第53話 リタイアゾーン
「アタシのターン、ドロー! 『蜘蛛の狩り場』をレベルアップして、更にドロー! ……グラサン、早速アタシのデッキ、その本領を発揮させてもらうよ!」
「おう、遠慮せずに来いよ」
「クッ、その覚悟の決まりようが格好いい……!(へっ、良い根性してんじゃねぇか……!)」
相変わらず思っている事と言っている事が逆だった。何なら顔も真っ赤である。
「『慟哭のスパイダーキッズ』で『小悪魔メイド』を攻撃! この時、『蜘蛛の狩り場』の効果で【先制】が一時的に付与される! 先にそっちに、攻撃力分1の戦闘ダメージが飛ぶよ!」
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『慟哭のスパイダーキッズ』 防御力1 戦闘ダメージなし
『小悪魔メイド』 防御力1⇒0 破壊
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しかし、バトルのプレイに支障はきたしていないようで、言動からは想像できないほどの真っ当さである。表裏一体の興奮と冷静、その扱いが上手い。
「クッ……!」
「まだだ! 戦闘で相手を破壊した事で、『慟哭のスパイダーキッズ』の効果が発動! レベル1の【領土】、『慟哭蜘蛛の巣』を新たに設置する!」
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『慟哭蜘蛛の巣』
分類:領土 レア度:UC
レベル1 なし
レベル2 無1
レベル3 無2
【蜘蛛】の【領主】が戦闘で相手【領主】を倒した際、この【領土】を1レベルアップする。
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クロマの自陣に新たな蜘蛛の巣が産み落とされる。『蜘蛛の狩り場』よりもミニサイズではあるが、この巣にはまた別の意味で厄介な能力が付与されていた。
(戦闘による【領土】のレベルアップ、つまるところのコスト供給源の加速……!)
緑の十八番とも言える特性、更に今回のそれはフミタオシの時とは異なり、【税】を使わずして【領土】をレベルアップさせるものだった。また、これも戦闘時の破壊を起因とした効果であり、クロマの他のカードとも噛み合っている。
「新たに設置したこの【領土】に、緑2の【税】を使って『憤激のスパイダー』を召喚!」
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『憤激のスパイダー』
分類:領主 レア度:R コスト:緑1無1 タイプ:蜘蛛
攻撃力2/防御力2
【貫通】
戦闘で相手【領主】を倒した際、この【領主】を+2/+0
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出現したのは怒りをその身で表しているかのような、真っ赤な蜘蛛であった。攻撃時に超過分ダメージを【カードマスター】に与える【貫通】持ち、更には攻撃力を自前で上げていく能力もあると言う、あからさまなくらいに攻撃特化のカードである。下手な【領主】を並べた途端、この蜘蛛の生贄となってしまうだろう。
「アタシはこれでターンエンド! どうした、グラサン! アンタの実力はこんなものじゃないだろッ!」
「ったく、好き放題言ってくれるもんだ」
「えっ、好き!?(えっ、好き!?)」
「……俺のターン、ドロー」
グラサンは空気を読んだ。
「俺は『天使の屋敷』を置く」
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『天使の屋敷』
分類:領土 レア度:R
レベル1 白1
レベル2 白2
レベル3 白3
この【領土】に【メイド】が召喚された時、その【領主】を+0/+1
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不気味な【悪魔の屋敷】の隣に生成される、白で統一された荘厳な建造物。黒と白という対称的な【領土】の登場に、クロマの思考は再び冷静さを取り戻す。
「続いて白1黒1の【税】を使い、『悪魔の救護メイド』を『天使の屋敷』に召喚」
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『悪魔の救護メイド』
分類:領主 レア度:R コスト:白1黒1 タイプ:悪魔、メイド
攻撃力2/防御力2⇒3
【領主】が置かれていない自陣の【領土】に【リタイアゾーン】からコスト1の【メイド】を召喚する。その際、【領主】の召喚時能力は発動しない。
【継承(メイド)】【リタイアゾーン】のランダムな【メイド】を1枚手札に戻す。
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白の屋敷の召喚されたのは、これまた純白のメイド――いや、メイドとナースの制服を融合させたような衣服を纏う、悪魔であった。彼女自身が持つ悪魔の尻尾などは黒く、そういった点も白と黒のコントラストが映えている。また、何気に2色のコストを有する初のカードでもあった。
「『天使の屋敷』の効果で防御力が1増えるぜ? そしてこの召喚時、『悪魔の救護メイド』の効果も発動。【リタイアゾーン】にあるコスト1の【メイド】を召喚する。俺が選択するのは――『屋敷の護り手』!」
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『屋敷の護り手』
分類:領主 レア度:C コスト:白1 タイプ:人間、メイド
攻撃力0/防御力1
【門番】
【継承(メイド)】継承した領主を+0/+1、【門番】を付与。
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【リタイアゾーン】より復活したのは、小さな盾を構えた金髪メイドであった。
「それは……『悪魔の屋敷』でデッキから送ったカードか!?」
「おう、よく見ているじゃねぇか、その通りだ。んでもって、『屋敷の護り手』がその『悪魔の屋敷』に置かれたから、またその効果が発動するぜ」
グラサンのそんな宣言の直後、デッキからランダムな【メイド】カードが再び【リタイアゾーン】に送られる。
(いつかは使ってくると思っていたけど、想像以上に【リタイアゾーン】を活用するのが早い! 仮に復活能力が沢山あるとすれば、【リタイアゾーン】はグラサンにとっての第二の手札みたいなものじゃん……! それにあの盾ちゃん、一見アタシのスパちゃんに倒されるだけの存在だけど、【門番】であっちのナースちゃんが倒されるのを防いでる。多分だけど次のアタシのターン、ナースちゃんが倒されるのを凌いで、【継承】をするのが目的だよね……!?)
『屋敷の護り手』を突破できたとしても、『悪魔の救護メイド』の防御力は3だ。慟哭と憤激のどちらを攻撃手として残したとしても、逆に破壊されてしまうのがオチであった。
「俺はこれでターンエンド。ったく、可愛いメイドさんが破壊されるなんてよ、見ていて忍びないぜ」
「や、優しい……!(【リタイアゾーン】を肥やすのが目的の癖して、よく言うぜ……!)」
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3ターン目
クロマ ライフポイント20 手札5
『蜘蛛の狩り場レベル2(緑2)』=『慟哭のスパイダーキッズ(1/1)』
『慟哭蜘蛛の巣レベル1(なし)』=『憤激のスパイダー(2/2)』
グラサン ライフポイント20 手札5
『悪魔の屋敷レベル1(黒1)』=『屋敷の護り手(0/1)』
『天使の屋敷レベル1(白1)』=『悪魔の救護メイド(2/3)』
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2ターン目を終え、両者とも未だダメージはなし。しかし、着実に戦火は広がりつつあった。




