第52話 蜘蛛と悪魔
「アタシの先攻ッ……!」
コイントスの結果、先攻はクロマとなった。
「チッ、後攻か」
エヴァーローズでは先攻が有利であると認識しているプレイヤーが多く、グラサンもまたそう考えている1人だ。その理由は様々だが、まず第一に挙げられるのがフィールドの展開と攻撃だろう。これらを先に行えるという事は、ただそれだけで戦況における優位性に繋がる。相手のターンに行動を起こす事が基本的にできないこのゲームにおいて、これらは割と馬鹿にならない要素なのだ。【継承】召喚で次々にバトンを渡していくスタイルのグラサンなどは、特にその恩恵を享受できていたのだが……どうやら今回の戦いは、その恩恵が相手に向かったようだ。
「マリガンはッ!?」
「なし」
「良いね、アタシもだ!」
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1ターン目
クロマ ライフポイント20 手札7
グラサン ライフポイント20 手札7
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ライツロブでのバトルルールは表のものに準拠している。つまり、ライフポイントは20からのスタート、これまでよりも道のりの長い戦いになる――などと悠長に構えていると、痛い目を見るだろう。それだけレベル3の戦いは、これまでとは異なってくる。
「アタシのターン! まずは『蜘蛛の狩り場』を置かせてもらうよ!」
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『蜘蛛の狩り場』
分類:領土 レア度:R
レベル1 緑1
レベル2 緑2
レベル3 緑3
【蜘蛛】の【領主】が戦闘を行った際、【先制】が発動する。
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蜘蛛の巣が張り巡らされた深き森という、警戒感を強める見た目をした【領土】が登場する。しかし、グラサンが最初に注目したのはそんな見た目などではなく、その説明文の方であった。
(戦闘時限定の付与能力、【先制】か……)
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【先制】
交戦時、敵【領主】よりも先に攻撃を行う。
その攻撃で敵【領主】を倒せたのならば、戦闘によるダメージは受けない。
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(要は先んじて戦闘ダメージを敵に与えて、攻撃される前に倒す事を目的とした能力。厄介だな)
この能力があれば、たとえ攻撃力10防御力1という極端なステータスの【領主】が居たとしても、戦闘で破壊される恐れは激減するだろう。しかも、それはこちらが攻撃する時、相手が攻撃する時のどちらのタイミングでも発動する為、何かしらの対処は必須であった。
「初っ端からRカードかよ。流石はレベル3の実力者、面白いバトルになりそうだ」
「グ、グラサンに褒められた!?(へへっ、お楽しみはこれからだぜ!?)」
思わず、実際と心の声が入れ替わってしまうクロマ。しかも、本人は気付いていない。
「えへへへ……緑の【税】1つを使って、『慟哭のスパイダーキッズ』を召喚!」
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『慟哭のスパイダーキッズ』
分類:領主 レア度:UC コスト:緑1 タイプ:蜘蛛
攻撃力1/防御力1
戦闘で相手【領主】を倒した際、【領土】が置かれていない場所にレベル1の『慟哭蜘蛛の巣』を置く。
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蜘蛛の巣に小さな小さな蜘蛛が飛び乗り、絶えずその上で動き回り始める。また複数個あるその目からは、涙のような液体が流れていた。
「よし、1ターン目はこんなところか。アタシはこれでターンエンド! さっ、グラサンのターンだ」
「あいよ。俺のターン、ドローだ」
引いたカードを確認し、次いでクロマの場に視線を移すグラサン。
(まだパッと見の段階だが、戦闘に起因にする能力が多いな。後攻って立場と相まって、出だしはなかなか苦戦しそうだ。序盤、如何にして戦線を組み立てるかだが、さて……)
新たなデッキの折角の門出、しかし現実は上手くいかないものである。尤も、カードゲームでそんな事などは日常茶飯事だ。グラサンは即座に気持ちを切り替え、盤面に向かっていた。
「俺は『悪魔の屋敷』を設置する」
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『悪魔の屋敷』
分類:領土 レア度:R
レベル1 黒1
レベル2 黒2
レベル3 黒3
この領土に【メイド】が召喚された時、デッキからランダムな【メイド】を1枚【リタイアゾーン】に送る。
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グラサンが置いた【領土】は何とも不気味な屋敷であった。見捨てられた廃墟、或いはお化け屋敷にも映る建造物には闇がかかり、尚更に薄気味悪い雰囲気を晒している。
「メ、メイド……!? つうか、グラサンも初手からRカードじゃん!」
「おう、仕事まで暇だったから、昨日も他の裏闘技場で何回か戦ってな。お陰様で、Rカードがそこそこ集まったぜ?」
「クッ、流石は裏世界の住人、任侠の人……!(カッコいい……!)」
「いや、別に任侠とかは関係ねぇんだが……まあ良いや、黒1の【税】を使ってこいつを召喚だ」
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『小悪魔メイド』
分類:領主 レア度:UC コスト:黒1 タイプ:悪魔、メイド
攻撃力1/防御力1
【継承(メイド)】相手【カードマスター】の手札をランダムに1枚【リタイアゾーン】に送る。
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不気味な屋敷に舞い降りたのは、悪魔の角に翼、そして尻尾を持つ小柄なメイドだった。人を小馬鹿にするような表情と仕草で、ずっとケラケラと笑っている。正に小悪魔、その服装以外にメイド要素は全く見当たらない。
「『悪魔の屋敷』に【メイド】が召喚された事で、【領土】の効果が発動。デッキからランダムな【メイド】のカードを1枚、【リタイアゾーン】に送るぜ。これで俺はターンエンド」
「……」
ゲーム開始時、そして先ほども一種の興奮状態にあったクロマだったが、今は冷静にカードに記された文章に集中していた。
(うわ、どっちも【リタイアゾーン】にカードを捨てる能力ばっかじゃん。あからさまに後になってそれを使うような動きだし、バトルを長引かせると面倒そうかな。【継承】って能力も、重ねられてると絶対に厄介だ。特にあの小悪魔ちゃん、アタシの手札を捨てるって何気に極悪な事をしようとしてない!? リサイクル上等な黒の使い手ならまだしも、私のデッキ、【リタイアゾーン】の再利用とかできないんですけどッ!)
グラサン同様、こちらも初見となる能力の解析に没頭。初手から相手の戦法を考察し、勝利までのルートを構築していく。そして様子見の1ターン目はこれにて終了、2ターン目が開始される。
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2ターン目
クロマ ライフポイント20 手札5
『蜘蛛の狩り場レベル1(緑1)』=『慟哭のスパイダーキッズ(1/1)』
グラサン ライフポイント20 手札6
『悪魔の屋敷レベル1(黒1)』=『小悪魔メイド(1/1)』
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