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20話 スライムの液体

 かなり前からちらほらと見えているが、その謎の血塗れた皮や何かの動物の様な頭部は何なんだ……? もしかすると気にしてはいけない部類に入る何かなのか?


 ……見なかったことにしよう。存在感が強すぎるけど。


「そういえば何故外なんだ?」


 上は青空で、若干涼しい位だろうか。かなり人の居ない場所に建てた家であるため、今思えば見られるということは無いとは思うが、それでもあまり良いものでは無いよな。そりゃあ虫なんかが入ったら食べたくないし。

 こう考えてしまうのは俺がインドア派過ぎるのが問題か。


「涼しいから。後は……君が外に出る時なんてほぼ迷宮に潜る時ぐらいでしょ?」


 ……なるほど。確かにそうだ。


「ちゃんと食材買ってきてね!!」


「そこまで計算して、今ある食材を全て使って飯を作るのか!?」


「それは私のさじ加減」


 どうせ少ししか食べない癖に多く作りやがって。

 朝飯にしては無駄に量が多いし、そもそも寝起きの胃には絶対良くない。なんで揚げ物があるんだよ。完全に殺しにかかっているようだが。

 救いのサラダと言ったところか。


「フェリルちゃんが何食べるかは分からなかったけど……とりあえず犬だしなんでも食べるよね」


「なんだよその適当な理論は……」


 もし万が一腹を壊したりしたらどうするんだ。


「私は別に問題ありませんよ? 多分なんでも食べれます」


 そうなら別に良いのだが……。


「私は……一体何を食べるのでしょうか?」


 アスロラは正真正銘のスライムが故に、何も食べなくとも生きていける筈だから何が必要とかは無かったと思うが、身体の構造が人間寄りなら味覚とか、人間に近い消化器官とかもあるだろう。だからなんだという話だが、そういうのでもしかすると栄養素を蓄えていけるかもしれないな。良くは分からないが。


「とりあえずアスロラも手伝ったんだろう?」


「あ、うん。レイミアが牛乳が必要だと言うから捻り出した」


「……え」


 一体何処から牛乳を……? 出したって言ったよな? 今出したって……。


「この魔牛・ディアボリックカウから」


 アスロラは謎の黒々しく、血が飛び散っている皮を指さした。


 ……。


 何処にそんな禍々しい牛が居たんだよ。そして何サラッと調理して食わせようとしているんだよ。

 必死に見ないようにしていた謎の皮がディアボリックカウなのかよ。


「もう〜!! アスロラちゃんってば私の母乳で代用したって照れながら言ってくれないと〜!!」


「あ、ごめん。本当は私の母乳で……」


「スライムの母乳なんか飲んでたまるか!! っていうかディアボリックカウの牛乳も飲みたくねぇ!! 怖ぇ!!」


 ……今更過ぎるがレイミアがアスロラにさせようとしているのは、余裕で犯罪行為のような物に近いと思うのだが。


「結構元気なんだね?」


「あぁ、そういえば。ちょっとは戻ってきたかもしれないな」


「母乳飲む?」


「その設定まだ続ける気か!?」


「大丈夫。私がしっかりと魔法による殺菌処理を施したから。必要なかったかな?」


 朝と風呂上がりの牛乳程、美味い飲み物は無いと思ってきたが、あんな死骸を見せられた上でこの牛乳を飲むなんて苦行、出来るわけ無いだろうが。そもそも殺菌処理をしたのかさえよく分からない物を……。


 ただただ俺は牛乳と思わしき液体が入った透明な容器を見つめていた。


「んぐ!?」


「早く飲んで」


 容器の底をグイッと上げて、容器の縁を無理やり口に押し付け、その謎の液体を口の中に含ませるという悪行をアスロラが何食わぬ顔で遂行していた。


 ……結論から言ってしまえば悔しい程美味い。サラサラとした舌触りに、コクがしっかりとあり、それであってしつこく無い甘み

。更に後味がさわやかである。それはもう完璧だと言わざるを得ないものだった。


「どう? 私の」


「ディアボリックカウの牛乳、美味い!!」


 続けて俺は自主的に容器を手に持ち、残った液体を飲み干した。改めて味わうとこの上ない美味しさに気付かされるようだった。


「……私の」


「これ、お代わり頼めるか?」


 ヤバい。もしかすると俺、これが無いと生きていけないかもしれない。


「すっかり中毒ね」


「麻薬常習犯の様な扱いをするなよ」


 なんか嫌なジェスチャーをしてくる。そう考えると今の俺と、麻薬を使っている奴、殆ど変わらないかもしれないな。


「はいお代わり……ってアスロラちゃん? 何やっているの?」


「んっ……出て……」


 まさか本気で出そうとしているのか? 捉えられるのは後ろ姿だけだが、それでも背後を見たところは正面に何も着けていない図が容易に想像できる。


「おい……レイミア、アスロラになに教えたんだ?」


「わ、私は何も……だよ?」


 そもそも母乳ってのはまず妊娠することが前提だが。第一、スライムは分裂して増える無性生殖が基本だ。まず出ないだろう。


「……出来た」


 空いた口が閉じなくなった俺とレイミア、それと何をやっているのか理解がままならないフェリルの元へ、赤黒い飲んではいけない何かを容器に入れて持ってくる。


 胸部分が完全に生成されていなく、赤黒いドロドロした物が見えることから、胸として扱っていた自身の身体の一部を削いだ……ということになるのだろうか。


「飲んで」


「嫌だ。死にたくない」


 飲んだら間違いなく寄生とかされそう。偏見だが絶対に起こる自信があるし、絶対に不味い。この赤黒いドロドロとした何か、絶対スライムだし。


「飲め」


「命令形!?」


 死んだふりをしようかな。スライムって単純で死人と死んだフリをしている人の違いが分からないってよく聞くし。

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