救うために
「ペット!?」
「そうペットじゃ、何かの手違いでのう。我の元から逃げ出し追って、そして斗和の体に住み着いたと」
「え、じゃあ今もいるの?」
「いや、今はおらん、というかお主の体は下じゃ下」
神様が下を指さすので下を見てみるが、そこには白い床しか見えない。
俺の体が下ってどういうことだ?
というか、何で俺は神様に合っているんだ?
「たくさんの疑問を抱いているようじゃのう。お主はのう、死んでしもうたというのが正しい表現になるのかの」
「死、ん、だ?」
「まあ、死んだというのも曖昧じゃがのう」
何か含みを持たせるような感じで神様はおっしゃる。
「じゃあ、これから俺は天国か地獄に行くんですか?」
「いや、先ほども言った通りお主は普通に死んだわけではないのじゃ。証拠にまだ自我を保てておるからのう、推測するに生命力が枯渇したというところじゃろ」
「生命力が枯渇した……」
神様の説明では、俺の中にいた神獣が俺に力を与えた代わりに、少しずつ生命力を削られていたらしい。
リヒトから力を分け与えられた時、その時に神獣も目覚めたとか。
そして、神様が言うには身体能力の急上昇はリヒトから与えられた力ではなく、神獣による恩恵がでかいらしい。
そして、知らず知らずのうちに生命力が削られ、止めとして力を欲したばかりに残りの生命力も根こそぎ持ってかれてしまった、と。
あれそれって完全に死んだってことじゃん。
何だかそう思うと、リーシャ達が心配になってくるし、会いたくなった。
もう会えないのだろうか。
「そう悲観せんでもいい。戻れる方法がある」
「本当に!!」
「本当じゃ、神様嘘つかない」
「その方法ってのは?」
「まあ、まずはお主の体はドラゴンになっておるからのう、それをどうにかせんことにはどうしようもないのう、ま、それはお主の仲間が頑張ってくれておる、次が問題じゃ」
「それ、は?」
「それは私が許すかどうかです」
神様の後ろが光り輝いたかと思うと、そこには美してまぶしいを体現した女性が立っていた。
後光が凄まじい。
「おっとすいません、ちょっと弱めますね」
「それって弱めれるもんなの!?」
「ええ、私も神ですから」
「来よったか」
「ああん、来よったかっつったか」
「…………すいません」
すごく美しい人なのに、怒るとまじで怖い顔になるな。
と思うと、こちらにその顔を向けてきた。
ひっ。
「ああ、すいません。取り乱してしまいましたね。この者が迷惑をかけたと思います。そのことについて謝罪いたします」
「あ、ああ、はい」
「それでなんですが、普通はあり得ないことですが、もしあなたのドラゴン化が止まった場合、この者から神力を分け与えようと思います」
「儂のを使うの!?」
「あなたの失敗でしょうがっ」
「いてっ」
ご老人の神様の方が年上に見えるが、どうも立場的には女神様の方が上のようだ。
髪の毛一つない頭を何度も叩かれていた。
また取り乱していますよ、女神様。
あ、止まった。
「こほん、まあそういうことなので、まずはあなたのお仲間との戦いを見ましょうか」
女神様が触った床が銀色に光出し、そこには仲間達が黒いドラゴンと戦っている様子が映し出した。
なかなか苦戦しているようだ。
ドラゴンの方は動きは遅いが、攻撃を物ともしていない。
「あれがあなたです」
「え、あれが俺なのか……」
リーシャ達に迷惑をかけてしまっているのが、申し訳ない。
「迷惑をかけていると思わないでください」
「そうじゃぞ」
「元はと言えばあなたのせいじゃないですか!!」
「痛い痛い痛い、もっと老人をいたわってくれ」
神様達がまたもめだしたのを横目に俺は戦闘している仲間達を見ていた。
「固すぎです」
「さすがトワ様です」
「感心している場合じゃないのじゃ、一点集中での攻撃を繰り返す」
「了解」
まずは動けなくするために足を重点的に狙う。
生物に共通で弱いところである関節なら、少しだけ攻撃が通ることが分かった。
それと、我らの祖先と同じエンシェントドラゴンなら逆鱗があるはず。
そこはエンシェントドラゴンでさえ柔らかく、そこからなら気絶させれるまでの攻撃もあたえれるだろう。
リーシャは一人その逆鱗を探すために単独行動をしている。
危ない場面があれば、イールがカバーしてくれるためできることだ。
右足を重点的に狙ってから15分くらい経った頃だろうか、トワが膝をついた。
効いている。
「今だ」
イールの声とともにもう左足に総攻撃を仕掛ける。
