第59話 繁忙期の再雇用
たった1枚のカードで自陣を立て直したクロマ。彼女が繰り出した『勇躍のハイスパイダー』には、相手の戦闘破壊時に『勇躍のアラクネ』の強化を施す能力も備わっており、状況次第では一気にグラサンのライフポイントを叩けるようにもなった。更には『粘着質な蜘蛛地獄』がグラサンの行動を縛り、コンボを阻害する。先ほどは上手く【領主】と【戦略】を使い分けていたが、毎ターンそれを行うのは至難の業だろう。クロマは確信する。これで勝ち目がまた見えてきた、と。
……しかし、実のところその思いを抱いていたのは、グラサンも一緒であった。覚えているだろうか? 既にグラサンには『粘着質な蜘蛛地獄』を打破する手があると言う事を。
「アタシはこれでターンエンド! さあ、ここからどうする!? またまた見事に逆転しちゃったぞ!?」
「どうするも何も、さっき言った通りだ。全力でお前さんを潰す、その行動方針が変わる事はねぇ」
「マ、マジで格好いい……!(なら、その行動とやらで示してくれよッ!)」
手番がグラサンに回る。
「俺のターン、ドロー。『天使の屋敷』をレベルアップ、追加ドロー……うし、まずは俺の動きを縛る、その蜘蛛糸から攻略していこうか」
「は? この『粘着質な蜘蛛地獄』を?」
「ああ、ゲーム全体に影響を及ぼす【戦場】カードは強力だが、それと同時に脆くもあるからな。俺は白2の【税】を使い、『メイドの野戦病院』を設置する。上からな」
「ッ!」
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『メイドの野戦病院』
分類:戦場 レア度:R コスト:白2
【カードマスター】が回復した時、【領主】1体を対象に+1/+1
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その瞬間、フィールドの中央に巣食っていた『粘着質な蜘蛛地獄』が消失し、新たに赤十字が記されたテントが設置される。また、そこには何名かのメイドが待機しており、怪我人の看護に従事しているようであった。
「新たな【戦場】カードが使用されれば、古い【戦場】は容易に廃棄される。レベルが低かった頃は全然Rが出なくて、【戦場】カードも持っていなかったけどよ、今はそういう対処もできるようになったんだわ。つう訳で、これで俺は問題なく動き回れるぜ」
「クッ……!」
「おっと、悔しがるのはまだ早いな。『メイド養成教室』の『見習い天使メイド』で、『蜘蛛の狩り場』に居る『勇躍のハイスパイダー』を攻撃だ」
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『見習い天使メイド(メイド養成教室)』 防御力4⇒1
『勇躍のハイスパイダー(蜘蛛の狩り場)』 防御力3⇒0 破壊
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【領土】効果の【先制】で先に攻撃を行う『勇躍のハイスパイダー』であったが、『見習い天使メイド』はその攻撃を耐えた上で反撃、防御力をギリギリ1残していた。
「一番強い勇躍ちゃんが……けど、ここからは破壊なしじゃ――!」
「――ああ、戦闘時にこっちまで破壊されちまう。だからよ、俺は白1黒1の【税】を解き放ち、こいつを使う」
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『辺境屋敷の秘薬』
分類:戦略 レア度:C コスト:白1無1
【カードマスター】のライフポイントを3回復。
デッキからランダムに1枚手札に加える。
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グラサンが取り出したのは、ポーション瓶に入った青色の液体だった。実際には映像でしかない筈の瓶の蓋を器用に開け、ゴクリと一息に飲み込むような仕草を取る。
「ふう、これで俺のライフが3回復する」
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グラサン ライフポイント12⇒15
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「んでもって、ランダムに1枚ドロー。更にこっから、さっき出した『メイドの野戦病院』の効果が発動する。【カードマスター】が回復した時、【領主】1体の攻防値をプラス1。効果対象に『悪魔のメイド教育係』を指定」
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『悪魔のメイド教育係』 攻撃力3⇒4 防御力2⇒3
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「これで戦闘を行っても、こっちは破壊されねぇな。『悪魔のメイド教育係』で『勇躍のハイスパイダー』を攻撃!」
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『悪魔のメイド教育係』 防御力3⇒1
『勇躍のハイスパイダー』 防御力2⇒0 破壊
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「流石はグラサン、針の穴を通すような華麗なプレイイング! 惚れるッ!(クッ、ホントやるじゃねぇか! だが、残りはどうする!?)」
「お次はお前さんへの攻撃だ! 【隠密】中の『見習い天使メイド』で【カードマスター】に攻撃!」
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クロマ ライフポイント20⇒16
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「うぐっ……! ここに来て、アタシに攻撃かよ……!?」
「ククッ、これでライフポイント的にも並んだな。もちろん、これで終わりじゃないぜ? このターンに俺が使える残りの【税】は黒が2つ。そのうちの黒1の【税】を使い、『繁忙期の再雇用』を発動!」
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『繁忙期の再雇用』
分類:戦略 レア度:UC コスト:黒1
【リタイアゾーン】のコスト2までの【メイド】の【領主】を1枚手札に戻す。
そのコストを1減らす。但し、減らすコストは無が優先される。
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「こいつは【リタイアゾーン】に存在するコスト2までの【メイド】カードを、1枚手札に戻す事ができるんだ。更に、そのカードのコストを1減らす能力まで備わっている。削減される優先は無色だが、黒や白しかない場合、そのどちらをなくすか選択する事も可能だ」
「遂に使ってきやがったか、【リタイアゾーン】の活用……! で、どのメイドちゃんを手札に戻すんだよ!?」
「俺が選択するのは『小悪魔メイド』だ。元々黒1だったコストが0となり、俺は【税】を使う事なく再度使用する事できる! 『悪魔の屋敷』に居る『見習いメイド』に、こいつをノーコストで【継承】召喚!」
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『小悪魔メイド』
分類:領主 レア度:UC コスト:黒1⇒0 タイプ:悪魔、メイド
攻撃力1⇒4/防御力1⇒3
【隠密】(new!)
【継承(メイド)】相手【カードマスター】の手札をランダムに1枚【リタイアゾーン】に送る。
【継承(メイド)】継承した【領主】を+0/+2(new!)
【継承(メイド)】デッキからランダムに1枚手札に加える。(new!)
【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+0、【隠密】を付与。(new!)
【継承(メイド)】【領主】1体を対象とし、1のダメージを与える。(new!)
【継承(メイド)】継承した【領主】を+2/+0(new!)
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最序盤にもその姿を見せた、小悪魔の再登場。それはこれ以上ないほどに、クロマに嫌な予感を覚えさせる出来事だった。




