15話 迷宮変異
あの後も色々と聞かれたような聞かれなかったような気がするが、俺達は有り余る部屋の数々で別々に寝ていた。
別々に、寝ていたはずだったが。
「……フェリル……アスロラ……」
フェリルは俺の腹より少し上の胸筋辺りで膨らんだり小さくなったりして眠っている。
アスロラは俺の腕を枕のようにしつつ、思いっきりくっつきながら寝ていた。
ゆっくりと動く暖かなもふもふと、柔らかくも押し返すほどの弾力を兼ね備えているそれが、同時に俺という一人の男を無差別に襲う。
俺、ここで死ぬのかも知れない。幾度の死線を超えてきた単独迷宮攻略師は今ここで、二匹の魔物によって。
この絶体絶命とも言えるこの状況を打破するには何をすれば良いのだろう、と考えてみるがこんな場面、今まで見たことが無い為、それは簡単に崩れていく。
「とりあえず揉むか」
狂言とも言えるその言動を元に、その手はアスロラの胸へと向かっていく。
「なに……やってるの?」
手を伸ばそうとしたその時、透き通った声が絡みつくその腕と胸の上にある、瞼が開いた顔から放たれた。その声は狂った思考を元に戻すと同時に俺に焦りを生じさせた。
「や、やあ、おはよう」
「……ん」
何もなかったかのように態勢を崩すこと無くまた目を瞑る。
「好きなだけ揉んでて良いから。おやすみ」
物凄くありがたくもあり恐ろしい言葉を放ち、二度寝を開始する。
果たして揉んで良いとは言われたが……どうやらあの衝撃で熱が冷めたようだ。
俺ももう一回寝よう。
「おーい!! 起きて!!」
「なんだ……うるさいな」
全身を大きく伸ばして俺の胴体の上で被さるように寝ているフェリルの姿と、腕だけでもなく脚にまで絡みつくようにしている。一言で言えば物凄い状況ということだ。
そして俺らを起こdしたのは言うまでもなく、レイミアだ。
「すっごいハーレムしてるね? そんな君達に朗報だよ。宝を金に替えていた時に聞いた話なんだけどね、最近攻略済みダンジョンに新しい道ができたりする変異が起こることが多くてね、心当たり無いかなぁって」
俺とアスロラは互いに目を向け合い、再びレイミアの方へ目線を向ける。
「俺、こいつを一度攻略したダンジョンで見つけたんだよな。なんて言うか壁から赤黒いスライムが滲み出ていてな。まぁそこを壊したら道があったって感じだが……」
「そう!! それ!! これは私の勝手な推測なんだけど大迷宮が関与していることだと思うんだよね」
「何故そう思う?」
「未攻略迷宮発見師の感かな? 本当のことは誰にも分からないんだけど、ちょっとやばい事になりそうだなって」