第19話 戦場カード
クロポニ側のフィールドにそびえ立ったのは、近代的、しかし怪し気な雰囲気を晒した【領土】であった。謎の肉塊を宿したガラス管が幾つも並んでおり、非合法的な臭いがグラサンの方にまで漂ってきている。
「……ゾンビで【感染】を広げ、その施設を使って更なるゾンビを生み出すってか? まるっきり悪の組織ムーブだな」
「グラおじさんの風貌でそんな事を言われてもなぁ。けど、間違ってはいないね。僕は【研究】カウンターを3消費して、『バイオ研究所』に『赤色ゾンビ』を生成する!」
クロポニがそう宣言すると、ガラス管のうちの1つが内部から破壊され、赤色の何かが姿を現した。
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『赤色ゾンビ』
分類:領主 レア度:C コスト:無1 タイプ:アンデッド
攻撃力2/防御力1
【突撃】【感染1】
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その赤色は通常のゾンビよりも損傷が酷く、されど俊敏なスピードを誇っていた。放っておけば、そのまま次のターンには破壊されてしまいそうだが――
「――【突撃】がそれを許してくれねぇか」
「そう、さっきグラおじさんがやってくれたように、『赤色ゾンビ』で『見習いメイド』を攻撃だ! いっけぇぇぇ!」
ゾンビとは思えぬ速度を維持したまま、『赤色ゾンビ』が攻撃を開始。『見習いメイド』はアタフタしながらも迎撃し、これを倒すに至る。……が。
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『見習いメイド』 防御力3⇒1 【感染】が付与
『赤色ゾンビ』 防御力1⇒0 破壊
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「倒すには倒せたが、こっちも次のターン開始時に破壊される、か」
「うん、相打ちみたいなものだね。と言うか、僕にとってはギリギリ1残す方が都合が良いんだよね。ストレートに倒しちゃったら、【感染】させる事ができなくなっちゃうし。まっ、この後に出すカードでそれも関係なくなるけどね」
「あ?」
「ううん、こっちの話。えっと、『赤色ゾンビ』を場に出した分、『見習いメイド』を【感染】させた分で、僕の【研究】カウンターが2つ分プラスされるよ」
「……」
グラサンが予感した通り、『バイオ研究所』は厄介なカードだった。【税】を使う事なく【領主】を召喚し、そのターンのうちに自爆特攻を仕掛けて来る。そのコストが【研究】カウンター3となっているが、『赤色ゾンビ』が場に出る事でカウンター1つ分は即座に回収できる為、実質2しか使っていないに等しい。その上でこちらの【領主】に合計3のダメージを食らわせにくるのだから、やり難い事この上ないのである。
「で、この後に漸く【税】を使ってくるんだよな?」
「当然でしょ、僕の手札はそれなりに潤沢だよ。【税】3つ全てを使って、『バイオハザード発生装置』を使用!」
「ッ! それは――」
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『バイオハザード発生装置』
分類:戦場 レア度:R コスト:黒2無1
フィールド上の【感染】を持たない全ての【領主】を【感染1】にする。
召喚された【感染】を持たない全ての【領主】を【感染1】にする。
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――【領主】、【領土】、【戦略】に続く4種目の分類、【戦場】カード。その瞬間に使い切る【戦略】カードとは違い、【戦場】カードはその名の通り戦場となってその場に残り、フィールド全体の敵味方に効果をもたらし続ける。使いようによっては永続的にゲームを有利にする強力なカードであり、それ故にレア度も高めに設定されているのだ。事実、グラサンはまだ【戦場】カードを所持していなかった。
(……【戦場】は強力だが、破壊する術は幾つかある。一番簡単なのは、俺自身が新たに【戦場】カードを使用する事だ。【戦場】はフィールド上に1枚しか存在できない性質上、後出しで使いさえすれば、【戦場】を強制的に張り直せるんだ。だからこそ、【戦場】は使いどころが難しいんだが……低レアが主軸となる今大会において、その手を使える奴なんてそうは居ない。俺だってそうだ。チッ、なんて事ないみたいにRを使いやがって)
次にメジャーとなる方法は、【戦場】を何らかの効果で破壊する――なのだが、これについてもグラサンのメイドデッキは不得意分野だ。率直に言ってしまうと、そもそもそんな効果のカードは持っていない。つまりグラサンはこのゲーム中、『バイオハザード発生装置』の存在を許容しなければいけなくなった訳だ。
「これで俺はゾンビの攻撃を受けずとも、出す【領主】出す【領主】が【感染】状態になっちまうのか。ククッ、堪んねぇなぁッ……!」
「なら、降参しちゃう?」
「まさか! それ以上やる事がねぇのなら、さっさとターンを回してくれ! 俺が真っ正面から、ポニちゃんを打ち破ってやるからよ!」
「え~、グラおじさんにできるの~? じゃ、ターンエンドで」
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4ターン目 【戦場】『バイオハザード発生装置』
グラサン ライフポイント10 手札5
『白の領土レベル2(白2)』=『見習いメイド(2/1)』
『辺境の屋敷レベル1(無1)』=空
クロポニ ライフポイント8 手札5 【研究】3
『黒の領土レベル2(黒2)』=空
『バイオ研究所レベル1(無1)』=空
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「俺のターン開始時に、『見習いメイド』が【感染】のダメージで破壊される」
わざとらしく地面に倒れる『見習いメイド』。演技派の私! とでも言いた気な表情を作った後、彼女はその場から消えて行った。
「フィールドからメイドさんが居なくなっちゃったね。積み重ねの強化を得意とするグラおじさんとしては、この展開って相当辛いんじゃないの?」
「確かにな。ともあれ、やれる事をやるだけだ。ドロー、『白の領土』をレベルアップし、更にドロー……おし、3の【税】を使って『メイドの教育係』を『辺境の屋敷』に召喚するぜ」
場に『メイドの教育係』が現れた後、『メイド養成教室』の【領土】が生成され、更にその上に『メイド志望者』が召喚される。
「一気に2人の【領主】、しかも【領土】も……!」
「『辺境の屋敷』に【メイド】が出現した事で、俺のライフポイントが1回復」
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グラサン ライフポイント10⇒11
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「おっと、一応言っておくけど、召喚された時点で【感染】状態になるからね! 同時に、僕の【研究】カウンターも2つ増えるよ!」
「理解の上だ。俺は更に白の【税】1つを使い、『屋敷の情報通』を『メイド志望者』に【継承】召喚! この時、『メイド養成教室』の効果で攻防が追加で1強化される!」
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『屋敷の情報通』
分類:領主 レア度:UC コスト:白1 タイプ:人間、メイド
攻撃力1⇒2/防御力1⇒3
デッキから【戦略】をランダムに1枚手札に加える。
【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+1
【継承(メイド)】継承した【領主】を+0/+1(new!)
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表紙にマル秘と記されたメモ帳を手に、教室の陰から辺りの様子を窺うメイドが登場。情報通なだけあって、日頃から努力を惜しまないタイプのようだ。メイドとしては少々アレだが。
「当然、こいつにも【感染】は働く。【研究】とやらを進めるが良い。代わりに、俺はデッキからランダムな【戦略】カードをいただくぜ」
「ふーん?」
全滅の状態から即座に場を立て直すグラサン。一方、クロポニは着実に【研究】を進めていた。




