依頼達成のお祝いでどんちゃん騒ぎになりましたとさ
「ええと、やっぱりこの街の統治者様が犯人だった……と?」
「やっぱりて。まぁ、この通りだわな」
床に転がされ、のたうち回っている統治者を見ながら言う受付嬢は、どうやら最初から統治者を疑っていたらしく。
軽く説明しただけであっさりと納得してくれた。
いや、確かにあからさまに怪しかったもんな。
魔法石調べようとしたら皆キャンセルなんざ、統治者自身が犯人だって名乗りを上げてるようなもんだわ。
「ところで、見た事も無い方がいらっしゃるようですけど……」
受付嬢の視線の先にはセレナが居て。
不思議そうに尋ねて来るが、はてさて何と答えるのが正解か。
素直にモンスターと言っても信じないだろうし、仮に信じたとして二つ名付きのモンスターなんざ冒険者達の格好の的だ。
どうするつもりかセレナ本人の意志を確認する為に視線を向けたが、返ってきたのは意外な反応で。
「…………」
ただ無言で俯いて、手を伸ばして俺に向けていた。
それは、まぁ、恐らくだが、俺に任せる、みたいなニュアンスのジェスチャーだと思う。
つか妙に静かだと思ったらそういやお前受付の嬢ちゃんが目を覚ましてから一言も言葉を発してないな。
引っ掛かるがここで聞いたところで答えなど返ってこないだろうし、この場はそれっぽい事言って、後で適当な時に聞いてみるとするか。
「あー、この街動き回ってたら見つけた孤児みてぇでな。この子のおかげで今回の件が解決できた。文句なしのMVPさ」
セレナの頭をワシワシと撫でながら、そう言って見れば。
「そうなんですね。にしても、その子が大活躍ですか……詳しくお聞かせ願いたいものですが……」
「悪い。ちょっとデリケートな部分も交えて説明しないと納得できない内容でな? んでそのデリケートな部分は知られたくないんだとさ」
モンスターである事がデリケートなのかはさておいて、説明なんざ出来るはずも無く、ただの出まかせだったが。
「あ、そうなんですか。ではしょうがありませんね」
意外とすんなり納得してくれた。
普段から色んな冒険者と接しているだけあって、この辺の許容は日常茶飯事と言ったところか。
「さて、王都からそろそろ来そうですけど、遅いですね」
この統治者の事を嬢ちゃんに説明する前に、嬢ちゃんに頼んで王都へ簡単な報告と、統治者の引き取りを願う旨を書いた手紙を鳥送で送ったのだが、その引き取りが中々来ないと少し不安になりつつあった。
いかに王都と離れている街とは言え、王都付きの魔導士ならば転送魔法が使えるはずなのだからそうそう時間はかからないと思うのだが。
なんて思っている時に、目の前の何もない空間に奇怪な魔法陣が出現し。
出現したかと思えばその魔法陣から全身ローブで覆った魔導士が二人ほど現れた。
「報告を受けて来た。その者がそうか?」
手にした杖で地面に転がる統治者を指し、こちらへ確認を取って来たので頷くと。
「ご苦労だった。……名を聞いておこう」
とやや上から目線でそう言ってきた。
少々鼻につくが、相手は王都を守る魔導士様。
下手に刺激した先にあるのは十中八九悪い事。
「エシット・ケイス。今はパーティを組んで無いから冒険者ではねぇな。元冒険者だ」
「そうか」
自己紹介にぶっきらぼうに返した魔導士様は、統治者を担いで出てきた魔法陣へと入っていって。
ゆっくりとその姿を消した。
「……そうでした! ケイスさん冒険者じゃないじゃないですか! これ王様の耳に入って処罰とかされませんかね?」
「大丈夫じゃね? ……多分」
「そこは断言してくださいよ! 私クビになったらどう責任取ってくれるんですか!」
「解決したんだから大丈夫だろ!」
そんなやり取りをしていると、回復したらしい冒険者や街の人がギルドに雪崩れ込んできて。
この事件を解決した事を祝って全員で盛大に食べて飲んでの大騒ぎを行った。
もちろん、解決した俺は金を出さずに、ただ酒とただ飯で最高に楽しく騒がせてもらった。
*
ケイスが問題を解決する為、セレナと共に暴れまわる少し前。
馬車を使ってこの街へとやってきたパーティが一つ。
「ねぇ、ラグルフ? どう見ても街が異常なんだけど……」
馬車から降りずに外を見渡して言うアイナへ、
「だね。どうする? 引き返す?」
と、馬を操りながら振り返り聞くラグルフに飛ぶのは、女性陣のブーイング。
「引き返すって、どこによ? あなたが馬車を操れるっていうから任せてみたら、今の今まで迷ったじゃないの! 引き返してもまた迷うのが目に見えてるわよ!」
「それよりお風呂入りたーい。本当は昨日街に着く予定だったのにー」
「いえ、馬車の中で座り続けでもうお尻が痛くて……一刻も早く宿屋で休みたいです……」
そのブーイングを笑って誤魔化すしかなかったラグルフは結局、宿屋へと向かい、一同ゆっくりと休んで。
――呪いに蝕まれ、全員死にかける事になるのだが、それはまた別の話で。
その呪いを浄化する為にセレナとシズとツキの力で放たれた魔法は。
まるで天を割るかの如く雲を二分し、さながら神の祝福の様に、街全体へと広がっていった。




