メルを助けに!!
ミア、コマチ、ソル(自分で歩けるようになった)と一緒に、もう一か所留置所があるらしいので、向かってみることにした。
そして、そこには優雅にくつろいでいるリーシャを発見。
なぜだか知らないが、リーシャの我がままをエルフの看守が全て聞いている様子だった。
「我は決して楽はしておらんぞ!!助けに来てくれて助かった」
という言い訳をしているが、俺達は全て見ていたので嘘だと分かる。
リーシャが入っていた檻の中を見ると俺達が入っていた部屋とは違い、ベッドの質が良く、床には絨毯まで敷いてあった。
リーシャになぜこんな扱いなのか聞いてみるも。
「まあ、少し我の家柄がじゃのう」
と困った顔をして最後までは答えてくれなかった。
どうせいつかは龍人の国にも行くので、その時には分かるだろう。
「メルがいないな」
エルフの王城にある最後の牢獄部屋を見てみたが、メルの姿は一向に見えない。
メルはエルフであるため、もしかしたら牢獄ではなく、もっとましな場所にいるのかもしれないが。
「その、メルっていうエルフか?たぶんそいつ、なら上に連れていかれたよ」
最後の牢獄部屋でどこにいるのか皆で考えていたら、牢獄の奥から声が聞こえた。
ひどくしゃがれた声で聴きとりづらかったが、確かに今メルと言った。
「知っているのか?」
「ごほっ、看守の話の中にエルフの王族となれる、者を見つけた、と聞こえてな」
「エルフの王族になれる?」
「ああ、がふっ、適正だとね」
声のする牢獄の奥に魔法で光を照らすと、そこにはやせ細り骨が浮き出た老人がいた。
声を出すのも辛いようで、時々せき込んでいる。
コマチに頼んで、ご老人に回復魔法をかけてもらう。
「儂に回復魔法をかけるのは、無駄だよ。もったいないから止めなさい」
「おじいちゃんはどうしたんだよ」
「君は、ああ、最近捕まった悪魔族だね。私はこの国に捨てられたのさ、死んでくれと懇願されている」
今まで下がっていた顔がこちらを見る。
眼球が両方とも白く濁っていた。
「目が……」
「っぐ、ああ、もう昔に目は見えん。じゃが儂には『心眼』があるからのう、お前たちのことが手に取るように分かる」
回復魔法をやめろと言われても、かけ続けていたコマチが首をかしげる。
「回復魔法がかからない?」
「そこのお嬢さん?かな、儂は回復魔法を受け付けない体になってしもうたから、無駄な魔力は使わんほうがええ」
「呪い?体性?」
「体性じゃよ」
そして、老人はまたも下を向く。
しゃべるのに疲れてしまったのかもしれない。
荒い息が聞こえてくる。
「すぐに行ってやりなさい、仲間ならば」
そこで老人は横になって動かなくなった。
まだ魔力が体に残っているため、死んではいないが本当に微々たるものしかない。
助けてあげたいのだが、回復魔法が当てにならないのであれば俺達がどうこうすることはできそうにないため、そのままそっと出ることにする。
「彼は一体何をしたんでしょうか?」
ミアがつぶやく。
「悪いことをしたようには見えんのう」
足音を立てずに上へと上がる階段を上がっていくなか、残していった老人が気になってしまう。
俺は老人の言った「エルフの王になれる」という言葉がずっと頭の中にあった。
もしも、メルがエルフの王族になってしまったらどうなってしまうのか?
エルフの王族になるというのは、どういうことなのか?
