第60話 満更でもない
その後、グラサンは【継承】効果によりデッキからランダムに1枚ドロー、最後の『勇躍のハイスパイダー』に1のダメージを与える。
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『勇躍のハイスパイダー』 防御力2⇒1
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「また『悪魔の屋敷』に召喚した事により、デッキから【リタイアゾーン】に『メイド』を1枚送る。さあ、これで残る【税】は黒1のみだ」
「おい、まさか――」
「――まあ、こんだけドローを繰り返していたら、そこそこの豪運でも欲しいカードは揃うわな。俺はその黒1を使い、『見習い悪魔メイド』を『小悪魔メイド』に【継承】召喚」
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『見習い悪魔メイド』
分類:領主 レア度:C コスト:黒1 タイプ:悪魔、メイド
攻撃力1⇒4/防御力1⇒3
【隠密】(new!)
相手【領主】1体を-1/+0
【継承(メイド)】継承した【領主】を+2/+0
【継承(メイド)】相手【カードマスター】の手札をランダムに1枚【リタイアゾーン】に送る。(new!)
【継承(メイド)】継承した【領主】を+0/+2(new!)
【継承(メイド)】デッキからランダムに1枚手札に加える。(new!)
【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+0、【隠密】を付与。(new!)
【継承(メイド)】【領主】1体を対象とし、1のダメージを与える。(new!)
【継承(メイド)】継承した【領主】を+2/+0(new!)
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天使のコスプレの次は悪魔、そんな様子で登場する『見習い悪魔メイド』。しかし、ドジっ子そうな雰囲気とは裏腹に、彼女が有する能力は盛りに盛った状態であった。
「文字が、文字が多い……!」
そして、クロマに精神的ダメージを負わせるに至る。
「落ち着け、順に処理していけば良いだけだ。まずは『見習い悪魔メイド』自身の効果、『勇躍のアラクネ』の攻撃力を1下げるぜ。あ、ついでに『勇躍のハイスパイダー』にも1ダメな」
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『勇躍のアラクネ』 攻撃力6⇒5
『勇躍のハイスパイダー』 防御力1⇒0 破壊
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「ハッ!? 気が付いたら勇躍ハイスパちゃんがッ!?」
「ああ、これで漸くの全破壊だ。で、何気にこれが本命だったりするんだが……同じ【継承】能力により、クロマ、お前さんの手札からランダムに1枚、【リタイアゾーン】に送らせてもらうぜ?」
そんなグラサンの宣言の直後、クロマの手札からランダムに選出された1枚が消失し、強制的に【リタイアゾーン】へと送られてしまう。ただでさえ2枚しかなかった手札が、これにより残りは1枚のみ。
「それ、はぁぁぁッ……!」
「その反応から察するに、良いカードが選ばれたみてぇだな? 如何にドローソースに恵まれた青が入っているとはいえ、流石に手札1枚はきついってもんだ。そして、俺は【継承】の効果でデッキからランダムに1枚手札に加え、『悪魔の屋敷』の効果でデッキから【メイド】のカードを1枚【リタイアゾーン】へ送る……これでターンエンド。クロマ、お前さんのターンだ」
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7ターン目 【戦場】『メイドの野戦病院』
クロマ ライフポイント16 手札1
『蜘蛛の狩り場レベル2(緑3)』=『空』
『慟哭蜘蛛の巣レベル2(無1)』=『空』
『青の領土レベル2(青2)』=『勇躍のアラクネ(5/7)』
『慟哭蜘蛛の巣レベル2(無1)』=『空』
グラサン ライフポイント15 手札4
『悪魔の屋敷レベル3(黒3)』=『見習い悪魔メイド(4/3)』
『天使の屋敷レベル3(白3)』=『悪魔のメイド教育係(4/1)』
『メイド養成教室レベル1(なし)』=『見習い天使メイド(3/1)』
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戦況は既に大勢を決していた。次のドローを含めても、クロマが扱えるカードは2枚のみ。如何にバトルの後半部分で大型の【領主】を扱う事の多い緑とはいえ、この選択肢の少なさで戦うのは非常に厳しい。フィールドには『勇躍のアラクネ』が存在してはいるが、パワーアップを施してくれる『勇躍のハイスパイダー』が全滅してしまったこの状況では、そのステータス以上の活躍は望めないだろう。たとえこのターンに攻撃力が倍になったとしても、グラサンを仕留めるには至らない。
「アタシの、ターン……!」
だが、だがそれでもクロマは諦めていなかった。自分の心に生まれて初めて宿った狂気的な執着心、それは絶望的な状況程度で冷めるものではなかったのだ。
「アタシのデッキ、アタシに応えろおおおおッ!」
◇ ◇ ◇
その後の試合展開は酷いものだった。裏の観客達の反応も以下の通りで、蹂躙と言っても過言ではなかった。
「おいおい、ここまで差があるのかよ? しかもあの強面、R以下のカードしか使ってなくね?」
「クロマの奴、最近の表の試合ではかなり活躍していたから、別に弱いって訳じゃないよな?」
「弱い訳じゃないでしょ。今のレベル3の中じゃ、間違いなくトップの実力者に入るわよ」
「おかしいのはあのサングラスの方だな。噂じゃ、レベル3に来たのも最近の筈なんだが……」
「あれ? つか、レベル1の新人戦に出てたのも、つい最近だったような? でも、レベル2の大会で見かけたって話はねぇよな?」
「それっきり表に出ず、裏でやりまくってたって話だろ。あのレイコーポレーションのお抱えだぞ? にしても、えぐい戦法を取りやがる。アレじゃクロマは何もできねぇよ」
「一方のサングラスの方は、どれだけカードを使ってもその都度手札が補充されて、全く尽きる様子がないのよね。もうデッキの全てを使い切る勢いじゃない?」
クロマが使用できるカードはごく僅か、それもそのターンに使い切らなければ、また手札から【リタイアゾーン】に捨てられてしまう為、次の手番に取っておく事もできない。『勇躍のアラクネ』を起点に巻き返しを図るも、次々に現れるメイド達に弱体化、或いは間接的なダメージを負わされ、見るも無残な姿にされてしまった。対するグラサンは尽きない手札、そして第二の手札と化した【リタイアゾーン】を使い、遂に猛攻を開始。そして決着の時は、8ターン目のグラサンの手番に来る事に。
「……アタシの負け、か」
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クロマ ライフポイント4⇒0
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メイドによる【隠密】状態からの不可避の一撃。【門番】の居ないクロマにそれを防ぐ手立てはなく、彼女は敗北を喫する事となる。それはつまり、彼女の人権が剥奪され、今後はレイコーポレーションの社畜として働く事を意味していた。
「クロマ、良い勝負だったぜ? これからについては……まあ、俺からは頑張れとしか言えねぇな」
「……」
「おい、大丈夫か?」
「それ、って……」
「ん?」
「それって、奴隷として俺の下でこき使ってやるから覚悟しておけよ、って事!? アタシ、グラサンに滅茶苦茶にされちゃうの!? それはそれでやったぁぁぁッ!」
「違う、全然違う」
但し、当のクロマは満更でもない様子だった。




