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黒眼のカードマスター ~無頼漢の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
レベル1 廃坑地帯アウトカースト
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第12話 モフモフ

 仕事を終えた俺は前の店へと戻り、シチサンと合流する事にした。その後、今日の成果について話す流れになったんだが……まずは、カード鉱石について語らんとならんぞな。……不味い、口癖が移りかけていやがる。


「それで、そのカード鉱石ってのは何だったんだ?」

「使ったら、その等級のカードが出てくるアイテム? みたいなもんらしい。まっ、道端でカードを拾ったようなもんだな!」

「なるほど、なら特段珍しい事でもないか」

「だろ? けどよ、その等級ってのがレアだぜ? 1枚とはいえ、Rカードが確定で出てくるっての、結構凄い話じゃねぇか?」

「……ちなみにそのカード鉱石ってのは、どれくらいの確率で出現するんだ?」

「ちょっとその気になってんじゃねぇか。あ~、監督官のおっさん曰く、大体トロッコ30台分の鉱石を掘り続けて、1個のカード鉱石が出現するくれぇの確率らしい。ただ、そのカード鉱石の等級もランダムで、コモンからRの間のもんが出るんだと。どのレア度が出るかは、まあ大体同じ頻度とか言っていたな」

「つまり、そんな馬鹿みたいな仕事量をこなした上で、三分の一の抽選を勝ち取らないといけないのか。……グラサン、やっぱお前は豪運だよ」

「おいおい、こっちは確率以上の仕事をしてきたんだぞ? 期待値はどっこいだろうが」


 まあ思わぬところで初となるRが引けたのは、素直に嬉しかったけどな。ククッ、こいつをお披露目するのが楽しみだぜ……!


「ああ、それとこれも聞いて驚け。何と今回の仕事の報酬G、カードを10パック分は買える金額になったんだぜ! ククククッ、こっちでもRを引き当ててしまうかもしれねぇなぁ……!」

「へえ、そいつは凄い――いや、37台分も掘ってそれだと、実はあんまり効率良くないんじゃ? 他の奴らはトロッコ1台や2台が関の山だったんだろ? 丸一日働いて、パックが1つも買えねぇ計算だぞ」

「そうか? 二番目に成績が良かったニクショクとかも、20台くれぇは掘っていたぜ?」

「俺、仕事、やっだッ……!」

「だよな。最初は微妙に感じた鉱石バーも、仕事終わりに食うと格別だぜ!」

「肉以外も、たまには良いッ……!」


 同席しているニクショクと共に、鉱石バーに噛り付く。今夜は奮発して3本も食っちまうぜ!


「……ところで、隣に居るのは?」

「あ? いや、ニクショクだけど? あのオリエンテーションにも参加していたから、初顔合わせって訳じゃないよな? あの面子の中じゃ、ある意味一番目立っていたしよ」

「俺、照れるッ……!」

「いやいやいやいやいやいや、そういう事ではなく!」


 どうやらシチサンは、ニクショクが気になっているようだ。こんな名前でこんな見た目だけど、話してみると意外と話が通じる&良い奴なんだぞ? ただ、ファンタジー組である弊害がシステム面で出てしまったようで、買い物の仕方などが不慣れなんだよな。結果、食料が買えず腹が減っていたという訳である。そりゃあ鬼気迫るし肉も食いたくなるわな。ちなみにこの通り、鉱物バーもいける口であるらしい。


「まあ落ち着けって、俺がここへ連れて来たんだぜ? 危険な事なんて何もねぇからよ」

「違う、そうじゃない! ……あの、少しモフモフしても良いでしょうか?」

「モフ、モフ?」

「ああ、そっち……」


 ニクショクに分かりやすく説明してやる。


「仲間、喜ぶか……?」

「まあ、死ぬほど喜ぶと思うが」

「むう、なら許す……!」

「ひゃっほい!」


 ひゃっほいってお前……ともあれ許可を得た後、奇声とは打って変わって遠慮がちにモフり始めるシチサン。小動物に飢えたシチサンの目には、ニクショクもモフる対象に映っているようだ。この世界に来てからの一番の笑顔になっているし、つか、笑顔になるのも初じゃねぇか?


