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そして、エルフの国は……


 マールズ王との開戦、そして神獣の暴走から早一週間が経った。

 俺はというと、まだベットの上だ。

 どうも思っていた以上に傷は深く完治するまでにまだあと何日かかかるらしい。

 移動する時は誰かに手伝ってもらわないといけないのが歯がゆく感じる。


 『大丈夫、あと本の数日したら直るから』

 「分かったよ、それまで安静にしろってことだろ」


 神獣、今はキリンか。

 最初に神獣と聞いて浮かんだのがキリンだったので、そのままその名前を付けた。

 そのキリンが内から話しかけてくる。

 キリンは俺の体の状態を事細かく知り、教えてくれる。姿を見せることは無く、俺の体から出ないと言っていた。

 変なのが体に住み着いたよ。

 一応俺が思ったことも分かるらしく、今も何かと文句を言っている。

 神獣だぞ、とかね。


 「そういや、イールはどうしてんだろうな。まだ、仕事に追われているんだろうな」


 俺が気絶した後、どうなったのかはリーシャ達が詳しく話してくれた。

 まず現国王だったマールズ王が行方不明となった。今も捜索中であるが見つかっておらず、どうやって逃げたのか分からない。今どこにいるのかも。

 そして、これはイールが話していたことなのだが、マールズ王は正当な王位継承権は持っていなかったらしい。とても遠い親戚という関係で、貧しい家で育ち、悪質な環境下で暮らしていたために性格が残虐な方向へと進んだのだろう、と言っていた。