それを嫌がったトワドラゴンは、息を大きく吸い込んだ。
「まずい、ブレスが来るのじゃ」
今のところトワが何のドラゴンとなっているのかが分からないので、どのようなブレスが来るのかも分からない。
そのため防ぐことも難しいのだ。
一斉にしてドラゴンの後ろ側に回った。唯一ブレスから避けられる場所だ。
「ガアアアアアア」
口を開くと同時に口から金色の光線が放たれ、触れた物全てを消滅させていく。
恐ろしい攻撃だった。
壊れるというわけではない。触れたところから消滅していくのだ。
こんなドラゴンは見たことない。エンシェントドラゴンにもこんな個体がいたとは聞かない。
「どういうことじゃ」
「これはやばいですね」
「恐ろしい」
「トワさんは何のドラゴンでしたか、こんなすごい技を使うドラゴンは聞いたことがありません」
「我にも分からないのじゃ」
その言葉に仲間達はリーシャを見る。
嘘をついている顔ではないリーシャに仲間達は本当に見たことがないのか、とこちらを向きなおしたトワを見た。
一つ言えることはこのブレスを食らったら一瞬にして死んでしまうということだ。
逡巡している時、頭の中に叫ぶ声が聞こえた。
『トワの邪魔をしないでよ!!』
その声はとても怒っているように聞こえる。
そして、私達には強烈な殺気を向けていた。
「この声は……」
「あのトワさんの邪魔をしないでって」
「こやつが原因かもしれぬの」
そう言いながら、攻撃を再開する。
今はその声よりもトワをどうにか元に戻すことが最優先だ。
その後にこの声の正体を探ればよい。
次は左足の関節を集中的に攻撃するように示し合わせる。
トワも強くなったが、私達も強くなったのだ。こんなところでトワに負けてしまっては私達がいる意味がないじゃないか。
こんな激しい戦闘の中でもトワとの日々を思い出し、リーシャは笑みを浮かべた。
この騒動が終われば久しくゆっくりと過ごすのもいいかもしれない。
まだ、トワとは睦事もしておらぬしの。
リーシャは未来を思い浮かべながら凶悪な一撃が振るわれている場所へと身を乗り出した。
ミアはトワの攻撃を避けながら左足の関節を攻撃している。
すでに鱗は割れ始め、左足のひざも地に着くのは近いだろう。
一撃一撃を入れていくたびに、ドラゴンの悲鳴が聞こえ心が痛む。トワ様が痛みを感じているのだろうか。
心の中で謝りながら、それでも必殺の一撃を確実に当てていく。
何回か当てたところで左足も限界が来たのか揺れ始め、膝が崩れ落ちた。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、でもこれで。
ミアはドラゴンの首辺りへと向かった。
メルは両足が床に着いたことを確認するといち早く背中へと乗った。
そして、翼の根本を攻撃する。
可動部というのはどうしても脆い、特にドラゴンの翼の付け根は一番脆く風魔法の刃が深く切りつけていく。
自分の体が自由に動かせなかった時にも、トワが必死になって助けようとしているのが分かった。
私のせいでこうなってしまったんだ。
トワさんを助けられた時、私はどうやったら許して貰えるだろうか。
合わせる顔がない。
それでも今はトワさんのために一秒でも早く。
メルは最大威力の風魔法でドラゴンの翼をもぎ取った。
コマチは攻撃を止め、動きが一段と遅くなったトワの中に入っていく。
私は魔法生命体。
実体があるわけではない。
久しくその実体のない体へと変わり、トワの中にいるやつと対話をしに行く。
トワをこのようなドラゴンに変える力を持っているのだ、実力は相手が数段上だろう。
それでもトワを助けれるなら行くしかない。
もしかしたら、トワの精神体が囚われているかもしれないのだ。
それさえ助けることができたら、後は何とかなる。
そう信じてコマチはトワの中へと入っていった。
『おやぁ、誰かが侵入してきたのか?そんなことができるのは――確か一人いたな』
「あなたが元凶」
『コマチか』
「トワはどこ?」
『トワかい?トワはもういないさ、君達のせいでね。僕はトワの願いを叶えてあげたかっただけなのに』
白く神々しい存在の言葉には嘘は見受けられない。
本当のことを言っている。
『ここに来たけど残念、もうトワは死んでしまったんだ』
「いや、トワは生きてる。あなたを倒してトワを取り戻す」
『いいよ、好きにして。それでトワが戻れば僕も本望だ』
そして、コマチと神獣の戦いが始まった。