「ふう、堪能させて頂いた。ニクショクさん、何か困った事があったら全力で力になろう。遠慮せず、いつでもどこでも俺に相談してくれ」

「相談……? 俺、腹、膨れだ……けど、肉も、ぐいだいッ……!」

「ふむ、肉を食べたいのか。なら、レベルを上げて肉を購入できるエリアに行くしかないだろうな。ニクショクさん、カードの腕前はどれほどで?」

「カード、食えない……でも、前の戦い、勝った」

「おお、やるじぇねぇか! ニクショクも隠れたやり手だったみてぇだな!」

「俺、照れるッ……!」

「うふふふふふ……!」


 うわ、シチサンが不気味に笑い始めた。親友が言う事じゃねぇが、普段笑わない奴なのもあって、冗談抜きに気色悪いな……


「っと、失礼。カードの腕に自信があり、かつ手っ取り早くレベルを上げたいのであれば、大会に参加するのが良いだろう。レベル1の大会に参加する条件は、基本的には経験値が50以上あれば大丈夫なものばかりだ。優勝すれば一気に50の経験値、そして相応のGが手に入る。レベルが上がって別のエリアに移動できるようになるだけでなく、そこでの食費も同時に稼げるという訳だ。これ以上効率的な手はあるまい」

「おお、それ、良い……!」

「だがよ、大会には俺やお前も参加するんだろ? たとえお前やニクショクが相手だったとしても、優勝は譲れてねぇぞ?」

「グラサン、俺がいつ同じ大会に出ると言った? 大会なんて星の数ほどあるんだ。それぞれが別の大会に出場すれば、何の問題もあるまい」

「そ、そうだったのか?」


 てっきり同じ大会に出て、俺が優勝、シチサンが準優勝のワンツーフィニッシュを決めるものとばかり。


「グラサンお前、大分失礼な勘違いをいていないか? そもそもの話、このアウトカーストがどれだけ広大なエリアだと思っている? 大体北海道と同じくらいの面積があるんだぞ」

「そんなにか!? ……マジだ。謎の知識が俺にそう囁いていやがる」


 こんな情報はちゃんとありやがるのな、この世の一般常識。


「まあ、それだけ広くても景色はどこまでも一緒で、点在する施設等々にも変化はないんだけどな。ただ、それ相応のカードマスターの数は居るらしい。この世界のスタート地点を兼ねているだけに、人数だけは全エリアでトップだ」

「なるほど、だから開催されるレベル1の大会の数も多い。そういう事か」

「フッ、使っていなかった糖分が役に立ったな」


 シチサン曰く、この世界のこよみはひと月が固定で30日、そして春夏秋冬がひと月ごとに切り替わるんそうだ。つまり1年は120日しかない。また月を跨ぐとガラリと風景が変わるそうで、エリアによっては仕事内容も変化していくらしい。ちなみに、今は春の月の半ば辺りである。


「レベル1向けの大会はほぼ毎日、それも数回にわたって開催されている。申請は前日までにカードショップで行い、当日になったら店内の転送装置で会場に移動。あとはアナウンスに従えばいい」

「って事は、明日の大会に参加する為には今日のうちに申請を済ませないといけねぇのか。おし、早速申請しておこうぜ? ニクショク、お前もな!」

「分かっだ……! 俺、肉の為に、勝つ……!」

「フフッ、二人とも頑張れよ」

「おう、任せとけ――っておい」


 俺とニクショクが勢いよく立ち上がったってのに、シチサンは呑気に席に座ったままだった。


「お前は行かねぇのか?」

「ああ、今日の野良バトルで十分稼がせてもらったからな。二人が明日の大会に参加している間、俺は野良バトルで不足分を補わせてもらうよ」

「は? おいおい、今日だけで一体どれだけ対戦していたんだ?」

「ざっと40戦ほどだ。グラサンほどではないにしても、それなりにGも稼がせてもらったよ」

「……連勝したのか?」

「当然」


 こ、こいつ、ちゃっかりしていやがる……!

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