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ラーマ王との謁見

お待たせしました、どうぞ!!


 「何という事だ、おお、わが愛しき息子よ」


 布で包まれた首を大切そうに抱える王の姿がそこにあった。

 俺達は今、ラーマの国の治安維持隊の隊長に連れられ、王城の謁見の間にいる。

 隊長の方から事の顛末を王の方へ報告した際、王は顔を青ざめ、それでも信じられずに布の中身を見てしまう。

 当然、中には愛しい息子の首が入っており、事実だと受け止めた瞬間に王は床に膝をついて泣き出してしまった。

 王女も王子の有様に絶句し、顔を青ざめ、口を開閉している。


 「王よ、残念ですが第一王子は……」


 泣きながら首を抱え、うずくまる王に対して隊長は語りかける。


 「何が残念か、わが息子が殺されたのだぞ。許さん、絶対に許さん」

 「王よ、今は怒りを鎮めてください。王子の殺害者を目撃した者を連れてまいりましたので」

 「はっ、すまない。私としたことが」


 冷静を取り戻し、王は自分の玉座へと座る。

 内心では殺意や悲しみ、怒気などが渦巻いているだろう。

 それを見せないような振る舞いはさすがだ。


 「それで、その者達が王子の殺人者を見たと」

 「作用でございます」

 「我も話を聞かせてもらおう」


 そこで王からは発言する権利を与えられたので、当時の状況を説明する。

 途中、大臣からも質問が飛んできたが、その内容がひどい。

 遠回しに俺達が犯人ではないか、という疑いの目を向けているのが丸わかりだ。

 それについて、王も少し俺達に疑いがあるのか止めはしなかった。


 「というのが、オークションで起こったことです」

 「なるほど、治安維持隊が到着したのがすでに王子が殺されていた後だったんですか」


 最後に嫌味たらしく大臣が口を挿む。

 何ともうざい大臣だが、確かに俺達が王子を殺していない証拠はない。

 そして、そのテロの仲間として見られてもおかしくはない状況である。

 もしテロの仲間であると判断されると、壁一面に並んでいる兵士達が俺達を襲ってくるだろう。


 「まあ、待て。確かそのテロの者達はバンと名乗ったのであったな」

 「はい、そうです」

 「そうか、バンの一族か」

 「何か知っているんですか」

 「お前達は王の質問に答えるだけでいいのだ。口を慎め」


 大臣がよだれを飛ばしながら、怒鳴ってくる。

 そんな事は無視して、俺は王が言ったバンの一族について知りたいと思った。

 王子を殺したあのバンの師匠は、バンの事を勇者の末裔と言った、勇者の伝説はこの世界に数個存在し、全ての勇者がチート能力を持っている。

 それを受け継いでいるのなら強いのは納得できるが、その勇者の末裔がなぜあんな盗賊まがいの事をしたのかが気になった。


 「確認だが、本当にそのバンは獣人族だったのだな」

 「はい、狼の獣人族でした」

 「なら、間違いなかろう。バンの一族だな、その者らが我が息子を殺したのか」


 王の表情は怒りとは違った感情を表していた。

 それは何か危機感をいだいているような。


 「治安維持隊隊長よ、すぐに防衛設備を整えておいてくれ、そして兵長達を呼んできてくれ」

 「はっ」

 「王よ、どうなされたのですか」

 「これは、まずいことになった。そこにいる彼らの話ではこの国に求める物があると言っておった」

 「はあ、それがどうしたというのです。そのバンとやらを見つけ処刑すればよいのではないのですか」

 「それができんのだ」


 ラーマ王は家来の一人に表紙がボロボロとなった本を持ってこさせた。

 家来からその本を受け取ると、一ページ目を開く。


 「これは、勇者バンの伝説が書かれた原本だ。そして、この原本の最初の行にはこう書かれておる」


 ()()()()()()()()


