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依頼達成までもう少しですとさ

 統治者の屋敷に今一度、今度は先ほどと違いセレナを連れて向かったところ、向こうもどうせ来るだろうと予想してたらしく、刺客を隠しもせずに庭に集結させて余裕の笑みを浮かべて統治者は。


「散々嗅ぎまわっているようだがどうだ? 何か分かったか? 悪い事は言わない。何も分かりませんでした、と報告して早々にこの街から出て行くがいい」


 なんて、未だに自分が優位だと思っている人間のお手本のようなセリフを吐いてくれた。


「そんな風に刺客を隠しもせずに言ってる時点で、俺たちをどうするかなんて決めてあんだろ? 聞くだけ無駄じゃね?」

「ん? 妾達をどうする気じゃ?」

「物言わぬ(むくろ)にする気だろ。――そうだろ?」

「何と言うかまぁ……。察しが良くて助かるよ! 殺せ!!」


 おどけた様に言って見せた俺に、首を傾げながら問いかけたセレナ諸共消す。

 と元から決めていたであろう統治者は、躊躇(ためら)い無く刺客に俺らを殺す様に言うが……。

 流石に予想済みで、こうなった場合にどうするか、についても打ち合わせ済み。

 そもそも襲い掛かって来た時点でセレナに勝てるはずが無いし、こういった刺客の連中の思考なんざ簡単だ。

 

(旦那も意地が悪いっすよね。わざわざ屋敷の近くで空から降りて、セレナ様と一緒に歩いて出向く。なんて)

(誰が、どう、見ても、セレナ、様、足手まとい、の、幼女)

(なら、下手な動きされねぇようにそっちから狙うわな? 罠とも知らずにさ。HAHAHA)

(ご主人様、たまにそういった方向に頭が働くのは何故です?)


 ほっとけ。

 大人ってのはズルい生き物なんだよ。


(大人の人がそんな事言う時ってー、都合が悪い時ってママが言ってたー)

(ツキ、知ってても言わないのが優しさってやつですぜ?)


 ……ツキに母親が居るなんて初耳だな。

 ちょっと詳しく――。


「お主よ、終わったぞ?」

「ん? あ、あぁ。早かったな」


 セレナに呼ばれて装備達との思考での会話から意識を戻せば、綺麗に襲い掛かって来た全員がセレナの手によって地に伏していて。

 刺客はおろか統治者までも地に這いつくばっていた。


「他の者は気絶させたが、こやつには色々聞く事があるじゃろ? 念の為意識を保たたせておいたぞ?」

「助かるぜ。……さてと」


 ここで洗いざらい吐かせてもいいんだが、どうせなら――ちょっと俺の為に使わせて貰おう。

 結局今まで付けていた口布を取り、絞って丸めて統治者の口に噛ませてっと。


「お前の弁明は国王が聞くだろうから、……ま、頑張れ」


 と笑顔を統治者に向けて――顔面へと拳を叩き込む。

 口布のせいでくぐもった声しか出ず、俺を睨みつけて来るが、さらにもう一発。

 少し視線に怯えが加わったが気にせずもう一発。

 結果、気絶するまで殴り、計八発ほど叩き込んだところで体から力が抜けた統治者を抱え、いざ、ギルドへ!

 ちなみに刺客は確認したが、全員息絶えてたよ。

 自害だろうけどな。


*


「嬢ちゃん、居るかい?」


 ギルドの扉を開け、入りながら声を掛けるが、反応は無い。

 見ればギルドの中は閑散としており、動く人影は見受けられない。

 呪いの空気を払ったとはいえ、すぐに活気が戻るわけもないな、と一人納得した時に。


「旦那! あれ!」


 トゥオンが叫び、あれがどれを指したかは分からなかったが、見渡せば答えは見つけた。

 いつもの受付の場所で、受付のカウンターに突っ伏している受付嬢の姿を確認しちまった。


「嬢ちゃん! 無事か!?」


 急いで駆け寄り、揺すってみたが反応は無く。

 微かに上下する胸に、死んでない事を確認してホッとする。


「セレナ、この嬢ちゃんを……。いや、この街に居る呪いを受けたやつら全員から呪いを浄化させる事は可能か?」

「出来なくは無い。が、時間かかるぞ? 妾の加護とはいえ、広範囲にしすぎると効果が薄れる。……待てよ。――ふむ」


 顎に手を当て何やら考え始めたセレナは、


「出来そうかの」


 と呟いて。


「シズとツキを妾に貸すのじゃ。その二人の手を借りて、町全体に我が加護を行き渡らせて見るとしよう」


 言うなり俺からシズとツキを剥いだセレナは何やらその二人と話をして。


「そうじゃ……、風を媒体に……、その風に治癒と祝福を……。出来そうかの? まぁ……やるか……」


 勢いよく扉を蹴破って街へと元気よく飛び出したセレナは、その後一五分くらい戻って来ず。

 ようやく戻って来たと思いきや、


「ちと不満じゃったな。……いや、その術式よりは……ふむ、むしろ複合して……」


 とブツブツよく分からない単語を言いながらギルド内をグルグル回り始めるし、何も知らないやつから見たら不審者だからな?


「……あれ? ……私……何を?」


 動き回るセレナを見ていると後ろから聞こえたのは受付嬢の声。


「ケイスさん? ……その雁字搦(がんじがら)めにされている方は?」

「あぁ……黒幕」


 無造作に統治者を地面に放り投げて、俺は事の経緯を受付嬢に説明するのだった。

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