メルのことがすごく心配だ、急がねば。
「おい、ちょっと、そんな早く音もたてずに行けねぇよ」
「それじゃ、置いていくことになりますね」
「ばいばいじゃの」
「ばいばい」
気持ちが焦るのと同時に階段を上がる速度も上がる。
ちょっとずつソルとの間が開いていく。
「くそ、このやろう」
あまり広くない階段でソルは少し背中に生えた翼を広げ、体を浮かして付いてきた。
「最初からこうすればよかったんだ」
「あ、おい。バカ」
「んん?魔力反応がこの下から」
階段を登り切ったところにいた兵士二人がこちらへと向かってきた。
ソルはすぐに着地し、魔力を抑えるがもう遅い。
もうすぐこちらを兵士は発見するだろう。
しかたない、彼らは少し眠ってもらうことにする。
「あ……」
声を出そうとした瞬間に、彼ら周りの空気を数秒間無くす。
こうすることで窒息で気絶することと、彼らの声は外へと伝わらなくなる。
奇襲ですれば効果抜群なのだが、普通はレジストされてしまう。
今回はうまくいったようだ。
階段には気を失った兵士が二人倒れていた。
このままにすると、すぐに俺達が脱出したことがばれるので彼らには土魔法で体の表面を固め、元居た場所で立ってもらうことにする。
それでも声をかけられたら気絶しているので、すぐばれてしまうがないよりはましだろう。
「これで完了」
「ありがとう、コマチ」
兵士二人を置いて階段近くの通路に出る。
「確か、この通路を行くと看守と王国兵士の休憩室があったはず、そこを抜けるとエントランスに出る」
その休憩室が難所だろう。
気づかれずにそこを通り過ぎることはできそうにない。
ならばどうするか。
「今回も同じ手でいこう」
規模は大きくなるが、今回も真空による窒息で気絶してもらう。
長い廊下を渡り、扉の前に来て魔法を発動させる。
発動させてから十秒経てば気絶しているので、すぐさま魔法を抑える。それ以上してしまうと死んでしまう危険性があるからだ。
ゆっくりと扉を開けていく。
「よし、皆眠っているようだな」
その顔は苦悶に満ちている。
さぞかし苦しかっただろう、南無。
そして、その部屋も過ぎてまた廊下をどんどんと進んでいく。
さきほどよりも短い廊下を進んで、前の扉を開くとそこはソルが言った通り、エントランスだった。
美女と〇獣のダンスを踊るシーンに使われていた、広く対照的なエントランスには誰一人いなさそうだ。
そして、俺達が入ってきた扉から見て右側に緩やかな階段がある。
「あの上に行けば玉座の部屋へと繋がる。たぶん、お前の仲間はそこにはいないと思う。もし、未来の王族候補なら迎賓館に見張りの兵士と一緒に居るんじゃねえかな」
俺達はそこのところはよく分からないので、ソルに従うことにする。
迎賓館の場所はこの王城とは別館にあるので一度庭の方に出た方が、気づかれにくくばれにくいそうだ。
「おい、捕虜が逃げ出したぞ」
遠くから声が聞こえてきた。
どうもついにばれてしまったらしい。
遠くで多数の足元が聞こえてくる。
「ばれましたね」
「ばれたな」
「どうするのじゃ?」
「強行突破?」
コマチの案に賛成!!
もうこそこそとするのは止めましょう。
気を使う行動が嫌になっていた俺達は普通に進むことにする。
それにソルは驚いた。
「おい、捕まったら死刑は免れないんだぞ。分かってんのか?」
「そうなのか?まあ、大丈夫だ。ここの兵士はそこまで強そうじゃないし」
「それにのう、我らより強い者がいたとしても逃げ切れる自信はあるしの」
「絶対、捕まらない」
天狗になっているわけではなく、最悪の場合の逃げる方法はある。
まあ、あんまり使いたくないが。
「おい、あそこにいたぞ!!」
後ろの俺達が出てきた扉からぞろぞろと兵士があふれてくる。
その様子に終わったという顔のソル。
俺は彼らを見るが、やはり……。
「雑魚ばっかり」
「コマチ、言い方が悪い」
確かに俺達より強そうなのは中にはいない。
俺一人でも蹴散らすことはできるだろう。
でも今は逃げることに専念することにしよう。
「さあ、逃げるぞ」
そのまま庭の方までソルを抱えて(動こうとしなかったので)全速力で走った。




