表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あたしはアヒル2  作者: るりまつ
19/42

はやる気持ちを抑えつつ



 タケルの空色のワンボックスカーは、カガミハマに到着していた。

 

 風はやや西から吹きつけ、波は遥か沖から雄大に入って来る。

 波面は朝に比べればささくれ立っていたけれど、頭からすっぽりと包みこむような十分なサイズは保たれていた。

 横から吹きつける風が、分厚い波の斜面を駆け抜けると、粉砂糖のように細かい飛沫が吹き上がる。

 そそり立つ波の頂点が次第に崩れ落ちていく様は、海の女神の青く開かれた唇がゆっくりと閉じていき、サーファー達を飲み込んでいくようだ。


 うぅ〜〜〜〜早く入りてぇ〜〜〜〜〜!!!!

 潮が上げてきて、ホナミが言ってたよりサイズアップしてんな。

 午前中よりだいぶいたはずだ……


 視力の良いタケルが目を凝らすと、波待ちポジションのピークには、知り合いのローカルサーファーが数名、浮かんでいるのが見えた。

 これなら少しはお裾分けを頂けるかもしれない。

 そんなことをワクワク悶々と考えながら、とにかくタケルは車を停めに行った。


 ここは、サーファーに向けた公営駐車場は無い。

 国道沿いにいくつかある、車2台分くらいの小さな駐車スペースは、漁業者専用のもので、サーファーの駐車は厳禁だ。

 だからと言って、万が一路上駐車でもしようものなら、後で車も本人もどんな目に遭うか知れたもんじゃない。


 タケルは国道の一本裏の、細い道路を通って住宅地に入り、とある大きな平屋の一軒家の、個人用駐車スペースを確認した。

 砂利の駐車場には、すでに五台の車が入っていて満車のように見えたが、運良く奥の方に軽自動車なら停められそうな隙間があった。

 タケルは急いでそこに車を突っ込むと、その立派な屋敷の玄関に向かった。

 チャイムを鳴らす。

 しかし留守のようで、中から人が出てくる気配はない。

 家の中からは、小型犬がうるさく吠えるのが聞こえてくるだけ。

 仕方なくタケルは一度車に戻ると、カバンからノートを取り出し一枚破り、ボールペンで自分の名前と車のナンバーと、携帯番号を書き留めた。

 そして『お久しぶりです。駐車場お借りします』と一言添え、それからその紙を丁寧に折り曲げて郵便受けに入れた。


 これで完了。


 ここは地元の漁師のドンだった男の屋敷で、もうすでに漁師としては引退していたが、今でもサーファーと漁師の間のもめごとの仲裁に一役買っていた。

 タケルがまだ10代の頃、この辺りの若いローカルサーファーと波のことで揉め、陸に上げられ、4人がかりでボコボコにされたことがあった。

 その時、仲裁に入ったのがやはりこのドンで、しかしあまりにもタケルが頑固なので、最後は一発ドンにぶん殴られ、両の鼻の穴から鼻血がマンガのように噴き出したところで、全てはチャラとなった。


 その時以来の仲である。


 タケルは空色のワンボックスカーのリアドアを開けると、朝とは違うボードをニットケースから引っ張り出し、ゴリゴリゴリゴリと、もどかしくワックスを塗った。

 それから車をロックして鍵を所定の場所に隠すと、サーフボードを抱え、タッパは着ずに、裸足にトランクス一枚で国道の方へと駆けて行った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