 「そう、勇者バンは人間種ではない。獣人族でそれも狼の獣人族なのだ」

 「獣人族……」

 「一般開放されている本では勇者バンは人間として描かれている。なぜなら、勇者とは人間にのみ味方しなくてはいけないからだ」


 勇者は人間の味方でなくてはいけない。

 その言葉に引っかかりを覚えるが、まずはこれからのことだ。


 「その勇者バンの末裔であるバンが逃げたところというのは」

 「本土である獣人の国であろうな、バンというのは獣人族の王族の名前。つまり我らは獣人の国に対して喧嘩を売ったにも等しい行動をとったことになる」


 そう、バンは大切な物を取り返しに来たと言っていた。

 王族が大切にしている物をだ。


 「オークションで出されていた商品の洗い出しは済んでおります」


 オークションの商品が記載された資料が届く。

 王はそれをさーっと見て、一つの商品に目が留まった。


 「おい、この獣人族の王族の血を引いている娘はどこに居る」

 「それが、これは獣人族の王の血を引いていると言いましたが、遠縁らしく平民に近い者でして……」

 「どこにいるのか聞いているのが分からないのか!!」

 「はひぃ、そ、それが転送魔術回路によって飛ばされたままで、まだ解析の方が終わっておらず」


 しどろもどろになりながら侍従は後ずさる。


 「それなら、早く解析を終わらせるように行ってこい」

 「はい、直ちに」


 急速に王の元から扉に向かって逃げるように走っていく。

 メルの説明では、転送魔術回路というのは座標を決めて物を送る道具らしく、その発動には繊細な操作が必要になるらしい。

 しかし、今回は緊急時ということですぐに奴隷達は一旦どこかに飛ばされる。

 それがどこなのかが未だ分からない状態なのだろうと教えてくれた。

 王は侍従が行ったのを確認して、俺達に顔を向ける。


 「それでは、確か斗和とかいったか。情報提供感謝する、我はこれから忙しくなるゆえこれにて謁見は終了だ」


 これからの対策に関し、対応が遅れないように各方面に指示を飛ばすラーマ王を見て。

 十人の兵士に連れられ、廊下へと出される。

 そのまま廊下を兵士に囲まれながら歩き、角を曲がったところに白衣のような物を着た男が立っていた。

 顔立ちはシュッとしており、年齢は三十代前半といった感じだ。


 「その人達は、今回の王子殺害の目撃者だよね」

 「はっ、魔術師長様」


 兵士達は全員魔術師長に対し、敬礼している。

 それを見て、やれやれといった表情でその魔術師長は首を振る。


 「そんなかしこまらなくてもいいのにね。それでその人達なんだけど、僕の研究室に連れて行ってくれないかな」

 「いや、しかし、王からは王城から出すように命令を受けており――」

 「許可は僕が後で取っておくよ、だからお願いね」

 「は、はあ」

 「あ、それと、君たちはなんて名前かな」


 俺から左に向かって指をさしていく魔術師長。


 「住山斗和です」

 「メルです」

 「ミアです」

 「リーシャじゃ」

 「コマチ」

 「ふぅうん、トワに、メルに、ミアに、リーシャに、コマチか。まさか他種族が一緒にいるとは珍しい。それも奴隷などの関係ではなく」


 ほう、と感心している。


 「それでは、ちょっと王の元へ行ってくるから、ちゃんと僕の部屋に連れて行ってよ」


 そう言い残し、謁見の間まで歩いて行ってしまう。

 兵士は困惑している様子だったが、許可は王にとると言っていたし大丈夫だろうと行先を変更する。

 連れてこられたのは謁見の間から少し離れた部屋。

 大体謁見の間から間取りとして左の方向に位置している。

 部屋の扉には何十もの幾何学模様が彫られており、魔法陣のようだ。


 「すみません、魔術師長に言われ連れて着ました」


 扉の前で兵士の一人が声をかけると扉に刻まれた幾何学模様が淡く光り、扉に目が作り出される。


 「ふむふむ、合言葉を言え」


 そして、扉の向こうから女性の声が聞こえてきた。


 「えっと、合言葉ですか」

 「ふむふむふむ、合言葉が言えないと……って痛い痛い、耳が~~」

 「おふざけはそれまでにしなさい、今は忙しいんだから」

 「はーい」


 兵士が困っている間に、部屋の中にいる別の女性の声が聞こえ、扉が開いた。

 開けられた部屋の中は少し薄暗く、奥に進む廊下がある。


 「では廊下を歩いて、こっちに来てね~」


 扉の前に居ると思っていたが、声はどうも扉自体から発せられていたらしい。

 兵士達は入ってこようとせず、こちらを見送っていた。

 なので斗和達は声に従って、廊下を歩いて行った。



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