19話 スライムは常に裸
「……つまり生命エネルギーを必要とすると」
俺が楓刃から聴いたことをほぼそのままに伝えると案外普通に納得してくれたようだった。
「その為には栄養素、つまり飯が必要……ってことね?」
「まあな」
あとは睡眠も必要らしいが。
「私を嫁に貰うしか無くなったわね?」
「それは知らん」
「私を嫁にすればイイコトいっぱいあるよ?」
「そこ一言ずつ区切って言うな」
どうしても卑猥な事のように捉えてしまうんだが。
「わっちはこの輪に必要でありんしょうかね?」
「常識人は楓刃しかいないから……頼む」
この場合なら人じゃなく刀なのか。ただ、普通に楓刃は必要だな。
「まぁこの話は置いといて。楓刃ちゃんの為にも沢山食べなきゃいけないね?」
「そうだな。本当に感謝しているよ」
無駄に多く作るのも今回ばかりは有難いとしか言えない訳か。
「私を嫁にする気になった?」
「俺もお前も色々と忙しいだろうが。そもそもこんなふうに飯を作っている暇も無いだろう?」
「あるよ?」
「あるのか。いや!! そうじゃなくてだな」
「今日は思いっきり羽を伸ばそうと思ってきたんだけど……邪魔かな?」
羽を伸ばしに来たのか。それにしてはここに居ると伸ばすものも伸ばせないような気がするが。
「そうだよね……フェリルちゃんやアスロラちゃんがいれば満足だもんね……私なんて……いらないよね……」
なんだコイツめんどくさい!! やけに本気で言っていそうなのが本当にめんどくさい。
「いや……何もそこまで言っていないし、そもそも何も言ってないよな!?」
「えへへ」
何処まで調子に乗るんだろうか。この女は。
「はい!! 早く食べないと美味しくなくなっちゃうよ? 全くもう」
「何処の誰が遅延行為を行ったんだよ……」
結局そう言った後、俺は楓刃を魔法空間に収納すると、食事が並ばれて居る場所へと案内される。
着いた先は何故か外だった。
「私のこの劇的なセンスに感謝してよね」
ドヤ顔するのも分からなくは無いが、此処だって特別広い訳でも無いだろうに。
「あ!! ご主人様だ!!」
フェリルが威勢よく駆け寄って来る。
「手伝えたのか?」
「はい!! お皿運びを!!」
だろうな。それに、妙に気になるのは肌の露出が多いアスロラのその姿だが。
「裸エプロンと言うものらしい。レイミアがこれを着ければ君を落とせると言っていたが……そもそも落とすとはどういうことなのでしょうか」
「知らなくて良いから人目に着く前に服を着てくれ」
「わかった。所謂人に見られたらマズいものなんだな?」
理解してくれたようで何よりだ。
……何よりなんだが、今此処でその重要な部分を辛うじて見せないようにしている一枚の布切れを脱ぐ必要があるのだろうか。
「わお……大胆ね」
「そもそもこの姿が魔物たる私の本来の姿である為、この状態であっても何もおかしくは無いような気がするのだが」
「今は人間の姿をしているだろ!? なら少なからず人間と同じように生きててくれよ!!」
「注文が多いな。まぁ仕方が無いと言えば仕方ないか」
エプロンが肌から離れた瞬間に、アスロラの身体は歪な形をとり、衣装を着用していた。
落ちたエプロンは本物で、今まで着用していた服と思わしき物は実は肌だったと。なんとなくそう推測が出来た。
つまり常に裸だったということか?
考えないようにしよう。魔物だし。




