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王に制裁を


 「ほらほらほら~、どうしたの?全然攻撃が当たっていないじゃないかぁ」


 ミアのクレイモアは空を切り、コマチの魔法は曲がる。

 リーシャは一旦距離を取り、その様子を観察しながら対策を練っていた。

 どういう原理で避けれているのかが分からない。


 「リーシャ、待たせた」

 「トワ、そちらはどうも終わったみたいじゃな」


 リーシャと二人、床にうずくまり泣いているメルを見た。

 立ち直ることができるだろうか。


 「メルなら大丈夫じゃ」

 「そうか、そうだな」


 今はこのマールズ王をどうにかしないといけない。

 視線を戦いへと戻す。

 今だに避けられてるが、マールズ王も攻撃ができていないところを見るに、攻めあぐねているのだろう。

 あとは攻撃が当たるようになれば、倒すことができる。


 「俺が行ってくる。リーシャは気づいたことがあったら教えてくれ」

 「危なくなったら、すぐに後退するのじゃぞ」

 「ああ」


 リーシャには危なくなったが後退しろ、と言われたが俺はそんなことしないだろう。

 それほど俺の仲間であるメルを巻き込んだことが許せない。

 後悔させてやる。

 俺達を巻き込んだことを。


 「はははは、当たらない当たらない~、いっ!?」


 笑みを浮かべていた横面に思いっきり拳を振るう。

 避けられはしたが、拳の振りで起こった拳圧がマールズ王をとらえた。

 頬から血が流れる。


 「君も来たのか~、いやぁ、危な――」


 次は下から蹴り上げる。

 魔力を練り上げて振られた足は、全てを切り裂く剣となる。

 だがこれも避けられた。


 「おっと、危ないって」


 マールズ王から不可視の風の弾丸が飛んでくる。

 とても早く殺傷性の高いそれは斗和を殺そうと迫った。


 「まだまだ、追加だよ~」


 さらに避けれないように一面に飛んでくるそれは、斗和の龍の手によって握りつぶされる。

 その龍の手はリーシャとは違い、どす黒く染まっていた。

 跳躍する。

 一瞬、そう一瞬のうちにマールズ王のそばへと近づいた斗和は、容赦なくそのがら空きの腹へと拳を見舞った。


 「がはっ」


 今度は命中した。

 すかさず追撃。

 俺の両足と両手はすでに龍のものとなっている。

 そして、その背中にも黒い翼が生えた。

 それにより俺の攻撃速度はより高められる。


 「ぎひっ、がはああああ」


 一旦距離を取ろうとしたマールズの首を後ろから掴み、そのまま床で引きずり回す。

 マールズ王は見るも無残にぼろぼろになっていた。

 だが、俺の怒りは決して消えることはない、より一層怒りが底から込み上げてくる。

 死ね、お前は死んでしまえ。

 首を掴んだままもう片方の手で魔法を発動させる。

 メルが得意としていた風の刃だ。


 「いかん、トワもうやめるのじゃ、ミア、コマチ止めるぞ」

 「はい!!」


 風の刃を放つ。

 が、何者かによってその軌道を変えられ、マールズの右手首が切断されるだけで終わった。

 誰だ、誰が俺の邪魔をしているんだ?

 抵抗をしなくなったマールズを投げ捨て、俺に攻撃をしてきた者を見る。

 ミアだ。ミア軌道を変えた。

 なぜ邪魔をするんだ、こいつはメルを傷付けたんだぞ。


 「目を覚ましてください、もう、もう人間に戻れなくなりますよ」

 「そうじゃ、もうすでに手遅れかもしれん。すぐに龍撃魔法を解くのじゃ」

 「そっちへ行ってはだめ」


 ミア、リーシャ、コマチが止めようとしてくる。

 どうしてこういう時に俺の言うことを聞かないんだ。もしや、こいつらはメルの仲間じゃないのか。

 メルを大切に思っていたのは俺だけだったのか?

