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謎の紙切れ

 獣人族との協定を結んでまた一週間が経った。

 体は完治し、俺も復興の手伝いをしている。


 「これは、ここでいいか?」

 「おう、大丈夫だ。ありがとうな、英雄」


 材木を指定の位置に運ぶという簡単なお仕事だ。

 五、六本の丸太を置く。

 ふー。

 これが結構疲れるが、役に立ててうれしい。


 「あ、英雄様だ」

 「英雄様~、これあげるっ」


 エルフの子供達が近づいてきて、お花の冠をくれた。

 英雄か。

 俺はイールの政策の一環で、英雄とされている。

 そんなすごいことをしたわけではないので、断固として拒否したが、これも復興に大切なことだからと言われたら、断りずらかった。

 しぶしぶ英雄という象徴になることとなったが、これがまた恥ずかしくて慣れないのだ。

 クラスメイトもそのことで弄って来るし。

 特に日向が。充はうらやましそうな顔をしていた。

 代われるなら代わってほしいよ。


 「トワ、病み上がりなんだからそんな動かなくてええんじゃぞ」

 「そういうわけにもいかないって」


 リーシャも運び終わったのか、腕を回していた。

 ミアはというと。


 「こんなの軽いもんですよ」


 俺達の倍以上の丸太を往復で運んでいる。

 休む様子もなく、すぐに今日のノルマを達成しそうだ。


 「すげぇ」

 「あんなに持てるもんなの?」


 エルフの子供達がミアを不思議そうな目で見ていた。

 ミアは子供好きらしく、よくエルフの子供達と遊んでいるところを見かける。

 なので、子供達からはとても人気である。


 「すごいのう、よくあんなに動けるのう」

 「そうだなぁ」


 この復興でMVPなのは、もしかしたらミアかもしれない。

 俺達もミアに負けないように頑張ろう、とリーシャと励ましあい、作業に戻る。

 リーシャと同じ龍撃魔法を使えたらもっと運べるんだろうけど、暴走したからな、仲間達が見ていないところで使うのは禁止だと言われてしまった。


 『いいじゃん、使っちゃおうよ』

 「いや、だめだ。まあ、もう暴走したりすることはないと思うけど、一応ね」

 『ぶー、つまらないの。さっきから同じ風景ばっかで楽しくなーい』

 「じゃあ、神様がいるところに帰るか?」

 『それは止めて!?お願いします』


 どれだけ恐ろしいお仕置きを喰らうんだろう。

 少し興味が沸くが、興味本位で神様のところに帰すのはかわいそうだ。

 いや、でも……。


 『絶対やめて、そんなことしたら呪っちゃうからね』

 「えー、じゃあ神様に告げ口しよう」

 『ううう、トワの意地悪ぅ』


 本当のところは神様のところには返したりしない。

 キリンがいることによって、俺はいつも以上の力を出せたり、俺が気づかなかったことを教えてくれたりしてくれるという、強力な助っ人を帰したりするもんか。

 キリンが帰りたいというまで、俺は力を貸してもらおうと思っているのだ。

 特に、メフィルなどの偽悪魔族を倒すためにも。


 「おーい、トワ~」

 「お、ソルか」


 偽悪魔族のことを考えていたら、本物の悪魔族がやってきた。

 いつもボーイッシュな服装を着ているので、男の子と見間違えてしまう。


 「やっと直ったんだな」

 「ああ、そういえば最近会ってなかったけど、どこにいたんだ?」

 「それがここだけの話、近くに悪魔族の隠れ里があるんだけどよ。そこに戻ってみたんだ、まあ予想通り誰もいなかったが、気になる物が落ちてたんだ」


 ソルがポケットから取り出したのは、紙切れだった。

 それもこの世界で使われているあまり質のよくない紙ではなく、俺達の地球で使われているような薄く破れにくい上質な紙だ。

 そこには異世界の文字で何か文章が書かれていた。

 だが、それは俺には読めない。

 会話は翻訳の加護のようなものでできるのだが、文字を読むのは加護の適用外なため、何を書いているのかが分からない。

 ソルにそのことを伝え、読んでもらう。


 「しょうがねえな、じゃ読むぞ」


 スラスラと声に出して読んでいく。

 内容は次の通りだ。


 『時は満ちてしまったのかもしれない。

  神が地上へと召喚され、世界は混沌へと向かって行く。

  それを行ったのは人間族だ。憎き人間族がおぞましい手法によってこの世を地獄へと―――――

  お――許さ――――俺は――――――だから、救うんだこの世界を。

  それには――――――と、――――――て、――――――――――――するしかない。

  必ずだ、必ず――――――。

                                              』


 下に向かっていくほど劣化が激しく読めないところが多い。

 ソルは意味がまだ分かるところで読むのを止めた。

 これはこの世界の重要な情報ではないだろうか、それとも誰かのいたずら?