 第一王子と王が死んだのも、城内の者が吐露したおかげでマールズ王の犯行だということが分かり、裁判にかけるためにも血眼になって探しているのだろう。

 そして、王権はイールへと受け継がれ、今イールは王の仕事に熱心に取り組んでいる最中だ。

 エルフの国民達に大きな動揺が起きると思われたが、思ったよりも動揺しておらず、そもそもマールズ王の時に、国民は王を見捨てていた。

 イールはその現状をどうにかしたい、と言っていたのを思い出す。


 「そういえば、終戦交渉はどうなったんだろう」


 マールズ王が喧嘩を売りまくっていた国に関しては、イール本人が出向いたり、使者を送ったりして一件一件ずつ終戦させていく予定だ。

 まあ、もうエルフの国に戦えるほどの戦力が残っていないんだが。

 その交渉の際に、相手が威圧的に来ることも予想され、決して侮られないようにメルやリーシャが付いて行く時もある。

 その際起こった出来事を聞くのが今の俺の日常だ。


 「おーい、斗和見てみろよ」

 「これすげーよな」

 「おい、けが人の前だぞ静かにしろ」


 部屋の扉を開け、入ってきたのは日向、充、宗太だった。

 日向と充の手にはマンドラゴラが握られていた。

 息の根は止めてあるから大きな声を出したりはしない。


 「マンドラゴラか」

 「そう、それだよ。俺初めて見て感動したわ」

 「いやあ、まじでエルフの森を探索してて、つまずいたのがマンドラゴラって傑作っしょ」

 「まじだからな」


 最後宗太が疲れた顔で言った。

 本当の話らしい。


 「それでさぁ――」

 「はいはい、そこで話は終わり。次は私達の番よ」

 「あ、おい、話を途中で折るなよ」


 次に入ってきたのは亜里沙率いる三人娘だった。

 彼女達は主に町の復興や、支援を主にしてくれている。

 一応言っておくと、男子達は町の外で魔物の駆除を行っている。決して遊んでいるわけではない。

 俺の前に三人娘がそろった。


 「今日、ちょうど獣人族の使者が来るそうよ。ほら、肩貸すから早く来なさい」


 亜里沙が代表して肩を貸してくれた。

 そして、二人が補助をしてくれている。

 そういえば、今日来る予定だった。

 俺は三人娘に連れられて王城の執務室に行く。


 「トワ、怪我は大丈夫かい?」

 「まあ、だいぶ良くはなったかな」

 「それは良かった、あまり恩人に無理してほしくはないからね」


 イールが王になったことで、国民の暮らしは良くなったかと言われると、現状そこまで良くはなっていない。

 まず、繰り返す戦いにより国民が得られる食料が少なく、餓死する者も多くいるそうだ。

 それを解決するために、今回俺が協力してくれるよう頼んだ手紙を獣人の国へと送った。

 そして、それから二日経って使者を送るという話となったのだ。


 「獣人国――ガーベラからの使者が到着しました」

 「お、来たみたいだね。ここに連れてきて」

 「了解しました」


 俺はイールの近くに配置された椅子に座り、獣人国からの使者を待つ。

 三人娘は慈善活動が残っているらしく、また街の方に戻っていった。


 「斗和は架け橋の役だから、見てるだけでいいよ。後は僕が何とかするから」

 「ああ、分かってる」


 まあ、俺が何か言えた立場でもないし、何を言ったらいいかも分からない。

 黙って見てよう。

 数分して、執務室の扉が軽く二回叩かれる。

 文官の声とともに扉が開かれ、二人の獣人族が部屋と招かれた。

 二人とも深くフードを被っていて、顔がよく見えない。


 「トワ~」

 「おわっ」


 使者の一人が俺めがけて飛びついて来た。

 その際にフードから見知った顔が見える。


 「ダリル!?」

 「そうだよ、もう、知らない内に行くなんて酷いよ」


 可愛げのある顔立ちをした獣人族の少女――ダリルの尻尾が軽快に動いていた。

 もう一人の獣人族もそのフードから顔を見せる。


 「よお」


 もう一人の正体はバンだった。

 見ない間に少し成長している様子だ。


 「お前、ぼろぼろにされたんだって?そいつに勝てば俺が上だな」


 いや、全然成長してなかったわ。

 むしろ通常運転だわ。

 ダリルを立ち上がらせ、執務室に置かれた椅子に座らせる。

 その横にバンが座り、ダリルの対面にイールが座る形だ。


 「それで、協定の話なんだが」

 「はい、獣人族は協力を惜しみません」

 「そんなすぐに決めてもいいのかい?」


 ダリルはイールが話終えるまでに、すぐ協力することを伝える。

 そのことにイールは驚いていた。


 「私にとっても恩人であるトワさんが助けたいと言った人ですから、あなたは信頼できる人だと思います」


 俺が信頼できる人=私の信頼できる人という理論はおかしいが、イールは悪い奴ではない。

 それは保証できる。

 話はスムーズに進み、協定を結ぶことは確実となり、エルフは獣人族から食料の支援をしてもらえることとなった。

 その代わりに獣人族はエルフが作る魔道具を貰えることとなり、ウィンウィンな関係と言える。


 「話は終わりましたし、エルフの町を観光してきます、トワさんに案内してほしいですけど、まだ傷が癒えていない様子なので、また今度ガーベラに来たらデートしましょ」

 「あ、おい、ダリル」


 駆けだして行ったダリルを追いかける形でバンも部屋から出て行った。

 なんかダリルに振り回されるのにこ慣れた感があるバンだ。


 「ふー、助かったよ。トワのおかげで速攻終わった」

 「俺のおかげでもないさ」


 ダリルは勘の良い子だ。

 たぶん、イールが悪い奴ではないと直感で分かったと思う。

 このまま獣人族とエルフが仲良くなるようにイールには努めてほしい。

 それは俺とそしてリヒトが描いた夢に含まれているから。


 「今日はありがとね。メイド達を呼ぶね」


 それから俺はまたベットの方に戻された。

 キリンと会話しながら、窓の外に見えるエルフの町を眺める。











 「助けてくれて、感謝する」


 目の前の黒いローブを着た男に感謝の言葉を投げかける。

 が、言葉は帰ってこない。

 いつもそうだが、こいつはあまりしゃべろうとしないのだ。なんてつまらない男だ。

 まあ、こいつのおかげで助かったんだが。


 「作戦失敗」

 「ああ、それは済まない。だが、チャンスをくれたら次こそは王となってこの世界を破滅に導いてやるからさ。な、もうちょっと力をくれよ」

 「次?」

 「なあ、お願いだ」


 この俺が頭を地面に付けてまでお願いしているのに、ただ見下ろしているだけでうんともすんとも言わない。

 少し顔を上げると首をかしげる動作をしていた。


 「次なんてない」

 「は?」


 ぐちゃ。

 どこからともなく出現した大きなこん棒により上半身がつぶされる。

 避ける事すら叶わず、ただの肉塊となり果てたマールズ王は赤い液体で塗れた。

 黒ローブの男は死んだことを確認すると、手に持っていた魔道具を起動させる。


 「作戦失敗」

 「そうか、やっぱり失敗したか。トワが来た時点で失敗するかなと思ってたよ」

 「どうする?全滅?」

 「いや、それじゃあ意味がないよ。まあ、これで獣人族に続きエルフも救われたわけだ。彼はいつまで勇者を続けるんだろうね」


 ――反吐が出る。

 それから黒ローブの男に帰還するように言い、通信は途絶えた。


 「混沌無くすために」


 そっとつぶやいて、黒ローブの男はその場からゆっくりと立ち去った。



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