何で俺だけ許されないんだー、と言いながら兵士達に連れていかれた。
バンはそのままガーベラの方にお付きの兵士とともに送還されたとか。
昨日帰ったらしいので、すでにここにはいない。
ソルはと言うと。
「俺はいいよ。少し隠れ里で仲間が一人でも帰ってこないか、待ってみるわ」
と言って、隠れ里に戻って行ってしまった。
そして今日、旅に出るということでイールが最後に挨拶をしたいらしく、俺達は庭で待っている。
「すまない、ちょっと遅れた」
イールはいつも執務をしている時の服装ではなく、王族の正装を着ている。
最初に見た時よりすごく見違えたイールがそこにいた。
まあ、最初会った時は男性になっていたのだからそりゃそうか。
洗練された技術で編まれた正装はイールに似合っている。
「トワ、どうかな」
「すごく似合ってるよ」
「そ、そうか。なんか照れ臭いな」
本当に照れ臭いのか、少し顔を下に傾け、顔が合わないようにする。
「もう行っちゃうんだよね。次はどこに行くの?」
「次はドワーフの国へと行ってみようと思う」
「ドワーフか、それはちょっと大変そうだね。なんせ彼らは頭固いから」
「そうなのか。それは気を付けなくてはいけないな」
「うん、嫌われちゃったら大変だから気を付けて」
言葉が止まる。
お別れの時間が来たようだ。
まだ日が昇っている間にエルフの国から出なくてはいけない。
俺はイールに「ありがとう、またな」と言って外へと繋がる道へと歩み出す。
それに続き仲間達が歩んでいく。
「次はいつ会える?」
「また、この旅が終わったら会いに来るよ」
後ろを振り返らず手を振る。
タッタッタッ。
駆け寄って来る音が聞こえ、トワは気になり振り返ってしまった。
チュッ。
ジャンプしたイールが俺の額にキスをする。
「「「なあっ」」」
俺は一瞬の出来事に気が動転しながら、着地したイールを見ていた。
イタズラが成功したという風な顔をしている。
「これは旅が無事終わりますように、っていうおまじない」
キスされた額を触って顔が赤くなる。
イールなんてもう真っ赤だ。
「ほら、頑張って世界を救っちゃってください。勇者様」
「あ、ああ」
外へ続く道へ背中を押され、茫然としながらも歩み始める。
振り返った時のミア達は、してやられたという顔をしていた。
日向と充から恨みの言葉が飛んでくる。
俺は旅の仲間全員から揶揄されたり、質問されたりされながらドワーフの国へと向かう。
「ああ、行っちゃった」
イールはその背中が見えなくなるまで、王城から見ていた。
最後のあれは流石に大胆すぎただろうか。
ミア達には悪いけれど僕は一緒に旅に出られないからな。
これくらいは許してほしい。
「イール様、お仕事が残っておりますので」
「うん。すぐに行くよ」
もう見えなくなったトワを見るかのように、向かった方向をちらっと見る。
僕が求婚するのはトワ一人だけになりそうだな。
イールは王女だ。
血を絶やしてはいけない。それが王の務めである。
でも、もし――もしもトワが間に合ったら。
その時は本格的に求婚をしよう。僕の初恋の相手がまさかエルフじゃないのはびっくりしたけど。
でも僕は――――。
「機嫌がとてもよろしいようで」
「ああ、とっても良いよ。今日はなんでもできそうだ」
待ってるよ、トワ。
愛しいあなたが帰ってくるのを。




