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第三十四話(Selenium):NOT TO STOP QUESTIONING

秋の夜空が、満点の星で輝く中、ラボの近くに作られた滑走路に、不相応に一機だけ、航空機が佇んでいた。その機体は、鉄でできており、銀白色に輝いていた。ただし、現代の戦闘機のようなものでなく、初期のプロペラ機を思わせるそれだった。


柚紀は、隣に立つメガネに語りかけた。「よし、準備はいいか?」


「ああ、いつでもいけるぜ。」メガネは、自信に満ちた表情で答えた。


二人は、それぞれの役割を再確認し、機体に乗り込んだ。柚紀は操縦桿を握り、メガネはエンジンの始動を担当した。


「ヒューストン!頼む!」


柚紀の合図で、ヒューストンがエンジンに点火した。車用のエンジンが唸りを上げ、プロペラが勢いよく回り始めた。


機体は、滑走路をゆっくりと進み始めた。柚紀は、機体を安定させながら、速度を上げていく。しかし、なかなか離陸に必要な速度に達しない。


「柚紀、ブースターだ!今だ!」


メガネの指示に、柚紀は迷わず固体燃料ブースターに点火した。


「ゴゴゴゴゴゴゴ!」


轟音と共に、機体の後方から炎が噴き出した。ブースターの強力な推進力で、機体は一気に加速した。


「来た!上がるぞ!」


柚紀は、操縦桿を強く引き、機体を持ち上げた。車輪が地面を離れ、機体はふわりと浮き上がった。


「やった!飛んだぞ!あ、やば」


メガネが、歓喜の声を上げた。柚紀は、初めて空を飛んだ喜びで、全身が震えていた。それどころか、柚紀は高所恐怖症だったことを思い出し、操縦桿を持ちながら小刻みに震え始めた。


「風を感じるか……これが、空を飛ぶ感覚だ!」


柚紀は、操縦桿を微調整しながら、機体を安定させた。眼下には、星明りに照らされたラボの明かりが見えた。それは、彼らの夢と努力の結晶だった。


「おい柚紀、ライトフライヤー2ってさ、まさか……」


メガネが、機体の外側にある刻印をみて感慨深げに呟いた。柚紀は、彼の言葉に深く頷いた。


「ああ、そうかもな。そのまさかだ......」


柚紀は、恐る恐る夜空を舞う星々を見つめた。故郷の地球では、もう二度と見ることができないかもしれない、満天の星空。しかし、今、彼はタイタンの星空の下で、科学を駆使して空を飛んでいた。


着陸は、離陸以上に難しかった。柚紀は、機体のスピードを落としながら、慎重に操縦桿を動かした。滑走路に近づくにつれ、緊張が高まる。着陸の衝撃を和らげるために、彼は機体を少しずつ降下させた。


「もう少しだ、柚紀!」


メガネが、柚紀の横で声をかけた。柚紀は、その声に勇気づけられ、集中力を高めた。タイヤが、滑走路にそっと触れた。


「ガタン!」


小さな衝撃と共に、機体は滑走路を滑走し始めた。柚紀は、ブレーキをかけ、機体の速度をゆっくりと落としていった。


メガネが慌てている様子なので、柚紀はこっそりと仕掛けておいた大きな、赤と白のパターン模様のパラシュートを展開した。パラシュートを展開する航空機なんて、他にはスペースシャトルくらいしかない。だからこそ、夢が詰まった装備であり、それに気づいたメガネも感動を隠せていなかった。それに、実際、空気抵抗は絶大で、パラシュートの効果は大きかったようだ。


「止まった……」


機体が完全に停止すると、柚紀は安堵のため息を漏らした。隣のメガネも、疲労と達成感から、ぐったりとしていた。


「やったな、柚紀!俺たちは、空を飛んだんだ!」


メガネが、柚紀の肩を叩いた。柚紀は、その言葉に深く頷いた。


「心なしかパラシュートでの減速が速かったような......つまり、この星の大気は極めて厚いのではないだろうか?だとすれば......」


柚紀が考えにふける暇もなく、機体の外では、大勢の人が集まっていた。エリンやサーモン、スカーレット、チビ、そしてこの機体を作ったヒューストン。彼らは、柚紀たちが無事に着陸したことに、歓喜の声を上げていた。


「柚紀さん!メガネさん!大丈夫ですか!」


エリンが、心配そうに駆け寄ってきた。


「ああ、大丈夫だ。俺たちは、空を飛んできたんだ。」


柚紀は、エリンに微笑んだ。


「すごい!本当に空を飛んだんですね!」


サーモンが、興奮した様子で機体を見つめた。


「柚紀!俺たちの夢は、また一歩前進したやんけ。」


ヒューストンが、満足そうにこう言った。


「まさか!本当に空を飛べるなんて!」


柚紀たちは、皆の祝福を受けながら、自分たちの成し遂げた偉業を噛み締めていた。それは、ただ空を飛んだというだけではない。科学の力で、この異世界に新たな可能性を切り開いた瞬間だった。


この夜、彼らは空の旅を祝し、盛大なパーティーを開いた。それは、この異世界の科学の夜明けを告げる、希望に満ちた夜だった。

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