 今のところはどう理解しようにも、専門的な知識のない俺では分からないところが多すぎる。

 ソルは何か知らないか聞いてみるが、特に知っていることはないそうだ。


 「ただ言えることは、この紙は結構強い劣化防止の魔法がかけられていたことかな」

 「そうか」

 「まあ、これはトワに預けておくよ。俺には必要ないしさ」


 そのまま渡された紙を俺は丁寧に畳み、バッグに入れた。

 ソルは伝えることは終わったと、また走ってどこかへ行ってしまう。


 「一体何なんだろうな」


 この紙に書かれていたことが、ただのいたずらではないことは頭で理解していた。

 いたずらに劣化防止の魔法を使う奴がいるとは考えにくい。

 それほど、劣化防止の魔法は貴重な魔法だ。


 「まあ、考えるのは後だな」


 今は材木を運ぶことに集中しよう。

 それから、トワは日が落ちるくらいまで作業を続けた。


 王城にて。

 日が落ち、イール、トワ達とクラスメイト達は一緒に夕食を食べていた。

 今夜はずっと観光をしていたダリル達獣人族も一緒だ。

 食卓がより一層賑やかとなっている。


 「すごいね、魔法があふれているよ」

 「ああ、本当すごい」


 獣人族兄妹はエルフの魔法技術に圧倒された話をしていた。

 確かに、この技術は人間の国でもお目にかからないほどのものだ。

 驚くのは無理もない。

 簡単に全ての物が量産されていくのはとても驚かされた。


 「それは良かった。エルフの町はもっとこれからも栄えていくよ」

 「うん、また来たいなぁ」

 「また追いでよ、待ってるよ」

 「ありがとう、イール様」

 「様はいらないよ。気軽にイールって呼んで」

 「うん、分かった」


 イールとダリルが仲良くしているのを見て、微笑む。

 これこそが理想の世界なんだろうな。

 異種族が手を取り合って協力し、食卓を囲って笑う。


 「あ、そうだ、トワ」

 「うん?どうした」

 「私ね、トワと一緒に冒険をしたいな」

 「は?」


 俺は固まった。

 ダリルを見るが、冗談を言っているわけではないことは分かる。

 固まっているのは俺だけではない。ダリルの横に座っていたバンも固まっていた。


 「お、お前、何を言っているんだ?」

 「私もう王女じゃないし、お父さんからも許可は貰ってるよ」

 「いつの間に、じゃなくて、どうしてそんな危険な旅に行きたいんだよ」


 バンがダリルに迫り、すごい剣幕で問いただす。

 俺はその間、急なことへの硬直から復帰した。よく見ると、ミア達は驚いている様子はない。

 どうも知っていたようだな。

 そして、見るにそれを受け入れている節もある。

 俺はどうするべきなんだろうか。


 「ね、いいでしょ。トワ」

 「ええと」


 ミア達は好きに決めてください、と決断を求める姿勢だ。

 どうすれば。


 「大丈夫、私も強くなったから」

 「と言ってもな」

 「トワ、我から助言なんじゃが、ダリルは相当強いぞ。そこのバン以上にのう」

 「強かった」

 「くっ」


 バンはそのことについて、悔しがっている。

 本当なのか。

 でもバンが言うとおりとても危険な旅だ。もしかしたら取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。

 それでもいいのかと問うと、迷いなく大丈夫だと答えられた。


 「私からも頼むトワ、ダリルがいればより私は安心して送り出せる」


 イールまでもが賛成のようだ。

 俺は悩みに悩んだ末、決断する。


 「分かった分かった、ただし本当に危なくなったらすぐに逃げることが条件」

 「うん、分かった。ありがとうトワ、大好き」


 ダリルはとてもうれしそうだ。

 俺はダリルが一緒に旅に出ることになったことに動揺し、すっかりソルから渡されていた紙切れの存在を忘れていた。そして、今日はそのまま終えることとなる。



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