 そうか、それならば敵だな。こいつらは敵だ。


 「説得は無理みたいじゃのう」

 「来ます」


 まずは俺と同じような能力を持つコマチを片付ける。

 コマチに手を伸ばした。


 「あなたならそうすると知ってた」


 が、そのコマチにたどり着く前に鎖に捕らえられてしまった。

 設置型の罠魔法。

 空間から出た鎖は俺の魔力を吸い取っているようだ。


 「邪魔、だぁ」


 強引に手と足を動かして引きちぎる。

 魔力が結構持ってかれてしまったが、まだ十分残っているから大丈夫だ。

 俺が捕まっている間に、コマチの前にはリーシャとミアがいた。

 なぜ邪魔をするんだ。

 許さない、許さない、許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない…………。

 がむしゃらにミアとリーシャに攻撃するが、彼女達にはかすりもしない。

 徐々に龍撃魔法を維持するための魔力も切れかけ始め、俺は魔力欠乏によりめまいを感じていた。

 ここで倒れるわけにはいかない。

 メルが、メルが悲しんでいるんだ。俺だけでも、俺だけでもメルを苦しみから助けてあげなくては。


 「§¶§°ΔΓ」

 「ΔΘΦ×Σ§¶§×°ΘΔΓ」


 もうすでにミアとリーシャが何を言っているのかも分からない。

 何かを叫んでいる様子だったが、その姿もぼやけ始めてきた。

 もう限界が近いのだろう。体が重い。

 ああ、もっとメルを救ってあげたかった。もっと力があれば。


 『ああ、お前は力を求めていたわけか。そうか、なら与えてあげようか』


 魔力欠乏によって、声は聞こえなくなっているはずなのに、なぜかその少年の声は鮮明に聞こえた。

 そして、次の瞬間、俺の体の奥底から力が湧き出る。

 それが力強く感じるが、なぜか体の奥が寒く感じてきた。

 一体この力はどこから出ているのだろうか。俺はそこで視界が黒く染まった。











 「しまった、もう遅かったか」


 目の前には一頭のドラゴンがいた。

 鱗全てが黒く染まり、雄々しいその翼は城の天井に着いていた。

 今は無き我らが先祖のドラゴン。今ではエンシェントドラゴンと呼ばれているそれは、生態系の頂点に立ち、気まぐれにより生物が死滅する理不尽な存在だった。

 龍神族の中にはこの完全体に至れた者はおらず、我も完全体にはなれない。

 もしなれたとしてもすぐに魔力が尽きて、倒れてしまうだろう。

 では、龍神族ではないトワが完全体に至れたとしたら、しかも魔力を消耗した状態で。

 それは魔力とは違う力を消費していることとなる。


 「このままではまずいぞ、トワを止めないと死んでしまうのう」

 「生命力が減ってる」

 「まずいじゃないですか!!一体どうすれば」

 「気絶させるのじゃ、そうすれば術も解けよう」


 完全体となったトワが動き出す。

 その動きは先ほどよりも緩慢で、攻撃を当てることは容易だ。


 「は、ははっ。化け物じゃないか、やっぱり面白いよ、君が手に入ったらこの戦争は勝ったも同然だ」


 意識を取り戻したマールズがトワを見て言う。

 痛々しい姿の彼はそれでも笑みを浮かべて、トワを見ていた。

 手を伸ばす。


 「あなたは眠っていてください」


 いきなりの攻撃に避けれなかったのか、頭に衝撃を受けてマールズ王はまたも気を失った。

 それを成した張本人を見る。


 「すいません、迷惑をかけました」

 「メル、もう大丈夫なのかのう」

 「全然大丈夫ではないですが、今はトワさんの一大事ですから」

 「無理しなくていいよ」


 ミアの言葉にありがとう、とメルは言いトワを見た。

 ドラゴンとなってしまったトワは立ち止まっている。


 「それで、これはどうしたら直るんですか?」

 「まずは気絶させなくてはのう」

 「頑張る」


 いつも無表情のコマチが、この時、少し感情というものを見せた気がした。

 そのトワを助けたいという気持ちはメル、ミア、リーシャも負けてはいない。


 「止まっている内に気絶させるのじゃ」

 「私から行くね」


 ミアはクレイモアを両手に持ち跳躍、そのクレイモアの腹で首を打った。

 ガンっ。

 普通の人ならばぺちゃんこにつぶれるはずの衝撃も、龍の鱗には傷一つついていない。

 逆に思いっきり叩いたミアの手がじんじんしていた。


 「固い、手がじんじんする」

 「では我が行くかのう」

 「私も援護します」

 「援護の援護をする」


 リーシャ、メル、コマチも必死に気絶させるために攻撃をする。

 リーシャは同じ龍の鱗に守られた腕で殴り、メルとコマチはトワの顔の辺りの空気を失くし、窒息による気絶を狙う。

 が、トワは微動だにしなかった。


 「僕も手伝うよ」


 少しよろつきながらもイールが歩いて来た。

 まだ顔色も悪いが、断っても無駄な、そんな顔をしている。


 「では、手伝ってくれるかのう」

 「ありがとう、僕にも手伝わしてくれて」


 断られると思っていたのか、ほっとするイール。

 助けたいと思う気持ちは分からないこともないので、加えることにする。

 まあ、限界が来たら引いてもらうがのう。

 この騒動が終われば彼女は女王となるのだ。王族の血は絶たれてしまってはいけない。

 リーシャは限界を見極めるためにイールを注意深く見る。


 「ゆくぞっ」


 ゆっくりと動き始めたトワを気絶させるために、彼女達は全力で向かう。











 「えっと、ここは確か」


 トワは今見たことのある場所にいた。

 思い出そうとしてなかなか思い出せないが、来たことがあるということは分かる。

 どこだったっけ。


 「おお、迷える子羊よ。さあ、天国へ来たのじゃなって、うん、お主は……」

 「え、神様!?」


 きょろきょろと周りを見ていたら、上から神様が登場した。

 異世界に飛ばされる前に会った人の良さそうなご老人っぽい神様だ。

 それにしても頭についた茨の冠が額に刺さっており、とても痛そう。


 「これはいわゆる天罰というやつじゃのう。他の神にどやされたからのう」


 聞く限りめっちゃ痛いらしい。

 神様だから痛覚もあまりないそうだが、この茨の冠はその痛覚を何百倍も増幅させ痛めつける、神様専用の懲罰道具なのだとか。

 そこで、神様は俺を見て問う。


 「まさか、死んでしもうたか?」

 「いや、自分でも分からないんですが、気づいたらここに居ました」

 「ほうほう、ちょっと待ちなされ」


 神様が俺の瞳を見つめる。

 無意識にそらそうとしたが、体が言うことを聞かなかった。


 「ふむふむふーむ、そうか、ここにおったのか」

 「どうしたんですか?」

 「いやぁ、どうもな言いにくいことなんじゃが、お主の体に神獣が住んで居るのう」

 「神獣!?」

 「それも結構快適に暮らしておるわい」

 「快適に暮らしてる!?」


 まあまあ、詳しい話はするからちょっと座れ。と神様が椅子を出してくれた。

 対面に神様も座る。

 そして、真面目な顔をして一言。


 「それ、儂のペットじゃ」



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