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第五話(Boron):錬金術師

レイリーの診療所では、柚紀がレイリーに現代の医療技術について熱心に語っていた。顕微鏡の使い方、消毒の重要性、そしてペニシリンの驚異的な効果。レイリーは、柚紀の語る知識に目を輝かせ、熱心にメモを取っていた。


「……消毒は、細菌の感染を防ぐために不可欠です。手術前はもちろん、患者さんの傷の手当てをする際にも、必ず消毒を行ってください。そして、ペニシリンは、細菌による感染症に非常に効果的な薬です。しかし、使いすぎると耐性菌が出現する可能性があるので、注意が必要です。」


柚紀は、レイリーに顕微鏡の使い方を教えた。レイリーは、顕微鏡を通して見る微細な世界に、驚きと感動を覚えていた。


「……こんなにも小さな生物が、私たちの体を蝕むことがあるなんて……。柚紀様、あなたの知識は、まさに神の領域です。」


レイリーは、柚紀の知識に深く感銘を受け、敬意を表した。柚紀は、レイリーに笑顔で答えた。


「……レイリー先生、あなたは優れた医者です。私の知識は、あなたの技術と経験によって、さらに輝きを増すでしょう。何かあれば、いつでも呼んでください。」


柚紀は、レイリーの診療所を後にし、ヒューストンにレイリーと共にアスピリンやペニシリンを製造するように伝え、エリンと共に今までいたエルムヴィレッジから少し離れた火山地帯へと向かった。目的は、鉱石の採集だ。硫黄、黄鉄鉱、方鉛鉱、磁鉄鉱、蛍石、硅砂、赤銅鉱、錫石。これらの鉱石は、今後の実験や研究に不可欠な材料となる。


火山地帯に到着すると、二人は早速鉱石の採集を開始した。柚紀は、鉱石の種類や性質について、エリンに説明しながら、手際よく作業を進めていった。エリンは冒険者らしく、力の強さがあり、簡単に石を掘っていった。柚紀は、久しぶりに見る鉱石たちに、興奮しながらも慎重に鉱石を回収していった。


「……硫黄は、火薬や薬品の原料になる。黄鉄鉱は、硫酸の原料だ。磁鉄鉱は、磁石の原料。硅砂は、ガラスの原料だ。珪砂と炭があればあれも作れるが......」


柚紀が鉱石の説明をしていると、一人の人物が近づいてきた。その人物は、ローブを身にまとい、杖を持っていた。


「……あなたは、珍しい鉱石を集めているのね。私は錬金術師のスカーレットよ。」


スカーレットは、そう自己紹介すると、柚紀の集めた鉱石に興味を示した。柚紀は、スカーレットに鉱石の種類や用途について説明した。


「……これらの鉱石は、様々な実験や研究に使う予定です。あなたは錬金術師とのことですが、鉱石について詳しいのですか?」


「ええ、鉱石は錬金術の基本よ。特に、これらの鉱石は、錬金術の材料として非常に価値が高いわ。」


柚紀とスカーレットは、鉱石の話で意気投合し、話が盛り上がった。話をするうちに、柚紀はスカーレットのような錬金術師が、この世界では居場所がないことを知った。この世界でも錬金術師は異端扱いを受けていると知った柚紀は憤りを感じたが、あることが浮かんだ。


「…スカーレットさん。私と一緒に来ませんか?あなたの錬金術の知識は、私の科学知識と組み合わせることで、さらに大きな力を発揮できるはずです。」


柚紀は、スカーレットを仲間に誘った。スカーレットは、少し考えた後、笑顔で頷いた。


「…ええ、あなたとなら、面白いことができるかもしれないわ。」


こうして、柚紀は新たな仲間、錬金術師のスカーレットを迎えた。三人は、協力して鉱石の採集を終えると、街へと戻った。


街に戻った柚紀は、レイリーから柚紀のいない間に、ペニシリンによって多くの人々が助けられたと知り、ヒューストンとレイリーに協力を仰ぎ、ペニシリンやアスピリンの量産体制を構築することを提案した。


「…ペニシリンやアスピリンは、この世界の医療水準を大きく向上させることができる薬です。これらの薬を量産し、販売することで、私たちは資金を稼ぎ、さらに研究を進めることができます。」


ヒューストンとレイリーは、柚紀の提案に賛同し、量産体制の構築に協力することを約束した。こうして、柚紀たちは、医療技術の向上を目指すと同時に、この異世界で研究を進めるための資金稼ぎを始めると決意し、新たな一歩を踏み出したのだった。

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